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第二十八話 ある漢の覚悟

ゲイル達が強化合宿に挑む前、皇魔はとある人物に会うために、中国へと渡っていた。

中国四川省の山奥。ここを、一人の男が訪れていた。ヘブンズエデンの訓練生、鬼宝院皇魔である。彼は今、天にも届くのではないかと思えるほどの、長い石段を登っていた。この石段の頂上に、父、剛造の友人が住まう家があるという。

「…」

ただ黙々と登り続ける皇魔。そして、彼が石段の頂上に到着した瞬間。


何かが飛んできた。


「シャアッ!!」

手刀にてそれを叩き折る皇魔。皇魔は無事だったが、皇魔の両隣に並んでいた木が真っ二つになって倒れた。


「よくぞ防がれた。やはりできるようですな」


皇魔の視線の先には小さな家があり、その家の前に一人の男が佇んでいる。彼の名は、ワンレン・キョウ。剛造の友人で、先ほど皇魔に向けて謎の攻撃を行った男だ。

「無礼な挨拶をお許し願いたい。」

ワンレンはいきなり攻撃したことを詫びた。

「構いません。我々は初対面ですし、ろくに知りもしない相手の修行に付き合うというのも気が引けるでしょう。」

皇魔は、なぜワンレンが自分に攻撃したのか知っている。当然、ワンレン自身が皇魔の力を試したかったのもあるだろう。が、理由はもう一つある。

「確かにそうですが、剛造に頼まれたもので。」

やはりだ。皇魔のことについては、もう根回しを済ませてあると言っていた。しかし、その根回しが問題なのだ。皇魔は今までにも、剛造から紹介を受けて、剛造の友人のもとへ修行に行ったことがある。そして剛造が紹介した友人達は、皇魔に必ず、出会い頭の一撃をぶつけるように言われているのだ。それも即死級の一撃を。先ほどのワンレンの攻撃も、対応せずにそのまま受けていたら、皇魔は死んでいた。全ては皇魔がその友人のもとで修行できるか、修行する資格があるかどうかを確かめるためである。

「やはり…」

「腕前はなかなか。さ、上がって下さい。長旅でお疲れでしょうから」

「お気遣い感謝します。」

ワンレンは皇魔を自宅に上げ、茶を振る舞った。皇魔は指定された場所に荷物を置き、出された茶をすする。

「…剛造から一通りお話は聞いています。あなたは闘界覇神拳の秘奥義、覇氣鎧装を修得したいのだとか。」

覇氣鎧装はきがいそう。覇気を纏って鎧とし、己の力を引き上げる。それが闘界覇神拳の秘奥義だ。闇影武装とよく似た技だが、それは鬼宝院家と霊宮寺家が祖を同じとするからである。

「父はあなたとの戦いを経て、覇氣鎧装を修得したと聞きます。」

ワンレンは生きながら拳聖王と呼ばれ、一度だけだが剛造を死の淵にまで追い詰めたのだ。剛造はその後行ったワンレンとの修行の中で、覇氣鎧装を修得した。自分を死ぬ寸前まで追い詰めるほどの実力を持ち、さらに覇氣鎧装を修得させたワンレン。だからこそ、剛造は皇魔をワンレンのもとに送り付けたのだ。

「同じことができるかはわかりませんが、可能性はあります。こちらも努力しましょう」

ワンレンは快く、皇魔の覇氣鎧装修得に尽力すると言った。

「ですがその前に一つ、確かめさせてもらいたいことがあります。それには私と、手加減なしの本気で戦ってもらう必要がありますが、よろしいですか?」

「…」

皇魔はすぐには答えず、やはりか…と思って考える。覇氣鎧装は、闇影武装と同じルーツの技。闇影武装の修得に必要なものは、己自身の使命の自覚だったが、覇氣鎧装の修得に必要なものは、揺るぎない覚悟と信念。それはワンレンも知っている。ワンレンは戦うことで、皇魔にその覚悟と信念があるかを確かめようとしているのだ。そして、ワンレンは皇魔より遥かに強い剛造すら殺しかけた男。それが手加減なしで来れば、殺されるかもしれない。

(…馬鹿が。何を迷っている?)

皇魔はそれを気の迷いと切り捨て、ワンレンに言った。

「はい。よろしくお願いします」

「…わかりました。準備ができたら、裏庭に来て下さい。お待ちしています」

一足先に裏庭に行くワンレン。皇魔は言われた通りに準備を、軽い精神統一をしてから、裏庭に行った。













「ほう…」

皇魔は感嘆した。玄関から見た時は気付かなかったが、裏庭がかなり広大だったからだ。

「弟子が少しばかりいまして、その弟子達の修行場としての役目も兼ねています。」

ワンレンの家は結構大きい。道場もある。一人、いや、会ってはいないが妻がいるらしいので二人か。たった二人で使うには広すぎるため、弟子がいることは予想できた。もっとも皇魔の家のように、弟子が全員逃げ出して後は使用人だけ、ということも考えられたが。まぁワンレンは剛造と違って人格者らしいので、剛造ほど無茶な修行はさせないのだろう。

