8・サミング、ベトベトでくさい粘液まみれになる
「ところでさ。ドラゴンってどこに居るの? 地面の下? ドラゴンなんてまさか会えるとは思ってもみなかったもんだから、オラすっごくワクワクしてきたぞ!」
サミングはミイちゃんからの説明でドラゴンが尋常の生物ではないと聞いている。
正確に言うともとは異常な生物が世界パワーとかで超パワーアップしたのがドラゴンだとかなんだとか。
ドラゴンとなった生物はそれ以降姿形に意味はなくなるとは言え、基本は生物であった時の姿をとるという。
なればサミングが今から会い交渉するドラゴンもまた、なんらかの生物の形をしているはずなのだ。
そしてドラゴンへと至るほどの生物となればもともとのサイズがかなりの大きさの怪獣だったりする事を知ったがそんなものどこにも見当たらない。
いや、心当たりはあるのだ。
ミイちゃんは最初に地面に穴を開けてその穴にバナナを投下したことでドラゴンの存在を察知していた。
てことは地面の中に居るということか。
しかし、たしかこの島そのものがそうだとかそんな事も言ってたような? サミングはドラゴンを見るのは初めてだしそれなりに緊張と期待を持ちながらワクワクしている。
ひょっとしてこの島は大きなカバの背中の上に乗っかってるとかだったりして。そんな事を考えて。
「会話をするためにわざわざ面と向かいあう必要も無いと思いますが……ま、たしかに生物としての感覚を引きずっていらっしゃるサミング様なら直に相対した方が話し合いもしやすいでしょうな」
そんなサミングのワクワクした態度にやれやれだぜと言うめんどくさそうな雰囲気を隠しもせず、ミイちゃんは地面を蹴った。
何してるんだとサミングが訝しむ暇もなく、地面が裂けた。
「何ぃー!?」
その裂け目たるや、幅は100メートルくらいありそうで、向こう岸まででも30メートルはありそうなものだ。まぁ島の広さから考えればたいした裂け目ではないだろうが、人間大のスケールのサミングからすればその裂け目はたいそう大きく見える。
地面の下に、あるいは地面そのものに呼びかけるためなのかもしれんが、それでもやりすぎだ。サミングはそう思わずにはいられなかった。
ミイちゃんはそんなサミングのビビりっぷりを歯牙にもかけずに、裂け目の中に手を向け何もない宙を掴むかのように握り締めた。
視覚的にはそうとしか見えないが一応サミングにも何となく判る。ミイちゃんは『何か』を掴んでいるのだと。
「ふんっ」
で、ミイちゃんは大して力を込めたようにも見えない動きで手を上に振り上げる。
何かを掴んでいたのなら、裂け目の中から引っ張り出すようなパントマイムにも見えるだろう。
実際にはパントマイムではなかったが。
「な、なんじゃー、あれはー! き、気色わるぅー!?」
まるでミイちゃんの手の動きに引っ張られたように……いや、どうやったのかは不明だがミイちゃんは触れずしてアレを引っ張り上げたのだろう。
裂け目の底から出てきたのは暗い青紫色を主体とした腸のようなモノ……とでも言うか。所々どす黒い色がまたキモイ。
体表、と言っていいのやら不明だが、全体的にぶよぶよとした質感でサイズは直径15メートルくらいか? 長さは不明だ。底も見えない大地の裂け目から引き出されているから。
体の回りには節足動物のような節くれだった足のような物が無数に生えていてそれらがチキチキ動いていてなんともかんとも、見るだけでキモイ。その長さもバラバラだが長い物は5メートル以上はありそうだ。キモイ。
で、先端というべきか頭というべきか……そこはまるで哺乳類の口のような歯が生えている。キモイ。
唇はなくむき出しの歯と歯茎が露出しているがガチガチと震えているその隙間から見えるのは歯の下にもまた歯が生えていてそれらが単独でガチガチと咬合しているのも確認できた。キモイ。
下は無さそうだが何かを食べると蠕動運動で口に入れたものを奥へ奥へと押し込むのだろうか……キモイ。
「ふむ。なんとも醜悪な姿ですね。過去のドラゴンであれば総じてその姿の中に美しさがあったものですがこれほど醜悪なドラゴンがいようとは」
ぐぇぇぇえええ、ぐぇぇぇえええ。
泣き声? あるいは呻き声?
