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36. カミーリャン商会襲撃1

 煙の中から抜け出した時、右のほうに三人の男たちの姿が見えた。


 こいつらは門番か?


 前触れもなく、いきなり門が爆散したことに驚いて固まっているようだ。

 オレはちらりと彼らを見ただけで、構わず屋敷に向かって歩き始めた。


「……ま、待て。そこのお前! お前は何だ? これはお前の仕業か!」


 ようやく掛けられた誰何の言葉に、オレは立ち止まり、彼らに視線だけ向けた。

 どうやら三人の中で一番背の高いやつがオレに声をかけたみたいだ。


 やつがこの中でのリーダーだろうか。


 三人とも武器を構えている。

 リーダーらしき男が長槍、他の二人は大剣のようだ。


「この屋敷の主に用がある。邪魔をするな」


 オレは彼らを睨みながら、少し低めの声でそう返した。


 なんとなく、少し悪役の気分だ。


 だって、オレが今からすることは無双だよ?

 文字通り、ならぶ者無き力による蹂躙。


 身体強化とスピード強化の魔法をかけられて、右手には高周波振動付きの切れ味抜群な剣。

 それだけでも十分すぎるほど反則級の戦闘力、まさにチートだろうに。

 さらに左肩には、存在自体がチートな魔法疑似生命体がいて、自動防御に自動回復、おまけにオレの指示に応じて攻撃魔法まで展開してくれるという。


 むしろ相手に同情すら感じちゃうかもしれない。


 でも、だからといって相手が素直にオレを素通りさせてくれるわけもない。


「ふざけるなぁぁーー」

「ガキがぁぁーー」


 そう叫びつつ、三人がオレに向かって武器を振り上げ、斬りかかってきた。


 オレは三人の武器をもう一度さっと確認する。

 そう、どこに一撃入れるかを。


「ふぅ……」


 オレは軽く一息吐くと、彼らの元へ駆け寄り、すばやく三人の間をすり抜けながら、右手の剣を振る。


 その剣の軌跡が、三つの淡く青白い光の円を描く。


「「「なっ……」」」


 二人の持つ剣が根元から斬られ、刃が地面に落ちた。

 長槍もまた、矛先が斬られて地面に落ちる。


 やっぱり、とんでもない切れ味だよ、これ。

 剣と剣がぶつかったときにも、ほとんど音はしなかったと思う。

 ホントにスパッと、剣の根元を苦も無く斬ってしまうとは。


 心の中ではそう感嘆しつつも、オレは三人を睨みつけていた。


「もういいだろう? これ以上、まだ邪魔をするというのなら、今度は貴様らの首を刎ねるぞ?」


 オレはそう言って踵を返し、屋敷へと向かった。


 男たちは狼狽しているようで、確かに手出しをしなくなったが、少し距離を置いて付いてくるようだ。


 その内の一人が、オレと十分に距離を取って迂回しながら屋敷へと駆けて行く姿が見えた。おそらく、襲撃者の存在を屋敷にいる主や仲間に知らせに行くつもりなのだろう。


 別にそれは構わないと思っている。

 遅かれ早かれ、やることには変わりないのだから。

 むしろ、いろいろと手間が省けて助かるくらいだ。


 二人の男を取り巻きに付けながら、オレは屋敷に向かいゆっくりと歩を進めた。

 門から屋敷まで百メートル弱といったところだろうか。

 日本でアパートに一人暮らしだったオレにとっては、十分豪邸と言える敷地だ。


 オレが今進んでいる道は綺麗にならされていて、両側には色とりどりの花が咲き誇っている。なんとなくオレが抱いているカミーリャン商会のイメージとは異なるが、表向きはこれくらい華やかにしておくものなのかもしれない。


 オレは屋敷の扉の真正面、十数メートルほど手前で足を止めた。


 どうやら、オレを出迎えてくれるやつはいないようだ。


 さっき走って行った男は緊急事態を知らせに行ったのだとばかり思ったのだが、まだ誰も屋敷から出てこない。


 門を壊した時だって、それなりに音がしていたはずなのだが。

 あまりにも危機管理能力が悪すぎやしないか?

 もう少し派手にいったほうがいいのか?