「さて、もう気付いておられるとは思いますが…私が確かめたいのは、あなたに覇氣鎧装を修得できるだけの意思と覚悟が足りているかどうかです。足りているならあなたは覇氣鎧装を修得できますが、足りていなければこの場で死ぬこととなるでしょう。あなたの意思と覚悟の強さを、殺すつもりで確認するよう剛造から言われていますから。」

「…心得ています。」

「よろしい。では、早速始めましょう。」

言うが早いか、ワンレンは腰を深く落とし、右手を後ろに、左手を前に向けるという独特な構えを取った。

「先ほども言ったように手加減は不要。力と奥義の全てを尽くさねば、この私は倒せん!!」

口調も変わる。それだけワンレンが本気だということだ。

「元より承知!!死んでも恨むな!!」

皇魔も敬語を捨てて、本気になる。

「覇道烈破!!」

いきなり覇気の波動を放つ皇魔。相手が普通の兵士や弱いボーグソルジャーなどなら、これで終わっている。だが、相手は仮にも拳聖王と呼ばれる男。この程度で終わるはずがない。案の定、ワンレンは構えを静から動へと切り替えた。右手を手刀とし、大きく振ったのだ。

飛燕墜爪ひえんついそう!!」

手刀から気の刃が放たれる。刃は覇気の波動を切り裂き、皇魔に襲い掛かった。

「!!」

紙一重で身体をずらしてかわす皇魔。この刃こそ、ワンレンが出会い頭に放ってきた、あの攻撃の正体だ。


ワンレンは、獣哮武神拳じゅうこうぶしんけんという暗殺拳の使い手である。この技は皇魔の闘界覇神拳やレスティーの霊宮寺忍法と同じく、気を使って戦う技だ。ワンレンに覇気を練ることはできないが、代わりに気を鋭く研ぎ澄ますことができる。この気に覇気のようなパワーはないが、覇気以上の切れ味があり、鋼鉄や大地はおろか、覇気すらも切り裂けるのだ。闘界覇神拳が万物を打ち砕く技なら、獣哮武神拳は相対する敵全てを切り刻み、貫く技。

「ちっ…」

皇魔はその本質を見抜いて舌打ちした。獣哮武神拳によって繰り出される攻撃は、全て斬撃。しかも、そこらの刃物よりずっと鋭利だ。いかに皇魔とはいえ、うかつに挑めば無傷では済まない。かといって覇気を使った攻撃も、切り裂かれ、無効化されてしまうため、効かない。遠距離攻撃も使えないのだ。

(ならば…これしかあるまい…!!)

皇魔は駆け出す。狙いは、ワンレンに獣哮武神拳を使わせないこと。それには一気に距離を詰め、投げ技を仕掛ける。ただ殴る蹴る覇気を撃つだけが、闘界覇神拳ではないのだ。投げ技もある。

「ふんっ!!」

再び放たれる飛燕墜爪。敵の攻め手をこれだけ制限する獣哮武神拳。そしてそれを操るワンレンという男。デザイアの幹部、果ては副首領にさえ匹敵するこの強大な存在に恐ろしさを感じつつかわした皇魔は、

(よし、取った!!)

勝利を確信しつつ掴み掛かる。ワンレンは大振りの攻撃を使った。もう片方の手が残っているが、皇魔が掴む方が早い。と思った瞬間、


ワンレンが消えた。


いや、驚くべき速度で跳躍して、皇魔に捕まる前に逃げたのだ。


「何!?」

すぐ対応しようとする皇魔だが、ワンレンの方が速かった。

「猛輪脚!!」

空中で前転して踵落としを繰り出したのだ。斬撃の踵落としを。

「がぁっ!!」

ミサイルすら受け付けない背中が切り裂かれ、血飛沫が吹き出し、皇魔は倒れる。

「投げ技で来たか。手の内がわかっている人間なら、確かにまずそうする。」

ワンレンは着地すると、振り向かずに背を向けたまま言った。

「だが相手の手の内が割れているのはこちらも同じだ。知っていてそれをさせると思うか?」

皇魔が投げ技で自分を仕留めに来ることを、ワンレンはわかっていたのだ。闘界覇神拳と獣哮武神拳では、相性が悪い。ならうかつに殴り掛からず覇気を撃たず、タイミングを計って投げ技を使うしかない。それを全て、見越していた。

「…お前は本当に剛造とよく似ている。かつて剛造も、同じ方法で私を仕留めに来た。私も今やったのと同じ方法で反撃したが」

「だが、俺は親父とは違うぞ!!」

皇魔は自分の拳に覇気を纏わせる。

(そうだ。俺は奴が獣哮武神拳の使い手であるということばかり考えて、下らん誘導に掛かった)

らしくなかった。自分の戦い方は、相手のあらゆる力と策を正面から粉砕しねじ伏せるもの。

(同じことを、この男にもすればいい!!)

