( ( -ever summer- ) )
イラスト Nicolaさん(Nicola nn)
加工 Reo.
オレはあの日、恋に落ちた。
初恋の魔法にかかり、世界で一番愛しい天使に裏切られ、ズタボロになった果てに、真実の愛にたどり着いた。
いや、そんなのは、気のせいかもしれない。
ただの中学生である、オレ達がみつけた真理なんて、若気の至りの誇大妄想で、恥ずかしい勘違いで、どうしようもない自己陶酔かもしれない。
それでも、と思う。
輝馬を思う、オレの気持ちは、嘘じゃない。
夏夜、小夜。雷耶、皇、小乙女、雷児、乙姫、煌々……たくさんの仲間たちや家族を想う、その気持ちだけは、本物だ。
オレは日に日に、「女」に近づいていく。
違和感はあるが、不思議と、嫌じゃない。
それは、オレのことを、世界で一番慈しんで、見守って、包んでくれていた、輝馬の喜ぶ顔をみれるからだ。
こんなことを言うのは、本当に気恥ずかしいが、結局のところ、オレもまた、輝馬のことを、世界一好きで、愛しているんだと思う。
愛する大天使、夏夜とは、また違う次元で。
いつかそう、再び、オレ達が引き裂かれ、運命に試されても、そう、たとえ記憶をなくし、オレがオレでなくなっても。
きっと、何度だって、恋をする。
恋に落ちて、愛に終わる。
それは、約束された物語だったろう。
これは、心臓を失ったオレが、<真実の愛>を知り……心を失った怪人が、<幸福な夢>をみつけ、そして、真夏の微熱に心を奪われた少年が、<永遠の愛>をはじめる物語だ。
<ロストハート>
……――<ミッドサマー・ロストハート>
心臓をなくし、心破れ、心凍っても、その炎はいつだって、再び命をともす。
それは、灼熱の微熱で、煉獄の吐息だ。
恋で愛で、生命の息吹だ。
ならばオレ達はもう、飢えかわく獣でも、さまよえる赤子でもない。
鏡の向こうの悪魔を受け入れ、醜く弱い、その本当の自分を愛したとき、物語の扉は開く。
――さあ、次の舞台をはじめよう……。
【第一部 完】




