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10・遥かなる旅路、さらば友よ

「うわっ、キモ」

「これが例の……なのか?」

「詳しくは聞いてませんが合計で2~3人分は生きている、そうです」


 イケちゃんがミツキとズコバコやっている頃、それは町の人々の目に触れないようにとある程度人払いをして周囲に人がよらないようにされた区画の、倉庫の中に置かれていた。


 最初は皆殺しにする予定であったが途中で気が変わった。

 と、言うか今のサミングはイケちゃんのオーラで動いているために意識していないと感情が漏れて伝わってしまうようなのだが、その漏れ出たサミングの感情でミツキの目が覚めたことや、ミツキが復活したサミングに対しての嫌悪感も無く今まで通りのミツキでありそうだと思えたので早く会うためにさっさと切り上げて帰るつもりになったのだ。

 しかしサミングに大見得切ったしまさか出てすぐ戻るというのもカッコ悪いし……なんて思いながら野党軍団をボコボコにして、もう面倒だしこの国の人に任せちまえば良いやと思うに至ったのだ。


 んで、イケちゃんがこの国の法に任せるために町に持って帰ってきた野党軍団の姿は人型をしていなかった。

 何人分なのかは不明だがかなりの大きさの肉の塊で、表面に口や目や耳が複数あり、その口々からは意味のある言葉としてではなく苦悶を上げるうめき声のようなものがもれ出ていた。

 一体何をやったのかは不明だが野党軍団を一まとめの生き物にして延命しながらグチャグチャに殴り潰していたとの事である。

 かなり大雑把にやったようで肉の塊とは言うが元々野党たちが見につけていたであろう服ややらをも巻き込んで生物の体を強引に掻き混ぜたらしく、異物に対する拒絶反応として常に苦しみに見舞われているらしい。

 さらにここまで持ってくるのもバイクで引きずりながらだったために、地面との設置面はグチャグチャに擦り潰れていてイケちゃんが掴んでいた部位も握りつぶされている。


 2~3人分の命しか残っていないとは言うがそれは総合の体力との事で、この肉塊の材料として使われた連中の脳、意識は未だに全部が生きていて今も痛みと苦しみを感じているらしい。

 栄養補給さえしてやれば体力も取り戻すし、掻き混ぜる時に入り込んだ衣服などの異物に対する拒否反応も痛いだけでこの肉塊は苦しむその状態こそが自然の状態らしく、栄養補給して延命すればあと2~30年くらいは苦しみながら生きることも出来るらしい。

 イケちゃんが言うには喉や舌の形状が変わってしまい意味のある言葉を発することが出来ないだけで全員の脳は今も個別に理性が壊れる事も無く苦しみ続けているとの事であった。


 もとよりこやつ等に慈悲をかける者は居ないがそこまで長い時間苦しめたいわけでもなく、とっとと処分するというのが当然であると決定したが、剣で刺しても火で焼いても中々死なないので思うように処分できないでいるのが現状である。

 イケちゃんは20人前後の野党を一個の塊にしてボコボコにして苛めたので生命力は残り2~3人分と言ったのに2~3人が死ぬくらいの痛みを与えても元気に呻いている始末。


 別に同情はしないけど見ててキモイので早く処分したいが殺しても死なないという悪循環、とりあえずの処分として雲海に落として始末すりゃ言いじゃんという結論が出るのに1週間かかったという。




「まぁ大体そんな感じだそうだ。お前を殺した連中の末路はな」


 ふーん、サミングは大して興味なさげにイケちゃんからの報告を聞いていた。

 自分を殺した連中に思うところが無いわけではない、むしろ自分の手でジワジワとなぶり殺しにしてくれるわという気持ちも無いわけではなかったが今のサミングはぶっちゃけ精神的に疲れててそんなんどうでも良いというのが本音である。


 イケちゃんが母親とアレな行為を致してから一月ほど経ったが色々あった。

 あの日はかなり長い時間やってたらしくサミングが家に帰れる時間は相当遅れたものの、その事は母親をからかう材料とする事で溜飲は降りた。

 で、翌日にサミングは開拓者となるための訓練やら勉強をするためにホーガン町に行かなきゃダメじゃん、ということを思い出しイケちゃんにバイクで送ってもらったのだがそれから大変だった。