わからないがミイちゃんの引っ張り出したやつは、きもい姿にふさわしく出す声もまた醜くてキモイ。
体臭もまた鼻が曲がるほどだぜと言いたくなるレベルなのに、声と共に吐き出される空気がそれだけで世界を汚染しているんじゃないかと錯覚できるほどに嫌悪感を刺激する。
こんなのがドラゴン? きもちわるいよう。
サミングはそう思って鼻を摘まみながらミイちゃんに問うてみた。
これドラゴンちゃいまっせー、とでも言ってくれりゃ良かったのに。どうやらこれがこの島のドラゴンで正解らしい。
ミイちゃんが言うには正確にはミイちゃんの知るドラゴンともまた違った存在だというがこの存在が何に近いかといえばドラゴンと呼ぶのが一番近いらしい。
サミングはドラゴンに対してそんなに大きい憧れを持ってるつもりは無かったがそれでも大層ガッカリした物だ。
しかし、サミングはちゃんとこのドラゴンと話をして、ドスコイ国の移住者が住み込むことを許容してくれるのかどうかの確認をしなければならない。
もし駄目だといわれたらどうなるんだろうと思いはするがそこら辺は会話の駆け引きや交渉で何とかするしかあるまい。
よし、話をするかと気を取り直してもビッチビッチと身悶えるドラゴンを見てテンションが駄々下がりになるけれど。
「は、はぁい! 私サミング! ここから遠いラリアット王国で将来開拓者になる美少女なの! それはそうとこの島にドスコイ国って国の人たちが移り住む事になるんだけど良いかしら?」
サミングはドラゴンとの交渉では前もって何を言おうとか考えてた気もしたのだが、思いのほか気色悪い見た目に思考が吹っ飛んでしまいなんて言おうと思ってたのかをすっかり忘れてしまっていた。
だから自己紹介と用件だけを聞くというダメダメな発言になってしまった。
サミングの斜め後ろに控えるミイちゃんがグダグダだなぁ、とか思ってそうな気もしたが事実グダグダだし文句を言える気もしない。
言っちまった後の沈黙。
凄く気まずい空気というか、沈黙が痛いよう。心情的に。
ていうかそもそもこの気持ち悪いドラゴン(仮)は果たして知能あるの? そう思わずにはいられない。
見るからに耳も無さそうだけどそこら辺はサミングの言葉は知能ある相手なら言語体系が違おうが耳が無かろうが会話を可能としていることを自分の感覚で何とか知っているのだが、受け取る相手は明らかに知能無さそうよねー。
そんな風に思っていた。
舐めているといっても言い。気持ち悪いから物理的に舐めるのはいやだけど。
そんな風に思っていた時間はわずかのこと。
なんとドラゴン(仮)から返事が返ってきたのだ。
「やあやあ、これは丁寧にどうも。僕ドラゴン。この島に住みたいって言うのはこの島の端っこの方に居た人たちの友達ってことかしら」
なんと、一人称が僕……! なんてことは気にするところではない。
サミングが驚いたのはドラゴンが本当にドラゴンだったことと見た目の割りにフレンドリィだったりするところである。
ぜったい脳味噌も知性も品性も無い下劣な存在と思っていただけにビックリだ。
「ふむ、あのドラゴンはどうやら生まれたてのようですね」
「はてな?」
ドラゴンの声が意外と高い声だったからミイちゃんはそんな事を言ったのだろうか。
いやいや、そもそも空気の振動で出た音で会話してるわけじゃないんだし声の感じなんてわかんなくね? と、サミングは思う。
それ以前にミイちゃんの説明的にドラゴンとは
「元から超すげー生き物が長く生きてて世界パワーをゲットだぜ! して進化する存在」
の、はずなんだから生まれたてって事はあるまいて。
ドラゴンになったのが最近だとしても彼、あるいは彼女はドラゴンとなる前身の生物として結構長い時間を生きてんじゃね? そう思った。
だからその事を指摘してやったら応えはミイちゃんではなくドラゴンから返ってきた。
「僕がなんか自我? みたいなの。それを意識し始めたのはね。僕の上になんか生き物がやってきた時からなんだ」
ドラゴンの話を聞くに、どうやらドスコイ国の開拓者軍団がやってきた時にドラゴンはドラゴンとなったらしい。
どうも元からこの大地そのものを一つの生命と見立てた存在だったらしいのだがその頃は知能の欠片も無い存在だったそうだが外部から刺激。つまりドスコイ国の皆さんがやってきた事で自我を持ち、ついでになんか知らんが世界パワーを得てドラゴンとなったらしい。
というかどうやらドラゴンでもなんでもないらしいのだがサミングの認識に当てはめた時、一番近いのがドラゴンである事とミイちゃんがサミングにドラゴンっぽいヤツが云々と言っちゃった為にドラゴンという形が定着してしまったそうだ。
まぁ別にドラゴンでもなんでもいいのだけど。
「なるへそねー。それはそうとさー。この島に人々が住むのってオッケーなの? ダメなの?」
「別にいいよー。好きにすればー」
「軽っ」
思ったより簡単に交渉が済んでびっくりするサミングであった。
少しだけ、自分に交渉の才能が有るんじゃないかとうぬぼれる気持ちもあるが。
何はともあれドラゴンの見た目グロくてキモイが根は良い奴っぽいので良かった良かった。
ドスコイ国の人たちも安心して暮らせるねぇ、サミングはそう思ってそろそろ山を降りようとした。
とりあえずこの島はドラゴンで、だけどドラゴンは別に人に襲い掛からないし気にするようなものじゃないぜぇ、という事を教えてあげなくては、と思って。
「ま、人畜無害だけどすげぇ臭いから近づかない方が良いよねーってのも言っとかなきゃね」
ドラゴンが現れたときの地面の揺れのせいでこけたバイクを立たせ荷物を袋に入れて背負い、あとは降りるだけというところでサミングはそういえばと気付く。
「ドラゴン君はいつまで外に出てるのー? 臭いんだから早く地面の下にもぐって蓋されなよー」
「そうしたいんだけどねぇ……なんかねぇ、そんな気分じゃないんだよ」
「ふーん、あっそ。ばいびー」
ドラゴンが外に出っぱなしだからとっとと地面に沈めば良いのに。と思うサミングだが本人が地面にもぐるのいやだと言うのなら何も言うことはあるまいて。
だからエンジンをギュギィッとかけてバルンバルン! と軽快な音を立てバイクで山を駆け下りようとしたのだがその前に横に飛んだ。
バイクのパワーではなく地面につけた自分の足の脚力で。
ガオン!
