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第46話 -幸福の夢- 【前編】 “And I become a lady”


 挿絵(By みてみん)

 


イラスト@Nicola nn様




 その後、やっぱりというか、オレの躰は急速に女性化した。


 輝馬を受け入れたことで、「あれ、女でいいんじゃね?」と思ったのだろう、幼児のごとき、起伏きふくだった胸のあたりは、明らかに膨らみ始めた。


 女々しいブラジャーが嫌だったので、スポーツブラだが、小夜あたりは、「ダメだよ、女の子なんだから、お洒落しゃれしないと」と言って、ピンクのリボンのついたものをすすめてくる。


――ざけんな。。



 悲劇は続いた。

 ある朝、めちゃくちゃまたのあたりが痛くて、目を覚ましたら、なんと裂け目ができており、大量に出血していた。


 びびって、小夜を叩き起こすと、


「小夏、それはせーりっていうの。生理。女の子の日だよ。小夏もオトナになったねえ」と頭をなでられたが、お前、オレより年下だろ。


「仕方ないなあ。小夜の、貸してあげるね!」


 いつも生意気なこいつが、なぜか上機嫌なので、嫌な予感がしたが、やっぱりだった。


「その代わり、触らせて♡」

 本気で身の危険を感じ、もちろん全力で拒否った。



 結局、その日は学校を休んで、進藤の診療所に行った。

 とりあえず生理用品は、その日のうちに買っておいた。


 輝馬と付き合い始めて、一週間もたつと、スカートの着用をすすめられた。

 なんでも、からだは女子なんだから、女の格好をしてもいいんじゃないかということらしい。


 言い分はわからなくないが、それ人前でいちゃつきたいだけだろ。

 仕方なく、小夜のを借りて着ると、まず、短い。


 というか、サイズが合わない。

 結局、ぴったりサイズのミニスカートを買ってもらった。



 なんでミニなのか、抗議したかったが、「似合う」と微笑まれ、言葉につまった。

 やたら嬉しそうなので、黙ってやったが、いい感じにハメられた気がする。


 ついでに、ウイッグをプレゼントされ、半ば押し付けられる形で、着用するはめになった。

 短髪にスカートは、似合わないからとか言ってるが、だから、なんでもお前の趣味を、おしつけてんじゃねえよ。


 当然、本人にも抗議したが、一回でいいから、かぶってみてほしいといわれ、しぶしぶ着用した時のあの、とろけそうな笑顔。

……反則だろ。


 結局、ずるずると、輝馬の言いなりになっているが、後で覚えとけよ。



 デート中、スカートがスースーして、困った。

 更に、通りがかった乙姫に、スカートをめくられ、激怒したのは言うまでもない。


 結局、キュロットスカートにおちついた。


 スカートとショートパンツの、中間みたいなやつだ。

 最大の特徴は、階段でもパンツが見えないこと。考えたな。


 そういえば、ガキの頃も、こんなん履いてたわ。

 黒歴史すぎて、忘れていたが。



 まあそれはいいが、輝馬のやつ調子に乗って、最近は、着衣プレイを強要してきやがる。

(単語の意味がわからないやつは、ググってくれ)