 何しろサミングは死んだのに生き返ったのだ。

 正確に言うと違うのだが。


 そして一体何がどうなったのかと検査検査の毎日で。

 イケちゃんは記憶喪失を言い訳に細かい事は知らんと言ってピューっと逃げてしまいサミング一人が質問攻めを受けるハメになった。

 一応イケちゃんの子分だというモヤっぽい変なのが見た目の割りに知識人で色々と説明してくれたのだが。

 その説明によると今のサミングはイケちゃんがサミングの足首の細胞を元にその本体、及びそれまでの人生の経緯などを読み取り自分の体を材料に新しく作った存在であるらしい。

 つまり今のサミングは種族・オーガではなくサミングの形をしてサミングの記憶を持ちサミングの思考形態を持つイケちゃんの分身体、みたいなものだとか。

 固体としてイケちゃんからは独立した存在ではあるが。

 じゃあ寿命とかオーガと違ってくるのん? と聞いたところサミングは今の状態で固定されちゃったとかで経験を積むことは出来ても肉体的に成長や劣化は起こらないと聞いて絶望した。

 母親のミツキと違ってサミングはぺったん子なのだ。背も同年代と比べて低い。

 自分ではあと2~3年もすればボンキュボンのダイナマイトボディになると信じて疑ってなかったので永遠のロリ体型となった事にすごく落ち込んだものだ。

 周りの人たちはオーガのままでも多少背が伸びることはあっても胸とかは絶望的だったんだし気にするなよと慰めたつもりの言葉をかけたがサミングからすれば慰めになっていない。


 そんな検査を受ける毎日で訓練や勉強が滞りまくりで、久しぶりに実家に帰れば台所でパコパコやってる母親+イケちゃんとご対面で精神的に凄く疲れてしまった。


 で、サミングは検査検査の毎日でサミングを殺した連中の末路を知らないだろうと思ったイケちゃんが説明してくれたのだがその前にてめーパンツくらい穿けや、という気分になってしまう。

 母親は息絶え絶えでソファでへたり込んでいるのだけど、まったくもって心配する気になれないサミングであった。

 現代人に判りやすく言うとリア充爆発しろ、という感情が近いかもしれない。




「俺達はあと2~3ヶ月でこの国を発つつもりだがお前はどうする?」

「へ?」


 で、サミングが勝手知ったる自分の家という事もありムシャムシャと冷蔵庫から肉を生で摘まんでいたらイケちゃんからの突然の発言。


 いや、彼の目的は知らないが元より旅人、そら旅人たるもの旅に出ないといかんわなぁと思うサミングはそれほど驚きはしないが気になることもある。


「ふーん。それじゃお母さんはどうするの?」


 ちなみにサミングはイケちゃんに対しタメ口である。

 そりゃ今も素っ裸で長い足を組みながら椅子に座り仰け反ってる男に対し敬語なんて使う気になれないよね。

 と、言うわけではなく。

 イケちゃんが真面目に母親と付き合うというのであればこの男はもはや養父である。

 親に敬語を使うのも変だろうというサミングなりの気遣いみたいなもんである。

 けしてスッポンポンで偉ぶってるバカ相手に敬語を使うのに屈辱を感じているわけではないのだ。たぶん。


「だからこの国を発つといっておろうが」

「いや、だからお母さんをどうするつもりって。お母さんオーガだからあと6~7年しか生きれないのよ? 旅に出て1~2年で帰って来たとしてもまた1年足らずで旅に出て、とかなるとお母さんと過ごす時間が少なくなっちゃうじゃない」

