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4・スタイリッシュイケメンアクション

 フウヤレヤレ。

 イケちゃんは表面には出さないように気をつけながら内心でため息をつく。


 記憶喪失なために自分がどういう奴だったのかわからない、好戦的なのか平和主義なのか、すら。

 だが敵意を持って向かってくる生物に対して余裕の態度を持っていたことや実際に今、喧嘩を売ってこられてもその事をどうこう思っていない自分はどうやら暴力沙汰を忌避するようなタイプではなかったことがわかった。


 とはいえ、ひょっとしたら記憶を失う前と記憶を失った今とでは全然性格が違う可能性も無きにしも非ずなので断定するのは早いが。


 それは置いといて今は目の前のことである。


 エイエイオーに接近してきた龍に対して注意はしたがどうやら相手は聞く気が無かったようで殴られてしまったのでそれなりの対応をしないわけにはいかない。

 ここから放り投げてエイエイオーの中に逃げ込んで最大速度で逃げるのも手だがイケちゃんとしては旅はゆっくり楽しみたい。

 飽きればまた行動方針を変えるつもりが今のところ旅自体には飽きていないので速度を変えてセカセカ飛ぶのは正直、嫌なのだ。


 ならばどうするか……そこまで考えて、面倒だし戦うか。

 そう結論を出した。



「記憶喪失だから主観的には初めてのバトルだな。できればそういう初めてのイベントの相手はもうちょっと強そうなのが良かったなぁ」

「きさっ」


 戦うとなればまずはパンチから。顔面に叩き込んだが何か喋ろうとしてたんじゃね? とか思わなくも無いが面倒だしスルーするのが出来るイケメンスタイル。



 現在、エイエイオーは緩やかに飛んでいるつもりでも相当に速い。

 そして周りの環境はランダムに荒れ狂う風と風に合わせて上から、横から、前からと叩きつけてくる雨のせいで少しでも体が浮けば遥か彼方にすっ飛んでいくかもしれないような状況である。

 それを言い出せば立っていることすら本当はありえないのだが。


 そんな中イケちゃんは人型になった龍と格闘戦をおこなった。

 龍のパンチや蹴りは空を切りイケちゃんの攻撃は面白いように当たる。

 それどころか龍が足払いをしてきた時、軽くジャンプして避けると言う信じられないアクションまでしてみせた。

 もちろん、ジャンプで避けるだけじゃなく飛び蹴りもくわえることで回避と攻撃を流れるように行っていたりするが。


 殴られたり蹴られたりしてる最中も龍は「きさま」「おのれ」「人間風情が」「ぐぬっ」「許さん」「ええい」「ありえぬ」などなどと何か言ってきたがそれらは面倒なので総スルーである。


 そして無様に倒れ臥した龍に連続でストンピングを食らわせていると


「イケちゃん様、甲板に衝撃を与えられては進行方向がずれてしまいますのでもう少し抑えてください」


 なんてミイちゃんからの苦情が聞こえてきた。


 まぁ苦情が出るのも仕方が無いか、と少し蹴り足を緩めたらその隙に龍が立ち上がり体が膨れ上がった。



 むくむく膨れ上がり、と言うか伸びだしたその姿は最初に遭遇した時の巨大な黄金の龍、そのもの。

 全長1キロ近い龍は当然胴回りも相応に太く頭もでかい。

 限界まで顎を開けばエイエイオーも一飲みされかねないほどのサイズだ。



「きさまぁぁぁああああッ!! そちらに合わせて人間の姿で遊んでやっていれば人間風情が調子のりおって!! この屈辱! 万死を与えてなお足りぬわ!! 殺す! 殺す殺す殺す!!!! 死んで死んで死に続けて悔やむが良いわ!!」


 そんなデカイ口をあけて飲み込むのかと思えば叫ぶだけ。

 いや、ほっておけばその内行動を起こすのかもしれないが何とものんびりやつだなぁ。

 と、イケちゃんは思った。


 エイエイオーは龍の変化に一切興味を持っていないかのように構わずに前進中である。


「しかし下品な龍だな。サイズからして成体かと思っていたが知性も品性も感じられん」

「そうですね。過去の記憶が無いので確定ではありませんが確か龍と言うのはもう少し……なんというか、ああではなかったように思われますな。で、どうします?」

「俺の喧嘩だしな。ケリを付けに行くがエイエイオーを止めるのもな……尻尾を細くして俺の足に巻いといてくれ。ちょっと飛んでくる」

「かしこまりました」


 エイエイオーのケツから伸びる尻尾。

 それは普段は力無くゆらりゆらりと揺れているだけに見えるが実は操作可能な部品であり、伸縮自在の不思議金属で出来ているので普段はエイエイオーの全長と同じ位でしかないが伸ばせば最大で20キロくらいまで伸びるのだ。

 イケちゃんたちに記憶は無いのでそこまで細かいことを本人達は知らないが、できる事とできない事の判別くらいはつき、尻尾を伸ばして自由に操作するのが可能と言うのも何となくで理解していたりする。



「尻尾の操作は俺がするが航空に不便が出そうなら強制的に引っ張って構わん。できればその前に一言入れて欲しいがそこら辺の判断はその場のノリでな。頼んだぞ」


 しゅるっと片足にエイエイオーの細くなった尻尾を巻きつけたイケちゃんは、宙でとぐろを巻き未だにギャーギャー叫んでいる龍に向かってピョンと飛び跳ね向かっていった。

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