「轟牙通突拳!!!」

纏った覇気を回転させ、必殺の拳を放つ。

「白虎旋刃拳!!」

対するワンレンもまた、同じように自分の拳に回転する気を纏わせて、迎え討った。皇魔の覇気はワンレンの気に切り刻まれて、腕にいくつもの裂傷が走る。

「があああああ!!!」

深く切りえぐられた腕を押さえる皇魔。貫通技の轟牙通突拳が、押し負けた。

「切り裂き貫くことにかけて、私の獣哮武神拳に勝る技はない。使うべき技を間違えたな」

「…まだだ!!」

皇魔は切り裂かれた腕に覇気を通す。覇気にはレスティーの活性ほどではないものの、治癒能力がある。これで拳を振るえる程度にダメージを回復させた皇魔は、次の技を使った。

「闘界覇神拳奥義・怒涛炸裂拳!!!」

全力の拳を連続で打ち出す技。

「獣哮武神拳奥義・斬空竜蛇咬ざんくうりゅうじゃこう!!!」

それに合わせてワンレンが繰り出したのは、気を纏わせた手刀による連続の突き。怒涛炸裂拳をも上回る速度で繰り出されたこの連撃を受けた皇魔の腕は、

「ぐあああああ!!!」

ズタズタに切り裂かれる。

「お前が拳を繰り出すならば、私はその拳と腕を切り刻もう。お前が蹴りを繰り出すならば、私はその足を切り裂こう。」

敵の抵抗手段をことごとく奪い、挽き肉になるまで完殺する。それが、獣哮武神拳。

「砕滅…!!」

しかし、それを知ってなお、皇魔は諦めない。覇気でダメージを回復している時間が惜しい。そんなことをする暇があれば、少しでも攻撃に回す。

「轟波!!!」

ダメージをおして両腕をワンレンに向け、全力の覇気を放つ皇魔。

「飛燕墜爪!!」

それを迎撃するワンレン。ワンレンの気は覇気の波を切り裂いて進み、皇魔の胴体を…




切り裂く前に、弾かれた。




「!?」

ワンレンがよく見ると、皇魔は口に覇気でできた剣をくわえている。闘界覇神拳奥義・闘気創刃。それで飛燕墜爪を弾いたのだ。斬撃には斬撃。しかし、今の砕滅轟波で、もう皇魔は腕を使えるだけの力を使い果たした。だから、口にくわえて持っている。

「ンンンンンンンンンンンン!!!!」

ワンレンの動きが止まった隙を突き、皇魔は疾走した。首を横に振り、ワンレンを斬ろうとする。

「ちっ!!」

が、その前にワンレンが気を纏わせた腕で剣を防ぎ、

「獅子王爪撃!!」

残った手で皇魔の腹を貫いた。

「がっ!!!」

凄まじい激痛に、皇魔は思わず剣を放してしまう。

「猛獣烈脚!!!」

「ごおああっ!!!」

続いて放たれた斬撃をと打撃を併せ持つ蹴りに蹴り飛ばされ、数回転がって倒れた。

「…この私が一瞬とはいえ気を取られるとは…見事な気迫だった。さすがは鬼宝院家の御曹司」

これほどの使い手と戦ったのは、ワンレンにとって本当に久しぶりだった。しかし、皇魔の力は、未だに覇氣鎧装を修得できる領域まで、届いていない。まだ立ち上がらない皇魔を見て、やはり剛造との約束通り殺すべきか、と思案していた。


その時、


「…」


皇魔が、立った。その瞳には、まだ諦めの色は見られない。戦いを続けるつもりだ。

「…これだけの攻撃を受けて、まだ闘志が折れないとは…本当に剛造とよく似ている。」

次なる攻撃に備えて、ワンレンは構えを取った。




全身が痛む。腕の感覚がない。もう回復できるほどの覇気も残っていない。

(だが、負けるわけにはいかん!!十年前の…あの日の誓いを果たすまでは!!)

レスティーと交わした誓いを果たすまで、死ぬことはできない。だが、もう立っているのがやっとの状態だ。こんな身体で、ほぼ無傷なワンレンをどうやって倒せばいいのか。

(…いや、ある)

しかし、こんな状態でも一つだけ、この戦況を覆す方法があった。その技の使い方とともに、皇魔の脳裏にあの日の光景が思い起こされる…。












十年前、鬼宝院家の屋敷。

庭で一人、ひたすら修行に励む少年がいた。身長や顔付きは年相応といった感じのどこにでもいるような少年だが、拳法の修行をしている辺り、ただ者ではないと言えるだろう。この少年こそ、鬼宝院皇魔である。たった十年で何があったなどとツッコミを入れてはいけない。