「お前は何を言っとるんだ」

「え?」


 サミングは母親を頭良くないと思っちゃいても嫌いなわけではない。

 大好きだ。

 だから母親には幸せで居て欲しい人並みに思っている。

 んで、付き合うなら一緒にいる時間を増やしたれやと子供らしく思っていたのだがいまいち会話がかみ合っていない気がする。


 そんな折に体力も回復したのか呼吸の整った母親が説明をしてくれる事になった。

 ちゃんと説明できるのかと心配したがその心配は的中、かなり要領の悪い説明でえらく時間がかかったが理解できた。


 イケちゃんはハーレムを作るために色々女に手を出したいのだがセックスがすげえ激しくてミツキもあたい壊れちゃうの~みたいな状況になってることは結構有名に。

 せっかくイケメンでもそれはきついわーと皆が二の足を踏んだり。

 表面上の付き合いなら良いけど深い付き合いはきつそうだわ、と思われるイケちゃんはハーレムを作れない。

 こうなりゃ誰もイケちゃんを知らない違う場所に引っ越そうぜ、という事に。

 だからミツキも一緒にイケちゃんと旅に出るのだ。


 とか何とか。



「とりあえず言わせて貰うけど……何よハーレムって! アホ! バカ! 女を何だと思ってんの!」

「女だろ」

「そうじゃねぇーッッッ! つってんのよ! お母さんと付き合うとか言って他の女にも手を出すつもりとかアホなの? 死ぬの? てか死ね! この人類の敵!」

「えー」


 サミングは激怒した。

 そりゃそうだ。

 大好きな母親の彼氏、ヤツから見れば母親は大勢の中の一人にしかならないような扱いにしようというのだ。

 サミングが激怒するのも止むなしであろう。

 一応ラリアット王国の平民は基本的に一夫一妻制で王族とかある程度以上の所得のある人ならそりゃ複数の嫁ももてるらしいが大金持ちでも基本は嫁は一人にするものだ。

 それをこの男はッ!


 そうやってサミングがブチ切れしているのをやんわりと押し留めたのはミツキであった。


「サミィ、落ち着きなさい」

「落ち着いてられないわよ! 大体お母さんもいまだ裸エプロンだし! 年考えろ! てかいい加減二人とも服着ろよ!」


 とりあえず二人が服を着るために少し間が空いたが、その間もサミングが落ち着く時間を作るには足りていないのだろう。

 未だにかんかんである。

 切れる十代だ。



 とは言えいつまでもそうしてる訳にもいくまいとミツキは再び話を切り出す。


「あのね、ハーレムってのはそう悪いことじゃないのよ」

「なんで」

「だってイケちゃんマジ激しくて毎日やってたら私壊れちゃうもの。慣れそうにも無いしローテーション組んで何日かに一晩くらいにしてくれなきゃちょっときついわ」

「お母さんから言い出したの!?」


 その発言にはサミングもドびっくりであった。

 しかし、自分に経験が無いのでなんとも判らんが何日かに一回じゃないとつらいと言うのならそれで我慢してもらえば良いじゃんというのがサミングの意見である。

 ごもっともな発言だ。


「そんな飛び飛びだと私が寂しいじゃない」

「おいこら」

「例えばの話になるけどね。一対一だとつらくても二対一、三対一なら? って思わない? 私が言いたいのはそういうこと。複数人でイケちゃんの相手をするなら毎日でもイケるかも知れないじゃないの」


 サミングはなんとも言えない表情でミツキを見た。

 年甲斐も無くエヘヘとかわいらしく笑っちゃいるがオバハンのクセにと思わざるを得ない。

 というか、どうやらイケちゃんは我慢しようと思えばそれほどセッ……合体行為はしなくても大丈夫らしいが母親の我侭に付き合って渋々ハーレムを作るというのであろうか?


 ちょっと気になったので聞いてみたら


「いや、ハーレムに興味はあるぞ? とは言え俺はミツキ一人でも満たされているんだがな」


 との事である。

 ちなみに母親はその発言にキャーとか言って照れながらイケちゃんの肩をバンバン叩いている。

 超うざい。


 サミングは頭をガリガリ掻きながらアーとかウーとか唸るが思考はちっとも定まりゃしない。


「あー、えーっと。まぁそれは良いとして! 良くないけど。じゃあ二人で旅に出ちゃうと思って良いの? この家どうするの?」

「まさしくその話をしたかったんだよ。えらい遠回りしたがな」


 イケちゃんはシレッと言うが、ぶっちゃけ母親が性生活を円満にするために彼氏にハーレム作って欲しいと持ちかけ旅に出るなんて事情を想像できるやつは居ない。

 居たらエスパーだ。


 同時にサミングは思った。

 もし二人が旅に出るならきっとそれは今生の別れとなるであろうよ。

 何しろサミングもまた開拓者として旅に出るのだから、この広い世界でオーガの短い寿命ではもはや会う事もあるまいと……そこまで思ってはてな、と思った。


「聞いてなかったけどさ……お母さんの色が私みたい……てかお義父さんみたい、になってるけど私みたいになんか変わったって事なの?」

「うむ、説明しよう」


 で、イケちゃんの説明によると。

 ミツキの体はオーガ女がイケちゃんのオーラで汚染された状態だという。

 サミングは構成材質の全てがイケちゃんのオーラなのに対して、ミツキのほうはあくまでミツキに上書きした色だということでそれほど劇的な変化は無いらしい。

 せいぜいが不老不死になってイケちゃんと通じ合って、意識すればいつでもテレパシーみたいなのが通るようになり、話す言語もイケちゃんのものと同じ系統になったりした程度のものだそうだ。