そのサミングの動きに僅かに遅れてサミングが立っていた地面、及びその周りの空間がこそぎ落とされたように消失していた。
何が起こったかというと、ドラゴンが音速を遥かに超える速さで噛り付いたのだ。
ぐっちゃぐっちゃと土を咀嚼しごくごくと飲み込む姿が見える。
「……何の、つもりかしら?」
サミングは咄嗟に避けたものの、わけが判らないでいる。
なんで攻撃されたのやらサッパリだ。いや、攻撃なのだろうか? 相手はドラゴンだ。意思の疎通は出来たとはいえオーガの価値観を持つサミングとではやはり精神構造が違うのかもしれない。
あれは攻撃など、サミングを害する行為ではなくただじゃれ付いただけかもしれない。
あるいはドラゴンがこの島そのものということなので、かゆくなって自分で噛んでみた、という事もある。
もし悪気の無い行動であんなことをするのならドスコイ国の人にはそういうことしちゃめーよ? という事を教育する必要があるかも、と思うと面倒だなぁと感じる。
くさいのであまり長い時間いたくないのだ。
そんなサミングに対するドラゴンからの返事は
「ちぇっ、食べそびれちゃった」
まるで悪びれた風も無く。サミングに対する返事ですらないように思える。
いや、実際サミングに対する返事ではなく独り言のような物でしかなかったのであろう。
がつん、がつん、がつん。
何度も何度もサミングの居る地点を地面ごと抉り取るように噛みぬくドラゴンの姿はサミングを交渉の相手、対等な存在と捉えているようにはとうてい見えない。
相手の都合を一切考慮せず一方的に搾取する。動物が考え無しに樹に生ったバナナを食べるように。
そんな態度に見える。
「おねえさん、なんで避けるんだい」
「あんたは何のつもりよ」
ようやっと、サミングに対しての言葉は出たがあいも変わらず会話にならない言葉でありサミングはドラゴンを睨みつける。
肉体的にはちっとも疲労しないのだが精神的には何だか嫌な感じである。
ドラゴンは節くれだった足をキチキチ動かしながら、口からはぐぇぇぇえええぐぇぇぇえええと気持ちの悪い呻き声と共に応えた。
「僕ねぇ、さっき食べたのがもっとほしいんだ」
「ぬう」
さっき食べた、というのはバナナの皮の事であろう。
そういえばバナナの皮を地面に捨てた事でこの島に何かを感じた。次いでミイちゃんが地面に穴を開けバナナをシュートインすると揺れたように感じられたのだ。
つまりこやつ、バナナの皮を欲しておるな?
