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『ミッドサマー・ロストハート』~心を失った悪魔の王を「愛する」ための方法~  作者: 水森已愛
第4章 ((desire is Sin. )) ……それは、赦されぬ願い。
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第25話‐原罪の乙女‐“Sweet Lips,the Limbs of the Fascination” 【後編】 

挿絵(By みてみん)



……どうしよう。とりあえず、どうしよう。


 朝目覚めると、オレは全裸だった。


――え? ドッキリ? これ、なんかのドッキリか?

 だらだらと汗を流し、隣の美女をみやる。


 すうすう寝入っているが、誓って何もなかった。

……と、信じたい。


 そこではじめて、冷静になった。

 そうだ、オレはまだ、精通せいつうしてなかった! セーフ!!


 なにがセーフなのか不明だが、とりあえず、乙姫を起こす。


「おい、起きろ、説明しろ」


「ん~~?」


 乙姫は、あろうことか、抱き付いてきた。


 お互い、裸の状態での密着。

――色々あたってんだけど!??


「なんだ、小夏か……昨日はありがとな」


……それ、どういう意味でだ?


「最高だったぜ……ダーリン」


――!!??


……やめろ!!  頼むから、もうやめてくれ!! オレのライフは、とっくにゼロだ!!


 固まっていると、乙姫は、くくっと笑って、


「冗談だっての。ちょっとからかってやろうと思って、服脱がせといた。だいじょうぶ、お前は清らかな身だ」と言って、おかしそうに涙を拭いた。


「それ、最初から言えよ!!」


 なおもひっついてくる、乙姫を引きはがすと、真っ赤な顔で、怒鳴どなった。


「まあ、ちょっとイタズラしたけど」


「警察<ポリス>に突き出してやろうか?」


 この痴女ちじょを、誰か止めてくれ。

 くすくす、と笑い続ける乙姫を無視して、服を身に着けていると、「小夏は、かわいーな」と、心底嬉しそうに笑われた。


 蜂蜜はちみつみたいな、今にもとろけそうな笑顔だ。

……つうか、なんでこいつ、こんなに機嫌いいんだよ。


 ドキドキしていると、「続きするか?」とそでをくいくいと引かれたので、「だが断る」と返しておいた。


――この、小悪魔ビッチが!!


 オレが服を着終わると、「まあ、俺も、最後までしたことねーけどな」と、乙姫は着物にそでを通した。


「ウソだろ」


 ぜってー、男食い放題だぜ、この女。


「マジ。つうか、はじめては、好きな男がいいだろ」


「ふうん」


 そんなもんか。意外だな。

 つうか、こいつの好きなやつって、誰だ?


「まあ、お子様には、わかんねーかもな」


「いちいち、人の神経、逆なでしてんじゃねーよ」


 頭をなでられ、オレは真っ赤になって、振り払った。


「お前の成長が楽しみだぜ」


「――当然だ。ぜってえ男前になって、夏夜をヨメにする」


「無理だな」


「しばくぞ」


 確かに、いくら鍛えても、全然、腹筋割れねえけどな!!

 涙目で、やたらくっつきたがる乙姫を引きはがしていると、扉があいた。


「あ」


 服は着ている。着ているが、オレ達は、乱れたシーツの上でじゃれあっていた。

 この図、紛らわしくねえか?


「小夏……」


 はじめに輝馬が、ずかずかとやってきて、乙姫を引きはがした。


「……なにやってるの? 朝から」


「……ぷ、プロレスごっこ……?」


――なんかこええけど、なんだ!?


「……へえ。首にキスマークつけて?」


「――マジか!!」


 あいつ、なんてことしやがる!!


「――さあて、俺様は、探検でもしてくるか」


 乙姫は口笛を吹くと、次の扉を開けた。


「……小夏……」


 夏夜が泣きそうな顔をしている。


「――ちがうちがう!! 話聞けって!!」


 とりあえず、一同にかいつまんで話すと、「へえ」と輝馬は、無表情で返した。


――? ……なんかすげー怒ってるっぽい?


「とりあえず、乙姫のからだの不調は、闇の力が不安定なためだろうね。彼女の中の、鬼と魔神の力は、食い合わせが悪い。進藤先生の家で、頻繁ひんぱんに検診を受けているようだが、どうやら、異世界という、特殊な環境に身を置いたことが、悪影響を及ぼしたようだね。しばらくは、能力を使わない方がいいだろう」


「マジか」


 あいつ、具合悪くすんなら、こっち来なきゃよかったのに。


「――まあ、小夜としては? さっさとくたばれ、って感じだけどね?」


 小夜が、ぶっそうな悪態をついている。

 猫かぶりどこいった。


 それはそれでいいことだが、輝馬といい、なんでこいつら、こんなにキレてんの? 牛乳飲めよ。


「……キスマーク……」


 皇が、真っ青な顔で、ぼそっとつぶやくが、だから、なにもねーって言ったろ!!


「とりあえず、僕らも、次の部屋に進もう。彼女が心配だ」 


 一ミリも心配してなさそうな、平坦へいたんな声で言うと、輝馬は、ずかずかと先を歩いた。


「おい、待てって……」


 輝馬に続いて、扉を開けて、声を失った。


――そこにあったのは、地獄絵図じごくえずだった。





 /////////////////////////////////////




 “Sweet” ~スイート~

 甘い,砂糖を入れた (⇔bitter,→sour).

 〈酒・ぶどう酒が〉甘口の,甘みの強い (⇔dry).


 香りのよい.

 〈音・声が〉調子のよい,甘美な.

 気持ちよい,楽しい,快い.


【叙述的用法の形容詞】 〔+on+(代)名〕《口語》〔人に〕ほれて,〔人が〕好きで.

 《口語》 きれいな,かわいらしい,すてきな.


 形容詞としての「sweet」のイディオムやフレーズ

[しばしば複数形で] 甘いもの.

 《主に英国で用いられる》 砂糖菓子,キャンディー 《ドロップ・ボンボンの類》.


 《主に英国で用いられる》 (甘いものが出る)デザート 《食後のプディング・ゼリー・アイスクリームなど》.


[the sweets] 愉快,快楽.


[my sweet で呼び掛けに用いて; しばしば sweetest] 愛する人,いとしい人.

 恋人,愛人.


 “Lip”  ~リップ~

「唇」


 “Limb” ~リム~

【名詞】【可算名詞】

(人・動物の胴体・頭部と区別して)() 《腕・脚・ひれ・翼など; cf. trunk 2a,→head 1a》.


 《口語》 いたずらっ子,わんぱく小僧.


 “Fascination” ~ファシネイション~

【不可算名詞】 魅惑,うっとりした状態; 魅力.

[a fascination] 魅力のあるもの,魅惑する力.


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 “A Sweet Lips,the Limbs of the Fascination”


  ~スイート・リップス・ザ・リムズ・オブ・ザ・ファシネイション~


「甘い唇、魅惑みわく肢体したい

「可愛らしい唇、魅惑のいたずらっ子」


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