「ふっ!!ふっ!!ふっ!!ふっ!!」

修行と言っても特別なものではなく、正拳突きの練習に蹴りを混ぜているくらいなものだ。…今は。普段は、刺付きの振り子に全身を打ち付けたり、打撃で岩を砕いたり、覇気を撃つなどの修行をしている。ここまで聞いてわかったと思うが、どう考えても無茶な修行だ。それゆえ、門下生達は全員逃げ出してしまい、泣き言一つ言わずについてきた皇魔しか残ってはいない。デザイアが強大な相手だということは聞いていたし、こんな修行をしなければならないほど急いでいることも、皇魔は知っていた。だから、仲間が一人もいなくなっても、皇魔は修行をやめない。仲間などいらない。デザイアと戦うのは、自分一人だけでいい。そう思っていた時だった。声が聞こえたのは。


「へぇ~…ずいぶん頑張ってるのね。」


その声は、皇魔の背後から、いや、背後より少し上から聞こえた。

「何奴!?」

ここまで接近されるまで気付かなかったことに驚きながら振り返り、皇魔は覇気の玉を打ち出して攻撃する。

「おっと。」

木の上にいた声の主は玉をかわし、地面に着地した。

「すごいすごい!もう覇気が撃てるんだ?」

声の主は、少女。少女は七歳という年齢でありながら覇気を攻撃に使える皇魔の実力を見て、能天気にも感嘆しながら手を叩いている。一方皇魔は、それどころではない。いきなり現れた正体不明の少女を見て、警戒しながら構えた。

「そんなに怖がらないでよ。私は別にあなたを殺しに来たわけじゃないんだから」

「信用できるか!!」

再度覇気の玉を放つ皇魔。少女はそれを笑いながらかわして、皇魔の背後に回り込む。

「ちっ!!」

それを目で、気配で追った皇魔は、自分の背後目掛けて拳を繰り出した。しかし少女はこれさえも避けて、軽く宙返りしてから着地する。

「思ったよりいい反応ね。それじゃあちょっと拝見♪」

少女は懐から無数の手裏剣を出した。攻撃に備えて身構える皇魔に投げようとする。そこへ、

「やめなさい紗理奈。名乗りもしないで無礼な…」

一人の男がやって来て、少女を紗理奈と呼んで止めた。

「…はぁ~い」

少女、紗理奈は渋々といった感じに手裏剣をしまい、男の側に駆け寄る。

「君が鬼宝院皇魔かね?私は霊宮寺満夫。こっちは娘の紗理奈だ」

「霊宮寺!?」

皇魔は少女の正体に気付き、そして理解した。霊宮寺は鬼宝院の分家。紗理奈はその娘なのだ。皇魔はこの歳でもう何人もの達人との試合に勝利してきたが、その彼でさえ、完全に翻弄されてしまった。しかし、霊宮寺の娘ならば納得できる。紗理奈もまた、何人もの強者を倒してきたはずだから。

「よく来たな、満夫。」

そこへ、剛造が来た。

「ち、父上!!」

膝をついて頭を下げる皇魔。

「久しぶりだな、剛造。さ、御挨拶しなさい」

「お久しぶりです、剛造様。」

「よく来たな、紗理奈。少し見ていたが、わしの息子と遊んでいたようだな。楽しかったか?」

「はい!とっても!」

「くっ…!!」

皇魔は剛造に見られていたこと、紗理奈の返答を知り、屈辱を感じて舌打ちした。

「わしは満夫と大事な話がある。もうしばらく皇魔と遊んでおれ」

「はい♪」

剛造は満夫を連れて、屋敷の奥へと消えていく。それを見届けるや否や、紗理奈は再び手裏剣を出した。

「剛造様からお許しも頂いたし、続ける?」

「当然だ!さっきのようにはいかないぞ!!」

紗理奈は純粋に戦いを楽しむつもりで、皇魔は屈辱を晴らすつもりで、再度の本格的な激闘を始める。





そんな二人の戦いを尻目に、剛造と満夫は小さな会議をしていた。

「お前の息子、かなりできるようだな。」

「当然だ。わしの息子だぞ?鬼宝院の跡取りとして生まれた以上は、できるように鍛えてやらねば。」

「だがあまり無茶をさせるのは良くない。あの年頃ならまだ遊びたい盛りだろうし、少しは甘やかしてやらなければ。何より、あの子が可哀想だ。」

「子供というものは甘やかすと付け上がる。皇魔も、ああ見えて頭の回る方だ。それには気付いているだろう。今のうちから己を律する術を身に付けさせておく必要がある」

「…変わらんな、お前も。」

常に全てに対して強く在れ。剛造はそうなるように育てられた。先祖代々続く教えだ。例外はない。満夫もそう育てられてはきたが、剛造よりも情に厚い人間になったので、紗理奈をかなり甘やかしている。もっとも紗理奈の場合、戦いを好み、自らを高めることへの貪欲さを持ち合わせていたため、満夫が何も言わなくても積極的に修行していた。だから、常軌を逸した修行を積み重ねてきた皇魔とも、互角に戦える。互いに立派な子を持った鬼宝院家と、霊宮寺家。これなら家の将来は安泰だ。そう、二人がこのまま無事に育てば。