 それも何百年かに一度はイケちゃんのオーラに触れないと徐々に抜け落ちて普通のオーガに戻ることもあるらしい。

 今の状態に固定化しようとすればそれこそあと1~2ヶ月くらいは一緒に行動しないとダメだとか何とか。


「え、えらい変化に思うんだけどそれをその程度って言われちゃうと私はどんだけ変わっちゃったのかちょっと怖くなってきたわ」


 そうは言うが。

 今生の別れかと思いきやそうでもないと知って少しだけ心が軽くなるのを感じるサミングであった。


 広い世界、長く生きただけでならお互いフラフラしていて再びめぐり合うなんて都合の良い奇跡はそうは起こらないにしても可能性は残るのだから。

 そう思うとお互い旅に出ていつか旅先でめぐり合えたら素敵だろうなとメルヘンチックな思考でサミングがトリップしているとイケちゃんが


「で、問題なのは俺らよりお前のことよ。その体で俺らと離れて大丈夫なのかと」


 と言ってきた。

 これにはサミングも


「え? 私お義父さんと離れるとなんか危ないの?」


 などとかなりビビった。

 イケちゃんが言うにはすぐ傍に指導者が居ないと力を持て余すんじゃないかとの事である。


 ミツキに対して送られたオーラはイケちゃんからすれば意識せずに漏れ出した自然のものでしかない。

 量も少なくコントロールも簡単でありミツキは今、多少変わりつつある自分の体の変化を理解できているのだそうだ。

 ちなみに体力アップしてなおイケちゃんとのアレは壊れちゃいそう、との事であるがそれはどーでも良い。

 気持ち良いとか知りたくないから言わんでいい。


 で、サミングだが。

 彼女は自前の体が片方の足首分しかなく、体の殆どをイケちゃんのオーラで構成されてしまったのだがイケちゃんはそういう作業が苦手らしい。

 サミングをサミングたらしめる要素……過去の記憶、本人の自我、意思、その他を再現するのに気を使いまくったせいでサミングは新しい体を理解し切れていないらしいのだ。

 それにはそこそこの長い時間を必要とするのではないかというのがイケちゃんの見立てである。

 しかもそこそこの長い時間というのはイケちゃんの物差しでの事である。

 人間とは生きる時間のスケールが違うので1000年単位はかかるんじゃないかと思っているそうだ。


「そんなにかかっちゃうんだ……でも今も普通に生活できてるし大丈夫なんじゃないのかなぁ?」

「それも含めて未知数なのだ。なにしろお前は俺の全オーラの99%以上を持っているからな。お前の些細なミスだけで国一つが余裕で滅びかねんのだよ」

「え?」


 これまたビックリな情報である。

 よもや自分のために99%以上とかを消費したというのも驚きだが、自分がそんな高エネルギー体だったとか想像の埒外である。

 嘘だと言ってよイケちゃん、てな気分だがマジらしいのだ。


「そんな体になっちゃって……私どうすれば」


 これにはサミングも堪えた。

 死んだと思ったけど生き返って、生き返らせてくれた人は母とイイカンジになって何だかんだでハッピーじゃんと思ってたらとんだ落とし穴である。

 その事を怨むのはお門違いなのだが、へこむ。


 サミングは子供の頃は何も分かってないから母親の職業継ぎたいなんて何も知らずに思っていたが母親は娘を風俗で働かせるのをダメだとは言わなかったが、自分でやりたい事を見つけてそのためにやれる事をやりなさいと言っていた。