 あと耳元で囁くのやめろ。こそばゆいし、なんかヘンな気分になる。

 というわけで、以前とあまり変わらなかった。


 いや、正確には女の服は着るは、輝馬のリクエストで髪も少しずつのばしているわ、血は毎月でるわで思いっきり違うのだが、輝馬は、普段はいつも通り接してくれている。


 しいていうなら、スキンシップは増えたが。

 えっちのほうは、輝馬の方が経験豊富なので、任せている。



 ひにん? というやつも、してくれているようだ。


 みことも進藤も、口をそろえて、ちゃんと「つけている」か聞いてくるので、最初はびびったが、どうやら初潮が訪れたことで、オレは、ガキが産めるカラダになったらしい。


 不調もしばらくすると、おさまった。


 あれだけ具合が悪かったのは、雷耶の予想通り、いったん男子に傾いていた躰が、急激に女の躰に、つくりかえられていたからで、乙姫あたりは、最初から気づいていたらしい。


――だったら、最初から言えっての。



 そういうわけで、見た目は、女子に近づいたオレだが、中身はそのまんまだった。物の見事に。


 あちー、とか言って、胸元をパタパタしているオレに、やたら周囲の視線が、集まるのも慣れた。

 はじめて知ったが、どうやらオレは、かなり可愛い部類に入るらしい。


 そんな美少女(?)が、胸(ただし貧乳)がチラみえする勢いで、胸元に風を入れていると、女も男もフリーズする。


 告白される機会も増えた。

 当然、彼氏がいるからとフるが(輝馬がいるし)、今まで全然、モテなかったのになんでだよ。納得いかねえ。



 話は、そこで終わらない。


 躰が女子寄りになったことで、男子の制服も似合わない、という理由で、オレは女子の制服を着て、学校に通うことになった。


 ここで、改めて、復習をしておこう。



 オレ達の通う<グリマーガーデンスクール>は、徹底的な階級制である。

 年齢ではなく成績によってクラスがわけられ、制服すら、成績がいいやつのほうが自由にできる。


 一番レベルの低いCクラスの夏服は、スタンダードな白のシャツかブラウスに、ストライプか黒のスカートかスラックス。

 アクセサリーは禁止で、それぞれの能力に見合った、絵が描かれた金色のワッペンと、能力ごとの色の、リボンかネクタイをつける。


 平民なBクラスは、アクセは自由だが、他はCとほとんど変わらない。

 着崩すのはありだが、大幅な制服改造は認められておらず、せいぜい丈を縮めたり、腰パンぐらいだ。


 制服改造オッケイなのは、Aクラスからだ。


 自分で作ったり、他校の制服をアレンジしたり、制服っぽければなんでもアリだ。

 もちろん、ほかのクラス同じく、この学校の生徒の証であるワッペンはつけないと先生にお説教される。


 アクセサリーはもちろん自由だ。


 Sクラスもだいたいそうだが、最上級クラスの証として、属性が闇なら黒のローブ、光なら白のローブを着用することが認められる。

 さらに、「選ばれた者」として、金色の腕章をつけるのだが、そのローブが、超絶お洒落だ。


 例えば、主席の夏夜は、以前説明した通り、白のローブにルビーレッドの、細身の赤いリボンかネクタイ(日替わりで着用)、背中には識天使<セラフィム>の証、赤い六枚の翼が描かれている。


 序列2位だった輝馬は、黒のローブにセルリアンブルーのネクタイ、背中には智天使<ケルビム>の青い四枚の翼が描かれており、能力を失った今は、簡素な制服でつつましいが、いまだに女子から人気がある。

(嫉妬してねえけど何か?)



 第3位、座天使<スローンズ>のこうは、制服は黒いローブに、エメラルドグリーンのネクタイ。

 同じ色の翼が背にあるが、天王てんおうだからか特別待遇で、私服可である。(ボンボンうぜえ!!)


 女子枠だと、第9位・天使<エンジェル>の小夜は、黄色いリボンに、黄色いラインの入ったセーラーの上に、イエローの二枚の羽のついた白いローブを着ている。



 オレはこの前までBクラスだったが、強化<ブースト>や、煉獄の番犬を操る力が目覚めたことにより、いきなりSクラスに昇格した。


 位は雷児を押しのけて、第8位の大天使<アークエンジェル>だが、


「高潔にして美徳、その姿は英雄たちに勇気を授ける、優美なる……なんちゃら」

 で、次の試験次第では雷耶を差し置いて、第5位である、力天使<ヴァーチュー>に抜擢される、とか噂されているらしい。


 いくらなんでも、ガセだと思うが。



 話が長くなったが、今オレが着ているのは、どうみてもオーダーメイドにしかみえない、ワンピースタイプの制服だった。


 タイトな白いブラウスに赤いリボン、青いストライプのスカート部分はハイウエストで、ない胸が強調されている。闇属性を表す黒いローブは短めで、テレビに出てくる魔女っ娘みたいだ。



「可愛い」


 輝馬は、開口一番、そういった。


「~~っっふざけんな!!」


 顔を真っ赤にして殴るが、ひょいとかわされて、抱きしめられた。


「ごめん。いや、違うかな……綺麗だ、すごく」



――きれ……、きれい!!??


 ぶわっ、と顔のあたりが燃え上がった。

 からだ中の血液が、沸騰ふっとうする。


 いったん、躰を離した輝馬は、おいで、と言って、返事を待たずに引き寄せた。

 腰を抱き寄せ、首元に口づけられたときは、思わず全力で押しのけた。


「――何すんだ!!」


「だって、君はもう、僕のものでしょ」


――マーキングしておかないと、悪い虫がつくよね?


 そう言って、首かしげ、目を細めて、輝馬は微笑んだ。

……色気垂れ流してんじゃねえよ!!


 そのあともちろん、めちゃくちゃ鳴かされた。




 翌日、人生初の女子の制服で登校という、羞恥しゅうちプレイに耐えながら、校門をくぐると、なんとその場にいた全員が、オレに注目していた。


――やっぱり、変か!?


 オレは、輝馬の悪ノリにより、ひざ上どころか、ふともも丸出しレベルまで、短くされたスカートをつまんで、引っ張った。


 やっぱり、オレに女の制服なんて似合わねえんじゃ……、と不安になってスカートをまくると、近くの男子が昏倒こんとうした。


「――大丈夫か!?」


 今日暑いし、熱中症かなんかじゃ、と心配し、駆け寄って抱き起こそうとしたら、

「天使だ……」と言って、名もなき男子は、意識を失った。


――いや、おかしいだろ!?



 その後、やっぱりというかなんというか、保険医であるみことの口から、小夜や夏夜と同じ、魅了<チャーム>の能力が、開花していたことを知った。


……どうりで、立て続けに身内から、告白されると思った。


――こんな能力、いらねえよ!!




 そういう感じで、だいたいは平和だった。


 違うのは、輝馬が能力を失い、退学するかしないか、という話になったことだ。

 それについて保険医のみことは、


「妻も、僕と契って、女神に与えられた純潔の力を失った。でも、子どもが生まれたら、また元に戻ったんだよ。おそらく、妻は護られる乙女から、護る母になった。君も、いつか能力を取り戻す。必要なその時にね」


「だから今は、ゆっくり休むといい。きっと、自分を見つめなおす時間が、必要なんだと思うよ」


 と、変態らしかぬ、いいことをいって引き止めた。

 実際、その後すぐに、輝馬は手厚いサポートを受けて、リハビリ代わりの補修を、受けさせてもらえることになった。


 後日、命に報告すると、ほらね、といって、にたりと笑った。

 実は、こいつが、「裏で手を引く、真の校長」って噂も本当なのかもしれない。



――そして、話は、巻き戻る。




 

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 “And I become a lady”  ~アンド・アイ・ビカム・ア・レディ~


「そしてレディー(女、お嬢さん)になる」


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