「ところで剛造。デザイアが我々の子供達の命を狙っていることは知っているか?」

満夫は家の、子供達の未来の話を切り上げて、本題に入った。

「もちろん知っている。いや知らぬはずはない」

鬼宝院家と霊宮寺家には、子供が生まれる度にデザイアの兵士が差し向けられてきたという伝承が残っている。かつて剛造と満夫も襲われた。その時は返り討ちにしてやったが。

「災いの芽は摘み取っておきたいのだろう。断じて阻止せねば…」

「うむ。出来損ないとはいえ、わしの息子だ。あのような連中に殺させるわけにはいかん」

「…結局お前も我が子が可愛いんだな。」

「当然だ。」

皇魔に対して刺のある言動ばかりの剛造だが、本当は皇魔が可愛くてしょうがないのだ。満夫もまた、紗理奈を一家の宝と考えている。子供達を守るためにも、二人はこれまで以上に万全を期するよう心掛けるのだった。





「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」

「フゥ…くっ…」

戦い疲れた二人は、庭の真ん中に大の字になって倒れていた。

「び…びっくりした…本当に強いじゃない…父様と母様以外じゃ…ここまでやったのは初めてよ…!!」

「お…お前こそ…霊宮寺家の娘が…これほどとはな…!!」

互いの健闘を讃え合う紗理奈と皇魔。やがて紗理奈の方が先に起き上がり、皇魔に言った。

「あなたみたいな仲間がいてくれるなら、私も心強いわ。」

「…仲間…?」

「そうよ。いつか一緒にデザイアと戦う、仲間。今回はあなたがそれに相応しいか確かめに来たんだけど、来て正解だった。これからよろしくね、皇魔!」

微笑んで手を差し出す紗理奈。しかし、皇魔はそんな彼女を呆けたように見たまま、全く反応しない。

「どうしたの?」

そう訊かれて、やっと反応した。

「…仲間か…久しく忘れていた言葉だ。俺にも仲間と呼べる人間はたくさんいたんだが、全員俺から離れてしまった。ほぼ父上のせいだが…」

「あー…私も父様から聞いたんだけど、剛造様相当無茶な修行をさせてたみたいね?」

「ついてこれたのは俺だけだった。俺も、俺についてこれないようなやつは必要ないと思っていたんだ。そんな弱い仲間は、いらないって。」

紗理奈は黙る。皇魔がどれだけ過酷な日々を送ってきたか、わかったからだ。差し出していた手も、思わず引っ込めてしまう。

「…でもお前なら大丈夫そうだ。こちらこそ、よろしく頼む。」

皇魔は起き上がり、今度は皇魔の方から握手を求める。強い紗理奈なら、自分のいい仲間になってくれると、そう思ったから。

「…うん。よろしくね!」

固い握手を交わす皇魔と紗理奈。





この時から、二人の交友関係は始まった。





紗理奈は暇さえあれば鬼宝院家の屋敷を訪れ、皇魔の修行に付き合った。霊宮寺家の屋敷はかなり離れた所にあるのだが、紗理奈曰く一時間走れば着くらしい。もっともそれは彼女が人知を超えたスピードで動けるからであり、皇魔はそうはいかず、紗理奈の方から来る日々が続いた。





それから二ヶ月ほど経ったある日のこと。鬼宝院家の屋敷はデザイアから襲撃を受けた。剛造は皇魔と、遊びに来ていた紗理奈を裏から逃がし、一人デザイアを迎え討つ。本当なら初めてのデザイア戦は二人に経験させてやりたかった剛造だが、今回ばかりは状況が違った。屋敷に押し寄せてくるデザイアの兵士。その後ろから、ゆっくりとついてくる一人の老人を目にしたからだ。

「ぬぅぅぅん!!!」

『うわあああああああ!!!』

剛造が拳を振るう度に兵士が数十人ほど吹き飛び、老人がたどり着く頃には、全滅していた。剛造は老人に声をかける。

「相変わらず貴様らの兵士は温いなコレク。全ての兵士をエボリュータントにして連れてくれば、少しは望みがあったかもしれんものを…」

老人の正体はコレクだった。皇魔と紗理奈は、デザイアの兵士くらいなら容易く撃破できるだけの力を持つが、幹部の相手はまだ無理だ。いくら剛造がついているとはいえ、万が一にも殺されるなどということがあってはいけない。

