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3・ちんちん大蛇

 エイエイオーは着陸場所をあまり択ばない船だからどこでも着陸できるのだが、そうなってくると逆にどこに着陸すべきかと、迷う。

 ちゃんと外との交流のある土地であるのなら船を止める場所もあるのだろうが、ここにはそういうのは無さそうだ。

 めんどくせえなぁ、適当に人の多そうなところの近くで良いか。イケちゃんはそう決めて、人が密集してる場所の近くの空いたスペースにエイエイオーを止めた。

 あとは上手くこの島の人たちと交流するだけだ。



 この島は名をウタ島と言う。

 住民であるヒューマノイドたち……見た目の特徴から虫人間と言うべきか。彼等の歴史はまだ4~500年くらいとの事だが、単に歴史を刻み始めたのがそのくらいという事で、もっと前から彼らの祖先の営みはあったのだろうと思われる。が、彼ら自身が昔に思いを馳せるより今を生きるのに精一杯と言った所か。詳しくは分かっていないとのことだ。


 まぁ歴史学者じゃないしそこら辺はどーでもいい事よ。イケちゃんはそう言って細かい話はスルーする。

 ちなみに言語だが、彼らの独自の物なので『内側』の人間であれば普通は会話できるわけもないのだが、イケちゃんにとってはそれは大した問題になりえない。

 元々からして空気の振動とパターンの組み合わせによる言語の組み立てによる会話を必要としていないからだ。だからいつものように普通に会話が出来る。

 でも交易とかの繋がりを求めるのなら、言葉を教えたり彼らの言葉を学んでそれを他の国にも広めるなどする必要があるかもしれない、とも思う。

 自分が出来る事を他の人類全てが出来ると思っちゃいけないのだ。


 この島には複数の集落があって、普段は積極的に交流しているわけではないがまるで交流が無いという訳でもないらしい。


 そこら辺はこの島の問題である。

 火山を中心とした島なので地熱で熱くなりそうな物だがこの島はえらく温度が低い。

 それゆえに作物の実りも微妙で食べ物も少なかったりと、あまり人数を増やすことが出来ないそうなのだ。

 だから集団を複数の集落に分けて、普段はそれぞれが関わらないようにして、食料を得るための縄張りが被さらないようにとしているそうな。


 とは言え一応はこの島の住民としての仲間意識はあるので、まるっきり縦横の繋がりが無いと言う訳でもないそうだ。

 現に、エイエイオーの着陸した最寄の集落に対して、他の集落の体力のある世代が何事かと助っ人としてやってくるくらいだから。


 何しろこの島の住民にとってはこの島が世界の全てである。

 雲海を越えた先にも土地があるなんて思っても居なかっただろう。

 雲海を越えて他所から何かがやって来るなんて考えた事もなかっただろう。


 だから、エイエイオーが空からやってきた事に驚き、その中から人が出てきたことにも驚いていた。


 その驚き方は


「な、なんじゃー、あれはー!」

「人だ! 人が出てきたぞ!」

「惑わされるな」

「喋った! 会話が出来るかも……」

「惑わされるな」

「あぁっ、女子供も居るみたいだぞ!?」

「惑わされるなと言っておるーっ!」

「それもそうだな」

「よし殺そうぜ」

「うむ、何か知らんが怖いからな」


 と、そんな感じで排他的なものではあったが、外部に対して排他的であるという事は仲間内での繋がりが強固だという事でもある。

 まぁ彼ら彼女らの絆がどれ程強固な物であろうと、だからと言って彼らの望み通りに殺されてはたまらん。生物との能力差を考えれば殺される心配なんてないのだけど。

 だから


「うろたえるな小僧どもー!」


 の、一括で黙らせる。いつものやり方である。

 いつもって程にうろたえる集団と触れ合う機会なんてないけれど。




「始まりこそ、かような不幸な摩擦が起ったとは言え、物資のやり取りを始めればあっという間に打ち解けるもの。

 我々は思いの他、簡単にこのウタ島の住民に受け入れられたのであった」

「いつもながら説明的な独り言ですね」


 ミイちゃんのツッコミをうるせえなぁ、と思うイケちゃん。もちろん口にも出す。

 しかし動かしてるのは口だけでは無い。


 このウタ島は立地的に人外魔境が過ぎるため、当然のように外部との交流なんて無かったのだ。

 となればこれは貿易でしょう。


 もっとも貿易と言えるほどここに何かがあるわけでも無さそうなので、一方的に物をあげてる形になりそうだ。ただ、この島独自の動植物に対しサミングが興味心身だったので、それらとの物々交換という事で一応は貿易とも言えなくも無い。