サミングはそう察した。ならば取るべき行動は決まっている。
「ミイちゃん! バナナを出して!」
バナナなんてエイエイオーに生えてる樹からいくらでも取れる。惜しくなんて無いのさ。
だけど
「無理です」
サミングの影から出てきてバイクの後部座席に直立しながらミイちゃんは即答した。
「なんでさ!」
「手持ちのバナナはサミング様が先ほど食べられたので最後ですから」
「ぬかったわ!」
エイエイオーのバナナの樹は不思議な樹。
いくらバナナを?いでも一定数以下にはならずに常にバナナが生っている。
枯れること朽ちることを知らないかのように遥かな過去から生え続けていたという。
そのバナナの樹から取られたバナナは不思議なバナナ。
取っ手からどんなに時間が経っても腐る事無くいつでもおいしい。
そんなバナナをミイちゃんは相当数持ってきていた。
サミングは今や飲まず食わず休まずでも全く持って困ることの無い存在である。
だからバナナなんて食べなくても良いんだけど美味しいんだから食べたいのだ。
そういう事もあって片道分くらいのバナナとしてミイちゃんにバナナを持たせていたのだ。
おいしかった。
そしてその片道分のバナナも見事、さっき食べ終わったところなのでもはや手持ちのバナナが無いのであった。
「ええい、だったら適当に森で拾ったキノコでも……」
「サミング様、無理です」
ミイちゃんはサミングの護衛として普段からサミングの陰に潜んでいる。
しかし影の中に入り込み外に出ないときも何もしていないわけではないのだ。
イケちゃんは調べようと思えば近くを広げ自分を中心としたかなりの距離の情報を取得し、その現在の情報を元に過去を分析し2~300年くらいならば葉っぱ一枚の揺れ方に至るまで正確に過去を調べることが出来る。
ミイちゃんはそこまで変態的ではないのだがそれでも目の前の存在を見ながらその内情を推し量り、過去や現在を予測することくらいは出来る。
その洞察力によって判ったことなのだが。
このドラゴン、この固体に限らず今の世のドラゴンというのは皆、世界……すなわち大地と一体化した存在らしいのだ。
この世界の形は宇宙の中の天体とかそんな世界ではなく、この大地が全ての世界である。過去にある事情から世界の形が変わり今の形となったのだ。
それはどうでもいい事として、この世界は雲海に隠れているが雲界の遥か下にこそ新の大地がある。
雲海はいずれ全て綺麗に消え去る事になるのだが今はまだその時ではなく、徐々に雲海が減りつつある状況。
その状況において、雲海の減少に伴いここ何千年かで本来の大地の中でも隆起した部分が雲界の上に顔を出すことが増えてきている。
そうやって雲海から露出した大地はまさに真の大地、本物の世界そのもの。
この世界を作った誰かは、この世界を生命体が住める世界として作るという意図を持っていたのであろう。
ゆえに雲界の上に露出した大地はあらゆる生物にとっての楽園ともいえる場所になっている。
これが新大陸は人が住むのにこの上なく適した大地と言われる所以である。
まぁそこら辺はどーでも良いとして。
このドラゴンは元々居た高等生物がパワーアップしてドラゴンとなったものではなく、世界の一部分として生まれて成長に伴いドラゴンとなったものらしいのだ。
目の前のこいつに限らず、実はこの世界の全部の新しい島にはこのようにドラゴンが住み着いているのだが基本的に自我を持つことも無く自然に時間と共に世界に溶けて染み込むように消えていくのが普通の末路らしい。
だが目の前のドラゴンはバナナの皮という刺激から自我を持ってしまった。
いや、それがただのバナナならいくつ数を揃えようと物の数にも入らないのだが。
サミングの持っていたバナナはエイエイオーの中にあるバナナの樹から取れたバナナ。
エイエイオーのバナナの樹。誰とは言わないが、大昔にある女が無限ドリル能力によりバナナの樹に単独無限輪廻スーパーバナナの樹になれ光線を当ててしまい変質してしまったのだ。
そんなバナナの樹はそれはそれは大層なご利益あり。その身に秘めたというか皮に至るまでに、全てがスーパーパワーアップしているような物なのだ。
もっとも普通の生物が食べた場合には処理できずに余剰のエネルギーは世界に吸収されるようになっているがドラゴンが食べた場合はその体の内にエネルギーを吸収してしまうことが出来る。
それにより、このドラゴンはスーパーパワーアップしてしまい、ついでに自我が非常に大きくなってしまったようなのだ。
もしこのドラゴンが食したのが尋常なこの世界の物質、あるいは異世界の高エネルギー結晶体なんかのスカスカな物質であればドラゴンの内面に何の変化をもたらすことも無く消化されていただけであったろう。
しかしエイエイオーのバナナの樹から取れるバナナのバナナの皮ともなれば凄まじい高エネルギー体。
そしてドラゴンはそのバナナの皮のエネルギーを受け取り自分の物にしてしまうことが出来る程の存在だったために何かが変化してしまった。
まぁこの場合は美味い物を食った、凄い物に触れた、などそういう刺激を受け、その結果それをもっと欲しがるような精神内での働きが起こったのであろう。
つまりドラゴンはもっとより多くのバナナの皮を、あるいはバナナそのものを欲するようになっているのであろう。
もちろん、普通の食べ物ではそんな充足感は得られない。
大体にしてこの島の物質は全てドラゴンの一部のような物なのだからこの島で取れた植物やらを上げたところで何の腹の足しにもなるまいよ。
ミイちゃんはそういう事をサミングに伝えてやったのだ。
話をしてる間もドラゴンはガツンガツンとサミングを食おうと襲い掛かってくる為に悠長な長話が出来る状態ではなかった。だがしかし
「ツー」
この一言で面倒な説明全部が可能なので大して時間はかからなかった。
「かーっ! 面倒だわー! かーっ! とか言ってる場合じゃないわよね。どうすりゃ良いってのよ」
サミングは思う。
バナナの皮を欲しがってるのならいくらでもやりたい。
だがしかし持ち合わせが無いのだ。
その事を言ってやれば落ち着くのでは?