「できることなら、わしは万全の状態の貴様と正面から戦いたい。痛めつけられ疲弊した貴様を倒しても、つまらんからな。」

「ふん、わしを痛めつけられると思うておるか!!」

剛造は右手に覇気を集中し、

「思わんさ。だからこそわしがこうして出向いてきたのじゃ!!」

コレクも怪人態に変身して双剣を持ち、エネルギーを込めて、

「覇道烈破!!」

剛造は覇気の波動を、

「閃光破斬!!」

コレクは光の斬撃を放った。











「うらああああ!!!」

「ふんっ!!」

「ごはっ!!」

皇魔は剣で斬り掛かってきた兵士の顔面を殴って倒し、

「はっ!!」

「ぎゃっ!!」

「げひぃっ!!」

紗理奈は駆け抜けて、すり抜ける瞬間に二本の小太刀で兵士を二人斬る。

「待ち伏せか…姑息な真似を!!覇道烈破!!」

皇魔は覇気の波動で兵士をまとめて吹き飛ばした。裏から逃げてきた二人だが、山道は多数の兵士によって埋め尽くされており、今それを倒しながら逃げている途中だ。

「一気に片付けるわ!!忍法・紫電双狼牙の術!!」

紗理奈は雷でできた狼を二体召喚すると、狼達を暴れさせ、自分達を取り囲んでいる兵士を全滅させた。その時、

「いやはやお見事。さすが、鬼宝院家と霊宮寺家の御子息方というわけですね。」

スーツに身を包んで黒いサングラスを掛けた男が現れた。現れた直後に、怪物へと姿を変える。

「私はデザイアの幹部の一人、メイカー。以後お見知り置きを…まぁ、これが最初で最後の挨拶になりますが。」

「あんたがこいつらの親玉ってわけね。上等!」

メイカーと名乗った怪物を前に、紗理奈は意気揚々と小太刀を構え直す。だが、皇魔は違った。

「…だ、駄目だ…逃げよう紗理奈!」

「何で!?」

「あいつは強すぎる!!わからないのか!?」

皇魔は多くの達人と戦うことで、相手の強さを計る目を養ってきた。その目で見たことで、理解したのだ。自分達とメイカーとの力の差を。あまりにも離れすぎている圧倒的な力を前にして、完全に戦意を喪失してしまっていた。

「…舐めないで。私だって、あのメイカーってのとの力の差ぐらい、わかってるわ。でもね、わかってるからこそ戦うの。あいつデザイアの幹部って言ってたでしょ?ここで倒すことができれば、デザイアにとってかなりの打撃になるはずよ!」

「危険すぎる!!もし勝てなかったらどうするんだ!!」

「そんなこと気にしてたら勝てないわ!!」

「落ち着け!!お前の考えは無鉄砲すぎる!!」

「あんたは臆病すぎるのよ!!」

紗理奈の考えはわかるだが、それは実力の差が近いか、あるいは何か策がある場合に限る考えだ。そのことで言い争いになり、連携を崩してしまう二人。

「仲間割れですか…でも殺します。さっきの戦いを見て、あなた達は危険だとわかりましたから。」

メイカーは全く慌てることなくバズーカを生成し、それを撃った。

「危ない!!」

紗理奈は皇魔を突き飛ばし、紗理奈も一緒に倒れ込む形でかわす。

「皇魔が戦わないなら私一人で戦うわ!!」

「よせ紗理奈!!戻れ!!」

皇魔の言葉を聞かずに飛び込む紗理奈。



結果は惨敗だった。紗理奈のスピードが速いおかげで被弾は最小限に抑えられているが、メイカーに彼女の忍術は全く効かず、ダメージを与えられない。

「すばしっこいですね…ですが、まだ成長していないうちから仕掛けてよかったですよ。これならいくらでも殺れる。例えば…」

メイカーはロケットランチャーを生成し、

「こんな具合にね。」

皇魔に向けて撃った。

「皇魔!!」

紗理奈は叫ぶが、皇魔は紗理奈とメイカーの戦いを見てさらにメイカーの力に恐怖を感じ、放心状態になっていた。紗理奈の声は届かない。

「くっ…!!」

皇魔が自分を取り戻したのは、



紗理奈が皇魔の盾になってメイカーの攻撃を喰らい、倒れたのを確認した時だった。



「…あ?…え…あ?」

間抜けのような声を出して、皇魔は倒れている紗理奈を見た。忍装束は無惨にも破られ、背中にはひどい火傷が付いている。

「おやおや、私は彼を狙ったんですがねぇ…」

「…紗理奈!!」

皇魔はようやく紗理奈を抱き締め、揺さぶる。

「紗理奈!!紗理奈しっかりしろ!!」

「…皇魔…」

かろうじて意識が残っていた紗理奈は、薄目を開けて皇魔に言う。

「ごめん…なさい…やっぱり私、無鉄砲すぎだった…あなたの言う通り、逃げればよかった…いくらでも…逃げられたはずなのに…」

「紗理奈…!!」

「逃げて、皇魔…あなた…だけでも…に…げ…て…」

開けていた薄目を閉じて、力尽きる紗理奈。

「紗理奈ぁぁーーーーっ!!!!」

目から大粒の涙を流して、皇魔は絶叫する。そんな様子を見て、メイカーは楽しそうに言った。

「悲しむ必要はありませんよ。すぐに彼女に再会させてあげます。あの世でね」

「…!!!!」

皇魔はメイカーを睨み付け、紗理奈を放して立ち上がる。

「…お前だけは…」

「はい?」

皇魔の小さな声に、メイカーはわざとらしい動作で耳を傾けながら聞き返した。だから、ちゃんと聞こえるように言う。

「お前だけは俺が倒す!!必ず!!!」

「私を?女の子を戦わせて、自分だけ見学していたようなあなたが?無理でしょうどう考えても。」

メイカーの言う通り、皇魔は紗理奈に加勢しなかった。できなかった。だが、メイカーを倒す方法はある。禁技を、闘界覇神拳の禁技を使えば、勝てる。

(すまない紗理奈。俺が弱いせいで、お前をひどい目に遭わせてしまった。許してくれ)