 エイエイオーに詰まれている荷はこの島の人々を沸かせるに足るものであった。

 元々、交易と言っても外界の島なんてものをそれ程真面目に探していなかったのが災いして、バイク以外はミツキとサミングの服やヌンチャクや、夜にベッドで使うエロアイテム以外は食料しか積んでいなかったのだが、それが逆にウタ島の住民の琴線に触れた。


 この島は寒いだけあって、あまり食べ物が豊かではないのだ。不味い物や食い難い物も工夫して頑張って食べている。

 そんな所に、普通に食べて美味しいものを持ってくればどうなることか……もしイケちゃんが強くなければ


「殺してでもうばいとる」

「な、なにをするきさまらー!」


 とでもなっていた事であろうよ。


「とは言え譲れるのは少ないんだよなぁ」


 まず植物。

 あまり熱を必要とせず育ち、なおかつある程度以上の食料として供給される上に、回転の速い植物。

 そんな都合の良いものは今まで周った国には無かった。

 この世界、基本的に島ごとに大きく気温が違う、なんてことは無いからだ。

 どうでもいい話ではあるが、高度が高い場所は冷えている、とかの差はあるが、それでも基本的に温度は一定である。

 それゆえに他所からもってきた植物はこの島の環境に合わずに育ちが弱いので必要ない。

 一応四季に近い季節の変化はあるのだが、一年中寒い島に対応した植物となると現地の植物の方がマシなのだ。


 次に家畜。

 エイエイオーはそれなりに内装が広くなっちゃいるが、それでも所詮は有限の狭さである。

 家畜は基本的にニワトリが沢山と可愛いから山羊を数等飼っている程度でしかない。

 船旅での運搬をしていただけあって多少の環境の変化にも対応できるくらい頑健なので、注意をして育てればこの島でも増やす事は出来るだろうが、その為にはすぐに食べることも出来まい。まずは数を増やすことから始めねばならない。

 飼育方法を教えるくらいのサービスはするが、成功するかどうかはここの住民達次第である。


 あと、元からエイエイオーに存在していた無限にバナナが取れるバナナの木はあるが、サミングがバナナ好きなので木を譲ることを嫌がってしまった為にこれは譲れなかった。

 ちょっと困ったさんだ。

 とは言えイケちゃんもバナナは好物なのだが。ミツキやンヌキも下半身のバナナとか馬鹿な意味では無い普通のバナナは結構好きだったりするので、やっぱりバナナの木は譲れまい。



「まぁ食料だけは大量に持ってたから、他にも俺らの手持ちの食料と向こうの物を物々交換すればよかろうなのだ」


 ミツキとンヌキは何だかんだで生命体であるので新陳代謝を行う為に、外部からの栄養を食事という形で補給する必要はあるのだが、実はイケちゃんのアレ、カッコイイ言い方をする所の『いのちのせい』をゴックンチョすれば十分に事足りるのだ。

 ミイちゃんや他のエイエイオーのクルー達は、イケちゃんのオーラで動いているとの事なのでその心配は更に無い。

 イケちゃん自身やサミングも食事は取る必要が無い。一生飲まず食わずでも困りはしない。

 それでも食って飲んで寝てとしているのは趣味である。歯ごたえと味を楽しむだけの。


「新陳代謝が止まっているのにエロい事できんのかって? 俺は新陳代謝は止まってても、ちんちん大蛇は元気だから大丈夫なんだよ」

「お父さん、くだらない事いってないで物資の運搬手伝ってよ」



 エイエイオーに詰まれた物資は意外と大量である。

 が、イケちゃんやミイちゃんは当然として、エイエイオーのクルー達も実はそうとうな力持ちだったために、サミングが言うまでもなく運搬はアッサリと終わった。


 この島全体と貿易するのならエイエイオーで各地の集落を回って、ギブミーチョコレートな感覚で物資を小出しにして、一つ一つの集落から少しずつ物をもらった方が良さそうと思ったのだが、現地の人が


「どうせどこの集落でもこの島から出せるものは変わりませんので、ここで全てを済ませると良いでしょう。他の集落に分配するのはこちらでやっておきます」


 と、言うのならイケちゃんはそれに素直に従う。

 基本的に現地のルールは大事にするタイプだからだ。


 異文化との交流の際は、なるべく相手のルールに合わせるべきだろう。


「で、物々交換でこの島独自の生態系の植物やらのサンプルを、何点か貰った俺たちであった。

 ぶっちゃけこっちの方が大幅に損をしてるような気もするのだが、得をする為に生きているわけでも無い俺はそんな事を気にするほど器は小さくは無いのだ」

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