なんてのはあまりにもノンビリとしたものの考え方。
『ツー』と言うだけで複雑な事情の説明が出来ちゃうくらいの言語能力を持っているのだ。
「バナナもう無いの」
その事実を言葉に載せて伝えて、伝わっているのだ。すでに。
なのにドラゴンはガツンガツンとサミングに食らいつく。
言葉が通じていないわけでも信じていないわけでも無いだろうにドラゴンの噛み付きは止まらない。
地面や木々が削られまくりではあるが避けるのに徹すればそんな難しいことではない。だがサミングはいい加減イライラしてきた。
「もうバナナも皮も無いって言ってるのに!」
なんで人の話聞かないかなぁ、そう思わざるを得ない。
「バナナの皮より濃い気配があるんだもん。それをちょうだい」
やや間延びした印象を与える声。ドラゴンは会話をしながらもガツガツ噛み付きを敢行してくる。
「ええい、濃い気配とか言われても分からないわ!」
「恐らく我々……その中でも一番濃い気配というのであればサミング様のことではないでしょうか」
ドラゴンの言葉に悪態付きながらもバイクに跨ったままピョンピョンと飛び跳ね避けるサミングにミイちゃんはサラッと言った。
「はぁあ~!? わ、私がピンチな訳!?」
「はい。あのバナナの皮は分からない者にはただのバナナの皮ですが分かる者にとっては異質な存在です。
が、我々はそれに輪をかけてスゲーものだと思ってくださって結構。
普通であればドラゴン程度が我々を捕食対象とは思えぬはずですがバナナの皮を食べたことで認識が広がったのでしょう。
いや、ひょっとしたら私がバナナの皮を投下したのが最大の過ちだったのかもしれませんね。まいったものです」
「なんでそんな余裕なの!」
結構なピンチに思える状況でもまったくもって余裕の態度のミイちゃんに突っ込みを入れたサミングはうっかり転倒してしまった。
もともとバイクに跨った状態でハンドルを握りながら地に着いた足でピョンピョン飛び跳ねるという無茶なアクションをしていたが限界が来てしまったのだ。
着地の際にズルッ、と足をタイヤを滑らしてしまいずっこけた。
それはもう見事に無様に。
そんなチャンスを見逃されるわけも無く、ドラゴンはこれまで以上に大口を開けてサミングに向かってきた。
こりゃ食われる、そう思ったがそうはならなかった。
ミイちゃんがサミングをポイッと投げ捨てた為に。
だがその為かどうか、ミイちゃんはドラゴンに食われてしまった。
サミングは、今の養父によって作り変えられた事で大きく変化したとは言えそれは基本的に肉体及び精神の根幹部分であり、普通に生活している時に現れる表面上の性格などは生前のものと殆ど変化が無い。
一応は徐々に自分が生物で無い事も認識し徐々に変わりつつあるがこれからもきっと表面に表れる性格には大きな変化は表れまい。
サミングの基本的な性格はバカではあるが余り争いを好まない温厚な性質である。
一応開拓者となるべく訓練しているので野生動物や未知のモンスターから身を守るための戦いや、空賊を殺すための戦いくらいは訓練をしているしいつでも出来るだろう。
しかし相手がドラゴン。と、いうか意思の疎通が出来る対等な相手とみなした場合に斬った張ったの立ち回りが出来るかといえば微妙である。
ラリアット王国が基本的に国内では治安が良かった為にそこで育ったサミングもあまり対等な相手との荒事に慣れていないというのも原因だが。
相手が下等動物たる空賊やモンスターであればそんな葛藤は無いのに、と思う。
さらに言ってしまえば仮にも相手はドラゴン。
お伽噺で聞いてたようなものとはまた違う存在とはいえドラゴンといえば超スゲー存在という先入観も有る。
サミングは自分の体も今一どのくらいか把握が出来ていないだけあり、ドラゴンと斬った張ったで戦えるのかどうかも判っていないのだ。
しかし。
「ウメーウメー」
グチャグチャと咀嚼するドラゴン。
体のサイズを考えれば一飲み出来そうなものだが、そうしないのはミイちゃんが見た目以上の質量ある存在だからか。
いや、単に味が美味くて何度も何度も咀嚼して味わっているだけか。
どちらでもいい。
「う、うまい、いくらでも食べれそうだ……力が漲る気がするよ」
言葉通りドラゴンはミイちゃんを捕食したことで力を増しているように感じる。
今までは目に見える部分だけにしか感じる物がなかったが今ではサミングの探知能力でさえドラゴンの生えている根元、島の下のほうにあるドラゴンの体の形が感じられるほどにドラゴンから溢れんばかりの力が感じられる。
さっきまでのドラゴンがどのくらい強いのか知らないが今のドラゴンは確実にさっきまでより強い。
さっきまでのドラゴンとすら戦って勝てる自信のなかったサミングだが、今はもう逃げる気はなくなっていた。