皇魔は心の中で紗理奈に謝り、禁技を使う決意をした。

「受けろメイカー!!これが俺の全てだ!!」

「面白い。何ができるか見せてもらいましょう」

メイカーは完全に余裕で、皇魔が何をするのか待っている。その余裕が命取りになると知らずに。

「…おおおお…!!」

皇魔は全身全霊を込めて覇気を練り上げる。

「おおおおおおおお…!!!」

己の全てを懸けて、覇気を放出する。

「おおおおおおおああああああああ!!!!」

皇魔がただ一つ、メイカーを倒すという意志を込めて生み出した覇気は、



真紅の巨人の姿となった。



「こ、これは!?」

ここまできて、メイカーは初めて慌てる。皇魔は静かに、怒気を込めて技の名を告げた。




「闘界覇神拳禁技・覇神顕現!!!」















「怒涛炸裂拳!!!」

「ぐおああああ!!!」

剛造はコレクに覇気を込めた拳を連続で喰らわせ、追い詰める。

「その程度か。貴様の弱さも変わらんな」

「クックックックッ…やはり強いな貴様は。」

あまりのダメージに変身が解けてしまったコレク。しかし、コレクは笑っていた。

「しかし、今頃はメイカーが貴様の子らを…」

「何!?どういう意味だ!?」

剛造は尋ねるが、コレクは逃げてしまった。次の瞬間、轟音が響き、剛造は振り向く。見えたのは、覇気でできた巨人。

「あれは…覇神顕現!!もしや…」

嫌な予感を覚えた剛造は、巨人が出現している場所を目指す。

(早まってはならんぞ皇魔!!お前はまだ、その技を使うには早すぎる!!)











皇魔の背後にそびえ立つ形で存在している、覇気の巨人。

「…そんなこけ脅しで…!!」

平常心を取り戻したメイカーはガトリングを生成し、巨人目掛けて発砲する。しかし、巨人には傷一つ付かない。

「これなら…!!」

続いてロケットランチャーの弾を補充し、再び巨人に向けて発射する。今度は、巨人の右半身が消し飛んだ。

「やはり見せかけですね。この程度では…」

だが、巨人はまだ消えていない。どころか、消し飛ばした右半身が再生した。

「な、何!?」

驚くメイカー。これが闘界覇神拳の禁技、覇神顕現である。己が持てる全ての覇気を練り上げ、放出し、巨人の形へと構築してぶつける。この巨人は凄まじい強度とパワーを誇り、傷付けられても完全に破壊されない限りは再生するのだ。ただし、この技はただ覇気を練るのではなく、生命力そのものすら覇気へと変化させて使う。そのため巨人がダメージを受けても再生できるのだが、ダメージを受ければ受けるほど覇気は消費され、使い手の生命力は削り取られていく。しかもこれを使っている間、使い手は完全に無防備だ。文字通り自身の命を懸けた一撃必殺の技、それがこの覇神顕現なのである。要するに、捨て身の自爆技なのだ。

「ならば…!!」

そしてメイカーは、皇魔が無防備となっていることに気付き、ガトリングを撃った。

「がああああ!!!」

無数の弾丸が、皇魔の手足を撃ち抜く。しかし、

「う…おおおおおおお!!!!」

皇魔は巨人を維持している。既に拳を振るう力はないが、巨人は皇魔の意思で操れるため、皇魔が死なない限りは何も問題ない。

「くっ!!」

引き続き攻撃するメイカー。皇魔の全身を激痛が襲うが、巨人を消すことはせず、ひたすら維持すること、操ることに精神を集中させる。

「馬鹿な!!これだけの攻撃を受けてなぜ気絶しない!?なぜ死なない!?」

信じられなかった。普通の人間の子供なら、もう死んでいるはずだ。

「おおおおおおおおおおおああああああああああああああ!!!!!!」

だが、皇魔は死なず、巨人を操る。巨人は大きく腕を振りかぶり、メイカーに殴り掛かりながら突撃していった。




大爆発が起きた後、ようやく剛造が到着する。

「皇魔!!紗理奈!!」

剛造が見たのは、全身にダメージを受けて変身が解除されたメイカー。

「…たかが子供と、侮っていましたよ…!!」

メイカーは逃げてしまったが、剛造はメイカーを追うどころではない。まず皇魔と紗理奈の安否を確認しなければ。最初は紗理奈。背中に大きな火傷があるが、まだ息がある。続いて皇魔。こちらは立ったまま白目を剥き、気絶していた。剛造は二人を抱えて、急いで屋敷に駆け込む。