 屋敷を見上げると、暗い部屋が多いが、いくつか明かりが灯っている部屋もある。


『リオ。《雷の宝珠》の場所は分かるか?』

『二階向かって右側、あの明かりがある部屋だね』

『なるほど。じゃ二階の左側は? 全部暗いけど、人は? 誰かいるか?』

『いいや、人の気配無し。やっちゃっていいんじゃない?』


 やっぱりリオの声は弾んでいるように聞こえる。

 気のせいじゃないだろうな。


『よし。じゃ、いくぞ』


 オレは一度上唇を舐め、左腕を上げた。

 掌をいっぱいに開き、そして再び魔法の名前を口にする。


「《炎岩砲フレイムカノン》」


 再びオレの左手の上方に、サッカーボールくらいの岩が、ただし今回は三つ、炎に包まれて現れた。


 そういえば、個数に関しては特にリオと取り決めはしていなかった。

 門に比べて今回は対象が大きいから、気を利かせてくれたのかもしれない。


 屋敷の正面やオレに付いてきた男たちが、激しく燃え盛る三つの炎に照らされる。


「なっ!」

「ひぃぃ……」


 後ろの男たちが恐怖で顔を染め上げていたが、オレは無視した。

 そして叫びながら、左手を屋敷に向かって振り下ろす。


「ファイアァァーー!」


 オレの声と同時に、炎に包まれた三つの岩石がはじかれたようにすごい勢いで二階左側の部屋に向かって飛んでいく。

 先程の門同様、着弾と同時に岩が爆ぜ、轟音が鳴り響いた。

 屋敷の左上が完全に吹っ飛んだことが見てわかる。


 後ろの男たちは、へたり込んでしまって、もう動けないみたいだ。


 そして屋敷の中でも、沢山の人の叫び声などが聞こえてきた。

 ようやく現在の状況に気付いてくれたらしい。


 屋敷の扉が勢いよく開き、何人もの武器を持った者たちが飛び出してきた。

 外に出てきたのは十人くらいだろうか。

 ファムの話だとまだもう三十人くらいはいるハズだ。


「何なんだ一体」

「何が起きた!」

「なんだお前は!」

「まさか、この騒ぎはお前の仕業か!?」


 男たちは口々に怒声をあげているが、目の前にいるオレにもようやく気付いてくれたようだ。


「カミーリャン商会の主、ブロッシュはどこにいる?」


 オレは右手の剣を下げたまま、左手を腰に当て、男たちを睨みつけながら問うた。


「てめぇがやったのか、これは!」

「一体なにしやがった、このガキ!」


 どうもオレの質問に答える気は、まだ・・無さそうだ。

 近付いて来た男がオレの襟元を掴もうとした、まさにその時、オレはその男に思いっきり蹴りを入れて吹っ飛ばしてやった。


 その様子を見ていた男たちが、とたんに黙り込んだ。


 無理もないかもしれない。

 身体強化されているオレの蹴りをまともに食らった男は、体をくの字にして五メートル以上は後に吹っ飛んだのだから。


 せっかく黙ってくれたのだからと、オレはもう一度同じ質問をすることにした。


 大事な事は二度言わないとね。

 だから、今度はちゃんと答えてくれよ?


「カミーリャン商会の主、ブロッシュはどこにいる?」


 だが、誰もそれに答えてくれなかった。

 もっとも、彼らもほうけていたわけではないようだ。

 それぞれが剣や槍などの武器を手に持ち、オレに対して攻撃体制を取り始めた。


 仕方ない。

 また武器破壊で、こいつらの持つ武器を全て壊してやれば……


 そんなことを考えてオレが男たちと睨み合っていると、上から怒鳴り声が聞こえてきた。


「てめぇは何だ。この騒ぎはてめぇの仕業か!」


 見上げたその先には男が一人、こちらを見下ろしていた。

 先ほどリオが、宝珠があると言っていた部屋のバルコニーからだ。


 背の低い、五十代くらい男だ。

 こいつがカミーリャン商会の主、ブロッシュなのか?

 その男はガウンを纏っていて、その奥にもガウンを纏った若い女性がこちらを見下ろしている。


 オレはそれを見て、なんとなく、こいつらがナニ・・をしていたのか察したよ。


 なるほど。

 そうですか。

 お楽しみ・・・・の最中でしたか。

 それはそれは、大変申し訳ないことをしてしまいましたかねぇ?


 絶対、許してやるもんか!


 ……オレの怒りは二割ほど増しになったかもしれない。 


いつも読んでいただきありがとうございます。

楽しんでいただけていますでしょうか?

ぜひぜひ感想などお聞かせください。


今回の戦闘の話は、ちょっと長くなったので、三回に分けています。

今日中に2と3も投稿予定です。

どうぞよろしくです~

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