 それで子供なりに色々勉強してなにか面白いことは無いかと思っていた時に、開拓者の募集の張り紙を見て興味を持った。


 未踏の地への探検、時刻とは違う文化との交流、それらは子供心に世界の広がりを感じさせ、自分もそうありたいと思わせるのに十分な原動力となってくれた。

 そして努力して頑張ってもうすぐそれに手が届きそうという時になって遠のいてしまった。


 サミングがショックでうなだれていたら


「もしお前がこの国の開拓者という立場に拘っているのでなければ、俺達と一緒に来るか?」


 と、言われた。


「私は別に拘りがあったわけじゃないけど……だからって簡単に切り捨てられるほどこの国に対してドライにはなれないよ」

「なら俺と一緒にいるのは練習として、力に慣れたら晴れて自分でこの国所属の開拓者になるのはどうだ」

「そんな事できるのかしら」

「お前が望めば話をつけてやる。俺は意外と何でも出来る男だからな」


 自分で意外とか言うなよ。

 サミングはそう思ったが、イケちゃんの言葉通りにするのが一番ベターかなーと冷静な部分で思考していた。

 そうする事になるのだろうな、何となくそう思えた。


「ねえイケちゃん。良くわかんないけど難しい話も終わったのなら……」


 サミングが自分の思い描いた進路とはかなり大きく外れながらも、自分の夢からは外れない新たな道を歩もうと思いを新たにしていると、それを察してか察してないのか不明だがミツキがイケちゃんにしなだれかかって甘えているのが見えて、なんだかなーという思いにとらわれたりもした。


 きつくて壊れるとか言ってたくせに自分から求めまくりにしか見えないようッ!

 そんなツッコミを入れてやりたいと思ったサミングであった。




 それから数ヶ月の時間は飛ぶように流れた。

 イケちゃんを少しでも長く留めてイケちゃんの技術を得たいと思ってたラリアット王国だが癇癪一つで島を沈ませかねないパワーをってそうなイケちゃんを止められるわけも無く。

 しかしサミングがラリアット王国の開拓者で居たいという事からイケちゃん一行もラリアット王国の開拓者という扱いに、と話が進んでくれたのでイケちゃんが他の国に渡っても技術の放出はしないと約束を取り付けられて国としても最低限の繋がりを保ててホッとしていたりもする。

 そこら辺はサミングに感謝していて、サミングがこの先自分の力に慣れてラリアット王国の開拓者になるというのならかなり融通してくれることも約束されてサミングにとっても良い事だらけといえよう。


 ちなみにミツキの店はミツキの風俗嬢時代の後輩に譲ってあげたそうだ。

 旅に出るのに数ヶ月かかるというのはその引継ぎを摩擦無く行うための期間だったわけだ。






 そしていよいよ旅立ちの日。

 イケちゃんの船、エイエイオーにラリアット王国でもらった沢山の荷物が積み込まれている。

 イケちゃん個人の技術放出は困るがイケちゃんの技術に刺激されラリアット王国で開発された技術については積極的に放出して欲しいという依頼を受けているため、そういった品々を沢山積んでいるのだ。

 イケちゃんがラリアット王国の技術を売れば外国はラリアット王国の本場の技術を欲しがり交易が盛んになるだろうと見越しての事である。


 外国に渡すのがやばい技術、見せて欲しくないものなどはちゃんとイケちゃんの部下の人たちが知ってくれているので程よくやってくれるだろう。




 そんなエイエイオーの下に三人の男が集まっている。

 イケちゃん、ミイちゃん、そしてイケちゃん係のピエールだ。

 三人はガシッと肩を組み別れの言葉を交わす。


「それじゃあな! しみったれた兄ちゃん! そしてそのケチな従者よ、俺のこと忘れるなよ」

「また会おうッ! 俺の事が嫌いじゃなけりゃあな! ……マヌケ面ァ!」

「忘れたくてもそんなキャラクターしてねえぜ……てめーはよ。元気でな」


 この国に滞在してた数ヶ月間、描写されてないだけでピエールとも結構仲良くやっていたので別れを惜しむ気持ちは大きい。

 それでもその感情は旅立ちへの歩みを止める事は無い。

 イケちゃんとミイちゃんは旅に、ピエールはラリアット王国に残る。


 いずれまた会うこともあるだろう、友との別れを告げた後、3人は振り返ることも無くそれぞれの道を歩む。



 そしてイケちゃんは言った。


「第三話完!」

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