(あれ以来俺は、あの技を使っていない)

所変わって、現代。

(だが、どうやらもう一度使わねばならんようだ)

十年前と同じく、あの技を使う決意をする皇魔。そして、使った。


「闘界覇神拳禁技・覇神顕現!!!」


十年ぶりに使った禁技。巨人の大きさは、あの時とそれほど変わっていない。しかし、威力が大きく上がっていることはわかった。

「これは…覇神顕現!?」

剛造と戦ったことのあるワンレンは、恐らく見たことがあるのだろう。覇神顕現を知っていた。当然、自爆技であるということも。

「そこまでの決意を…」

皇魔の瞳に、揺らぐことのない決意と覚悟を垣間見るワンレン。

「…ならば、私も全身全霊の奥義を以て応えねばなるまい…!!」

ワンレンは自分の両手に気を込め、皇魔に向けて放つ。

「獣哮武神拳奥義・狂乱爪牙!!!」

襲い来る無数の刃が、皇魔の全身を切り刻む。だが、いくら切り刻まれても、どんなに痛くても、皇魔は倒れなかった。

「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」

倒れる代わりに、覇神顕現をぶつけた。禁技を放ち終えた皇魔は、白目を剥いて気絶している。十年前の、あの日のように。











「…あっ…」

皇魔が目を覚ましたのは、自分の屋敷の中でだった。隣から小さな寝息が聞こえるので見てみると、紗理奈の可愛らしい寝顔が見えた。

「目が覚めたか。」

どうやら助かったらしいとわかってから、剛造の声が聞こえた。

「父上。」

剛造は皇魔の隣に座る。

「…言ったはずだぞ皇魔。あの技は、真に命を懸ける時以外の場面では、使ってはならんと。」

「…申し訳ありません。」

「…だが、よくやったな。よく紗理奈を守った。お前はわしの、自慢の息子だ。」

ゆっくり、優しく皇魔の頭を撫でてやる剛造。今までずっとつらく当たって来た剛造だが、皇魔はそんな父が持つ優しさを見た気がした。

「今日はもう休め。ゆっくりとな」

「…そうします。」

皇魔は剛造に撫でられながら、再び深い眠りに落ちた。





後日、また紗理奈が遊びに来た。命は助かったが、背中の火傷の痕は、一生残るらしい。

「すまなかった。お前が俺の盾になったせいで…」

「ううん。これは、皇魔の言うことを聞かなかったバチよ。」

謝る皇魔と、自重気味に笑う紗理奈。

「それでね、父様と母様はしてないんだけど、霊宮寺家と霊宮寺家に仕える忍は、偽名を付けることが多いらしいの。だから私は、自分にレスティーっていう偽名を付けることにしたわ。」

「レスティー?」

「英語の興味、Interestから少し文字ったの。私は前々から無鉄砲だったから、それを戒めようと思って。もっと強くなりたいから…」

「…そうか」

彼女も彼女なりに強くなろうとしていることを知る。

「俺も強くなるよ。禁技なんて使わなくても、お前を守れるように。」











「…はっ!」

皇魔は目を覚ました。

「…夢か。」

ずいぶん懐かしい夢を見たものだと思いながら、自分がまだ生きていると気付く。

「気が付かれましたか。」

そこへ、女性を連れたワンレンが来た。

「妻のティエです。」

「初めまして。どうぞ」

ティエは皇魔に水を渡す。

「…失礼します。」

皇魔は水を受け取ると、飲み干した。

「丸一日寝ておられましたよ。死んでいるのではないかと思っていましたが、安心しました。」

ティエは本当に安心したようにコップを受け取り、下げに行く。

「それで修行の件ですが、引き受けることにしました。あなたが見せたあの覚悟…あれだけの決意があれば、覇氣鎧装の修得も可能でしょう。」

「…ありがとうございます。」

ワンレンに礼を言う皇魔。

(彼は本当に剛造に似ている)

かつて剛造とワンレンが戦った時、剛造もまた同じように覇神顕現を使ってワンレンに勝った。

(もしかしたら、とてつもないことになるかもしれないな…)

皇魔はまだまだ原石の段階。この原石を自分が磨けることに、ワンレンは喜びを感じていた。




そして約1ヶ月に渡る修行の中で、皇魔は驚くべき強さを手に入れてから、ヘブンズエデンへ帰還することとなる。





というわけで、皇魔編でした。修行の内容は省きますが、皇魔の過去に何があったかはわかったと思います。修行中のためしばらく皇魔は出ませんが、代わりに別のキャラ達のエピソードを書こうと思います。というわけで、次回は光輝&さだめ編です。お楽しみに!

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