腰のヌンチャク袋からヌンチャクを取り出しヒュンヒュンと振り回す。
ドラゴンはもうミイちゃんを飲み込んだのか、次の獲物であるサミングに狙いを定めている。
しかしサミングはもはや逃げるつもりは無かった。
めちゃピンチなのは理解している。
それでも自分の護衛としての仕事をこなして食われたミイちゃんはいい仕事をしたというべきなのだろうが、サミングからしたら仲間を食われて黙っていられるわけが無いといったところである。
それに、そもそもドラゴンは元々自分たちを食おうとしている以上逃げれるとは思えなかった。
ワープでもすれば逃げれるのかもしれないが、どうもサミングはまだうまくワープを使いこなせないために自分の感覚では今居る島の上でしかワープが使えそうに無いと思っている。
それはそれで便利だがドラゴンの大きさはこの島の内部にギッチリ詰まっているほどで、恐らく島の上ならどこに居ようとドラゴンの射程距離であろう。
そう思えばワープでは逃げ切れない。
さらに、自分が下手に逃げ回ることでドスコイ国の人たちに迷惑がかかるんじゃないかと思えばドラゴンはここで何とかせねばなるまいと決心した。
ゆえにサミングはヌンチャクを構える。
ガオン!
先ほどまでよりも尚早くなったドラゴンの動き。
ミイちゃんを食った事による効果であろうか。元々音速を超えているのに衝撃波を殆ど発生させないという繊細さも持ち合わせた動きだったが今は更に速度、精度が上がっているように感じられた。
そんな口撃を
「おあたぁ!」
サミングはヌンチャクを振り回し跳ね返した。ドラゴンを。
「ぃよしっ!」
私は出来る子! と信じての行動だがもし力及ばずあっさりパックンチョされたらどないしよ……とかそんなネガティブな思考も少しは有ったが思ったより順調な出だしに喜色の声を上げざるを得ない。
あごをかち上げられたドラゴンはそれでも痛みを感じていないのだろう、バネのように体を跳ね戻してサミングに襲い掛かり、再びサミングはヌンチャクではたき返す。
何度でも。
「あちょ! あちょ! ほあたぁ!」
文章にすれば悠長な動きに見えるだろうがドラゴンの動きは余裕で音速を超えている。
そしてそれを跳ね返すサミングもまたそれ以上の速度である。
もし常識的な人間がこの場に居たのなら景色が霞み謎の音と奇声が聞こえるという不思議な空間を認識していたことであろう。
それ程に激しい攻防を繰り返すサミングとドラゴン。
サミングは色々な意味で経験不足でありドラゴンもまた、思考形態が幼い事からわかるように己の体の操縦が未熟なもので互角の戦いを繰り広げていた。
今までは。
しかしこの島はドラゴンの体の上であるという事を忘れてはいけない。
サミングも忘れては居ない。
だから真下からマッハ2桁の速度で立ち上る新しいドラゴンの口をも余裕を持って回避することが出来た。
「ほわっちゃあ!」
真下から突き出した巨大なワーム状のドラゴンの口をヒラリと回避しざまにヌンチャクでなぎ払うように殴る。
先端部が飛ぶように弾かれるが切断できたわけではなく基幹部と繋がったままであり、限界まで仰け反った後は反ったバネが反動で戻るような動きでドラゴンの新たな口がサミングに襲い掛かる。
元から有った首もその隙を埋めるような見事なコンビネーションでサミングに襲い掛かるがそれらも弾き飛ばされ再びサミングに襲い掛かる。
「ひゃおー!」
サミングは空中でも姿勢を崩さずにヌンチャクを振り払いドラゴンの口を弾き飛ばす。
そんな攻防が数秒続いていると、更に新たな口が地面から生えてきた。
1分も経つ頃には20を越えるワーム状のドラゴンの口がひっきりなしに小さな獲物、サミングに襲い掛かりサミングはそれら全てをヌンチャクで跳ね返していた。
その間、まるで地面に着地せずにだ。
しかしサミングは焦りを感じていた。
負ける気はしないが勝てる気もしない。
サミングは元々バトル野郎ではない。
女だから野郎じゃないとかそういう問題ではなく、元々戦いをする人ではないのだ。人じゃ無くてオーガとかそういう細かい突っ込みも無しの方向で。
開拓者として、あくまで身を守るための護身術としてヌンチャクの扱いを学んだのがサミングの武器の全てだ。
殴打ではドラゴンをどうにもできない。
空賊のようなただの下等生物であれば手加減無しで振るえばヌンチャクの触れた箇所が消滅するくらいのダメージなのだがドラゴンの体は硬く、そうそう思い通りには行かない。
それでも……
「ドラゴンになんか絶対に負けない!」
キッ! とドラゴンをきつく睨みつけヌンチャクを振るうサミング。
その闘志はまさに尽きることが無いかのように
「ドラゴンには勝てなかったよ……」
見えたのだが、そうでもなかったらしい。
