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6・ゴミのポイ捨ては良くないと言うだけ言う

「ふむ」


 青い空の下、今さっき殺した龍の死体を見てイケちゃんは思う。


「最後の一発の威力を最初に出せていれば一撃で殺せたか? どうもまだ体の動かし方がわからないのか……なんだかんだで初めての相手が格下でよかったと思っておくべきか」


 龍の体はエイエイオーの尻尾で縛られ固定された頭を軸に力なくぶら下がっている。

 止めの一撃は完全に息の根を止めきったのが見て取れる。


 龍に敵意を持たれた時から一瞬たりとも龍を脅威と思わず恐怖も感じなかったわけだが、記憶が無いだけで元からあの程度の相手には勝てる実力を自分が備えているのは何となくわかる。

 しかしどのくらい自分が強いのか分からないと言うのは少しもどかしくもあり怖くもあった。


 もし仮に、記憶を思い出し十全の力を振るえる自分よりちょっと弱い、そんなレベルの敵との戦いになれば記憶が無く体を上手く動かせていないんじゃないかという疑いのある今の自分ではかなり危険な気がする。

 自分の本能的な危機感が記憶を持った完全体の自分を基準としているのか、あるいは今の自分を基準とするのかと言われたら、恐らく無意識の反応で完全体の自分を基準としてしまいそうな気がするから。


「うーん、どうしよう……平和主義を掲げて戦わない道を選択すればいい気もするが相手が強制的に襲ってきたらなぁ。逃げるってのはイケメン的にカッコ悪い気がするし……」


 そして少し考えた結果


「そんなピンチに直面したらその時の俺が何とかするだろう」


 と、未来の自分に問題を丸投げするのであった。


「ところでイケちゃん様」

「なんじゃらほい」


 うむ、と自己完結しているところにかかった声はミイちゃんの声。

 こいつは悩みとか無さそうでいいよなぁ、とか羨ましく思うイケちゃん。


「龍の死体はどうなされます? 捨てますか?」

「ふむ」


 自分のような高度な悩みを持たないのんびりした思考のミイちゃんを羨ましく思いつつ龍の死体について考える。

 でかすぎて船に回収する気にもなれないし、そもそも龍は死ぬ前にドラゴンは殺しちゃらめぇとか言ってたような言ってなかったような……仮に龍を殺すのが世界の常識的に大犯罪であれば龍の死体をぶら下げて飛んでいるところを誰かに見られたらえらいこっちゃである。


 かといって雲海に捨てるのはどうか?

 ゴミのポイ捨ては良くない気がする。

 となれば……


「食うか」

「あまり美味そうに見えませんが」

「ゲテモノは意外と美味と言う。でも、内臓とか皮は捨ててしまおう。ゴミのポイ捨てになるがそこまで面倒みきれんしな」


 そういうことになった。


 ちなみに、龍の肉は美味しくなかったそうな。

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