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薬物学です

始まりましたよ、薬物学……。

この授業は薬草やその他もろもろ(虫や動物のある部分など)を調合していく授業。今日はその中でも簡単な傷薬を作ってる。


顔を上げればぐつぐつと掌大のお鍋があちこちで煮えたぎってる。うーん、なんだかいろんな色の煙が上がっているんだが、果たしていいのかな?隣でも何だか不思議な物体が出来上がっていたりするんだけど……?私のものとだいぶ違う気がするんだけどなぁ――。

それでもやっぱり私が口出ししちゃダメなんだろうな……。言うだけは簡単なんだけど、私じゃ説明しきれないし――。でも気になる。何だか不思議な香りの煙まで上がり始めてるんだけど、良いのかな――。っていうか、煙に香りってつくものだっけ?

そんな風に悩んでる間に先生が気づいて慌ててこちらに来てくれた。


「これは、失敗だねぇ――。いったい何を作ってるのかね?」


そう聞いたペル先生が、腕を組んで首をかしげてる。

そうだよねぇ。私が気付いたときには既に何か違うものが出来てたし、どうしたらいいのかわからなくて何も言えなかったんだもん……。


「何でしょう……」


作った本人まで首をかしげてる。


「まぁこれはそのままにして、危ないから処理は私がしましょう。君は隣の人のものを見て、この薬がどのようなものなのかをよく確認した後にきちんと復習しておいてください」


ペル先生はそう言ってすたすたと次に危なげなものを造り出そうとしている生徒の元へと歩いて行く。

本人は、先生に言われた通り私の所に来て自分のものと見比べ、


「何でだろうなぁ」


などと呟いている。

その問いに答えることはできないけど、取り敢えずもう一度作り方を確認。この薬は今度の試験に出ると思うんだよなぁ。などと思いながら、自分の鍋をぐるりとかき混ぜる。

うん、良い色。そろそろ出来上がりかな。

手を上げて、ペル先生を呼び寄せる。


「はい、合格です。この瓶に移して持って帰っていいですよ。使用するときはきちんと取り扱い方を理解してからにしてくださいね。何の薬であっても、使い過ぎは逆に毒に成り得るので気をつけて」


にこやかに説明してくれて、今日はもう帰っていいと言われ、素直に教室を出る。

アンとポーラがまだだけど、先に教室に戻っていようかな?


私たちの学校は、学科ごとにきちんと教室がある。それなのにクラス教室もあり、たまに座学だけの授業なんかの時だけ教室移動がなかったりするけど、よっぽどの事がない限り各教室に移動するのが通例となっている。

学年が上がるごとにクラス教室を使うことも無くなっていくらしいんだけど、やっぱりそこは実際なってみないとわからないものだよね。体験談や説明だけじゃ、何か今いちピンとこない。百聞一見にしかずとはこのことだ。


グダグダと考えながら、先程作った薬の瓶を眺めてみる。

掌よりも少し小さめの綺麗な細工の瓶に、薄紅の透明な液が入っている。これ数滴で傷が治るんだと思うと、やっぱり凄いなぁって思ってしまうものだよね。使ってみないとその効果は分かんないんだけど、自分から傷つくろうなんて思えないからいざという時使おう。それまで大事に持っておこうかな。

そう思って腰に付けている小さなショルダーの中に大切にしまっていると、油断してたためか前から来た人と思いっきり正面衝突しちゃった。


「ご、ごめんなさい――」


しこたまぶつけた鼻を押さえながら相手を見ると、相手も私と同じように驚いた顔で私を見下ろして来ていた。というよりも、私の顔をガン見。

ん?私の顔に何かついてる?

そう感じてペタペタと手で顔を確認してみたけど、わからない。何も着いていないように思うんだけど……。

首をかしげて相手を見返していると、はっと気づいて私の腕を掴んできた。

え、え、何なの?私、何かした?いや、確かにぶつかりはしましたが、特に何かした覚えはないですよ?ってか初対面ですよね?

頭の中で色々考えながらも、腕を強く掴まれたまま引っ張られるので着いて行くしかない。

おーい、私はいったいどこに連れて行かれるんですかね?


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