いや、ドラゴンが普通に噛み付きアタックだけで攻撃を仕掛けてきていたのなら1000年でも不眠不休で戦えそうな勢いだったのだがドラゴンは恐ろしい奴。
最初は口からヌルヌルして汚らしい悪臭放つ粘液をドピュッ! と吐き出しまくってきたのだ。
サミングのヌンチャクはそれらを払う。
しかしそのせいでヌンチャクがヌルヌルして掴みにくくなってきた。
さらにドラゴンは液体じゃダメだと気体を吐き出した。
サミングの体は毒にもめっぽう強いので普通の生物じゃ1秒待たずに死滅する空気の中でも元気に奇声と共にヌンチャクを振り回せる。
しかし空気が徐々に粘性を帯びてきているのに気付いたのは空気の質が変わって5秒後、ヌンチャクを何百と振り回すだけの時間がかかってからのことであった。
最初はくもの糸がかかったかくらいの抵抗でしかなかったのに粘性を帯びた空気に絡め取られ徐々に体とヌンチャクが重くなってきたのだ。
体重計も無いのでサミングはヌンチャクや腕を振る際の抵抗がどのくらいかかっているのかも知りようも無い事だがすでに指一本を動かすだけで20メガトンくらいの抵抗を感じながら戦っていたりした。
重さだけならサミングはまだまだ元気一杯に動き回れたのだが、粘性を持った空気は知らぬまに謎プールとでも呼べる状態になっていてサミングは完全にヌルヌルする妙な液体の中に体が埋まってしまっていた。
厄介な事にサミングの手足の動きに対してこそ抵抗はあれど、サミングが泳いで脱出しようと腕や足をジタバタさせてもヌルリヌルリとした感触が返ってくるだけでポジションがまるで動きやしない。
そして、ドラゴンの口は数本が寄り集まり口の直径が100メートルくらいある超大型ワームがサミングを捉えた謎プールごとサミングを呑み込まんと襲い掛かってきているのだ。
もはや我が命運もここに尽きたか。次回に続く。
「なんて言ってられるか!」
白くにごったヌルヌルの液体の中では視覚なんて役に立たないがサミングは今まさに自分を食わんと襲い掛かるドラゴンの口が良く見えた。
大きさから言って身動きできないサミングが体を精一杯伸ばしたとしても口の端に指先すら届きはしない事はわかっている。
それでも悪あがきをやめるつもりは無かった。
ジタバタと手を動かしても、動かす際に重みを感じるのに、その重みを踏み台にして体を動かすことは出来ない。
どうも自分の体に触れる以外の空間を満たす液体は柔らかいようだ。
ならば吹き飛ばしてくれようかと無茶苦茶に腕や足やヌンチャクを振り回すのだがぬかに釘、暖簾に腕押しと言った感じでどうもこうもできない。
そんな詰んでるように見える状況でもサミングにはまだ手があるのだ。
「サミングワープ!」
ワープである。
サミングも一応ワープくらいは出来るようになっているのだ。
襲われ開拓者を助けた際の超長距離ワープはマグレであった。
だがそれでも短距離ワープくらいならいつの間にかにモノにしていたのだ。
サミングが今出来るワープ距離は短く、精々が2~3キロくらいだがこのくらいの小さい規模の戦いであれば十分である。
「どりゃー!」
ねちゃねちゃした粘液から自分の体と衣服とヌンチャクだけを選別したワープにより脱出、綺麗になった体でサミングは今まで戦っていた場所の500メートル真上の地点に飛び出した。
これが普通の生物の戦いであれば突然のワープで虚を付くこともできたであろう。
しかし相手はドラゴン。
サミングがワープをした次の瞬間にはサミングがどこに居たのかくらい察知している。
そしてワーム状の体は伸ばせばどこまでだって伸びるので500メートルくらい上に居るサミングをパックンチョするのに一秒もかかるわけが無い。
もっとも何の仕掛けもなくただまっすぐ噛み付くだけの攻撃では今のサミングは光速で攻撃しても簡単に回避してしまうであろう。
だからドラゴンとしてはこの一撃は決着にならないが決着の一撃をつけるまでの流れを作るため、その最初の牽制の一撃として体に力を溜め上空のサミングに光の速さで襲い掛かろうと企てた。
そこが勝負の明暗を分けることとなる。
サミングは自分がバトル野郎ではないと自覚している。だから不本意ながらも苦手な戦いという行為に対して一手たりとも手を抜く、後に備えるといった小器用な思考は持っていない。常にその瞬間に出来うる全力を出していた。
だから目の前の全ての状況に対しても常にその瞬間での最適解を本能で選べる。
それに対してドラゴンは先のことを考えての牽制、つまり手抜きでこそ無いが全力ですらない一手を打つ事で精神的に油断が出来ている。
このようなぬるい心構えでは何か想定外の出来事が起きた際に、十全に能力を発揮できれば回避できる程度の障害すら乗り越えることも出来ずに躓く事になる。
このように。
「サミングビーム!」
ビババ!
