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魔物です


「一体全体どうしてこんなことになったのか、説明してもらっても良いですか?レン先輩」


私は今、学校の庭である森にいる。何とそこで、レン先輩と共に魔物退治の真っ最中。目の前の魔物は私の三倍ほどの大きさで、大きな口をあけて咆哮を上げている。初めて見た時に開いた口が塞がらなかったのはご愛嬌。そんなもの相手に毎日闘わなければならないとなると、一苦労だ。ランディニとはいったい何のだとついつい叫んでしまったとしても仕方のないことだと思う。自分でもどうしてこんな状況になっているのか全く理解できていないままに駆り出されたこのお仕事も、ランディニの役目だというのだ。


あの爆弾発言から一週間。私は有無を言わさずランディニに仲間入り決定。当の本人などお構いなしに、その仕事内容を大まかに説明していくのはもちろんイラト先輩だった。学校の行事はもちろんのことだが、その中でも私たちが今まさに行っている魔物退治というのが一番の役どころでもあるらしい。毎日のようにあらわれる魔物たちは、もちろん餌を求めて山奥からやってくるのだが、そのほとんどが人々に害をなす存在。たまに生徒が被害にあってしまうとのことで、早朝と夕方そして深夜にパトロールを行わなければならないらしいのだ。そんなもの自分で何とかしてくださいと言いたいところだが、実際に闘ってみてその難しさを知ってみると、そんな事も簡単には口にできなくなる。


私だってこんなの初めてで、四苦八苦しながらレン先輩の邪魔にならないように動いているので精一杯。それなのにレン先輩ときたら何食わぬ顔であっさりやっつけちゃったりするもんだから、余計に私の癪にさわる。もっと手古摺ってくれたりとかしてくれれば、あぁこの人でも大変な事があるんだと笑い飛ばす要因が出来るのに、全くそんな隙を全然見せてくれない。本当に可愛げのない人だ。


そんな人物とパートナーを組まされてしまった私を誰か慰めてくれないかと思っていたのに、あの後教室に帰ればアンとポーラに驚かれ、羨ましがられ、挙句の果てにはクラスの一部からやっかみまで受ける始末。そんなに言うなら変わってやるよと言いたいけれどもそれも不可能な事。ため息ばかりが増えて、何の得にもならない。


大体二人で一緒にいたって何か話すわけでもなく、ただ一緒にいるだけ、闘っているだけの間柄。イライラが募るばかりの相手にどう対応していいのかもわからず、無言でついて行くことしかできない。その状況のどこに羨ましい要素があるのかと逆に問いただしてみたくなる。こっちは全く持って楽しくもなんともない有り様だと言うのに――。


「そんなことより目の前の敵に集中しろ」


考え事をしながら魔物を相手にしていたことを感じ取ったのか、いつもよりも眼光を鋭くして睨みつけてくる。それに負けじと睨み返しながらも、敵の攻撃をひらりとよけていく。


「そんな事って、私には結構切実な悩みなんですけど?」


「いいから黙って逃げ回ってろ」


そう言ってため息をつくその姿も様になるとは、この男の弱点とはいったいどこにあるのだろうかと真剣に考え込みそうになってしまう。今のこの状況では無理だが、今度探してみようと心に決める。


私が囮になることであっけなく魔物を倒したレン先輩は、さっさと自分の身を整えて歩きはじめる。その後ろを何も言わずに付き従う。


その後ぶらぶらと歩き回り、夕方のパトロールが終わってこの間のランディニ専用室に行くと、すでに戻って来ていた先輩方三人がいた。パトロールは二組に分かれて行っており、早朝と深夜はそれぞれどちらかの一組が。特に魔物の出やすい夕方だけ、二組同時に行っている。力加減から見て、この組み合わせになったらしいのだが、どう考えたっておかしいと感じるのはどうも私一人だけらしい。だってそうじゃない?どうしてこの五人の中でも最高学年である三人がまとめて一緒になっているのだ。普通分けるべきではないだろうか?


そう思って前に一度プルーム先輩に聞いてみたら、どうもこのメンバーで一番闘えるというか、戦闘能力が高いのはレン先輩だそうで……。次にダイ先輩と続き、イラト先輩とプルーム先輩は同等らしい。私は一番下っ端なので、強いも弱いもないんじゃないかと思っていると今度はイラト先輩が横から私の身体能力などが飛びぬけていることを説明してくれた。どうも入学試験の時の測定が他とは比べ物にならなかったらしい。勉強だけでなく、体力も申し分ない生徒。だからこそ代表に選ばれたというのもあるらしいのだが、それだけでなくレン先輩が私を特別気に入っていることも要因だと言う。


ん?私、レン先輩に嫌われているわけではなかったのだろうか。態度などがそっけないのは誰に対しても同じらしく、けれども私は特別に構っているとのこと。私自身は全くそんな感じがしないのだから、まったくもって理解し難い。どちらにしろ私にとって苦手な先輩であることには変わりないのでなるべく関わらないようにしておこうと心に刻む。

変なやっかみを受けたくはないもんね。


さて、今夜もまた頑張りますか。



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