と、サミングの指から放たれたビームはサミングに襲い掛からんとして大口を開けていたドラゴンに直撃した。
ここに勝敗は決したのであった。
サミングはビームなんて撃てなかった。
さっきまでは。
それでも全力で頑張ろうとしていたので何とかマグレでビームを会得したのだ。
ビームにしては遅く感じられるようなビババ光線だったがドラゴンは避けることができなかった。
それは自分が攻撃の最中だったからとかではなく、中途半端に余裕を持った精神状態のせいで不意に起こる予測不能な事態に対応できなかったことが原因である。
サミングのビームは養父であるイケちゃんの放ったビームのような貫通光線ではなく何故か波状の曲線を描く不思議な光線であり、ドラゴンに直撃したというのに貫通することも無かったのだがサミングのビームに触れた瞬間からドラゴンはシオシオと萎れ、地面から露出していた無数のワーム状の口も縮れながら地面へと潜り消えた。
その光景を見てサミングはドラゴンが死んだ事を知った。
さっきまでは島の地下でグツグツと煮えたぎるほどのパワーとか威圧感を感じていたのだがそれらがスッカラカンになったのを感じる。
どうやらサミングビームは破壊光線の類ではなかったようだ。殺傷能力は凄く高そうだとは理解したが。
ドラゴンは倒した。しかし
「これでよかったのかしら」
そういう思いがある。
ミイちゃんが死んだ事も残念だがそれ以上に、ドラゴンはこの島そのものなのだから殺すのはまずいような気がしないでもなかったのだ。
もっともそうしなければ自分が死んでいたかもしれないのだから自分の命には代えられないが。
もしこの島になんか不備が出たらどうしよう。そんな不安がサミングにのしかかる。
「何も問題はありませんよ」
しかしその不安を否定する声が届く。
声のした方を振り向いてサミングは驚いた。
ボロボロの薄汚いコートにズボンに目深にかぶった帽子、汚らしい包帯で全身を包み肌を一切露出させず。その眼窩はぽっかりと穴の空いた空洞でその底には小さい緑色の炎がチロチロと燃えている。
そんな怪しい姿をしている不審者超人の心当たりなんてサミングには一つしかなかった。
「ミイちゃん!?」
「はい」
これにはサミングはおったまげた。
ミイちゃんはさっき死んだばかりなのに。
これは一体!?
「私は不死身ですから」
「なんじゃそら」
説明になってないミイちゃんの説明にサミングは突っ込みたくもなるが、まぁ生きてたのならめでたしめでたしであろうよと流すことにした。
「しかしミイちゃんや。本当にドラゴン殺しても大丈夫なの?」
サミングとしてはそっちが気になった。
ドラゴンキラーになったぜぇ、なんて無邪気に喜ぶ気にはなれない。
なんせドラゴンがこの島そのものだというのなら、ドラゴンの死によってこの島がどう変化するかわからないのだから。
「ま、そこら辺は大丈夫です」
ミイちゃんの説明によるとこの世界。今の世のドラゴンというのは雲海の下の大地の一部がドラゴンとなるそうだが、それらすべてが雲海の上に露出した島となった時から死にはじめ、何百年かで完全な死体となり、その死体を栄養源として大地が発展するということらしい。
だからむしろ、あのドラゴンが生きていたらそっちの方がこの島にとって、この島に移り住むドスコイ国の人たちにとって困った事になっていたそうなのだ。
その説明を聞いてサミングは少し気が軽くなるのを感じた。
なんせ基本的にアホでは有るが優しい子なのだ、サミングは。
ただ生きてるだけの生き物を殺すなんてあんまりしたくは無い、それが会話の可能な相手ともなれば余計にだ。
しかしドラゴンが害獣であるというのなら殺しても良いよね、そんな風に思えてとても気が楽になる。
「そっか……いやー、色々有ったけど私は何だかんだでいいことしたのね! えらい! さすが私!」
バイクは失った物の良い事したんだから帳消しよね、そんな思いを胸にサミングは下山せんと一歩を大きく踏み出した。
すると、山がへこんだ。
比ゆ表現ではなくボコッと物理的にへっこんだのだ。
「どわわぁー!?」
「あぁ、サミング様がドラゴンを殺した際に死体を萎れさせた為に島の中身が物理的にスカスカになっていたので崩れたようですね」
ミイちゃんの冷静な分析を聞きながらサミングは地面の底に落っこちたのであった。