第十一話 デート計画
今回は、新キャラが登場します。
「「メイリン先生~!」」
いつも生徒の憧れ、美人教師メイリン・ノルンは、二人の女子生徒に呼び止められた。
「あら、どうしたの?」
「メイリン先生っていつも素敵ですよね!」
「強いし、綺麗だし!」
「そう?まぁ、傭兵たるもの精進を怠るべからず、だからね。」
「「すご~い!」」
「じゃあ、私は次の授業があるから。あなた達も頑張ってね」
「はい!」
「メイリン先生も頑張ってください!」
メイリンは二人と別れる。
そんな彼女の後ろ姿を、物陰から見つめる者がいた。彼の名は室岡田部。ゲイル達のクラスの副担任だ。
「…はぁ…」
室岡はメイリンの姿を見送ってため息を吐き、すごすごと歩いていった。
*
「じゃあ今日はここまで。みんな、しっかり復習しておくようにね。」
ヘブンズエデンは、通常の高校と同じく六時限授業。その六時限目を終え、メイリンは職員室に戻っていった。
「メイリン先生の授業って、本当にわかりやすいよね。」
アンジェは授業の感想を言う。
「ああ。俺もずいぶん助けられている」
普段はアンジェのことを毛嫌っているゲイルだが、今回は素直に同意した。
「んで、今日はどうする?例にもよって俺はフリーなんだが…」
「あたしも暇よ。またどこかに寄って帰る?」
狩谷と空子を発端にして、今日もゲイル達は放課後の予定について会話する。
と、
「なぁ…ちょっといいか…?」
四人に、室岡が遠慮がちに話し掛けてきた。
「室岡先生!」
「珍しいな。どうしたんだ?」
空子と狩谷が驚く。
「あの…実は…」
室岡はもじもじして、内容を話そうとしない。
「…もしかして…」
アンジェはなぜ室岡がこんな状態に陥っているのか、予想をつける。
「メイリン先生のこと?」
「…ああ…」
彼がメイリンに対して恋慕を抱いているという噂は、もはやヘブンズエデン中で有名になっていた。なので、アンジェはすぐ理由に気付いたのだ。
「それで、俺達に相談したいということか。」
「……ああ……」
室岡の心中を言い当てたゲイルは、狩谷達を見る。
「どうする?」
「…どうするったって…とりあえずさ、ウチのクラスのカップルに相談したらいいんじゃねぇか?」
狩谷が言うカップルとは、光輝とさだめのことである。
「もちろん訊いてみたさ。でもなぁ…」
結果は、二人とも顔を真っ赤にして押し黙ってしまったというものだった。あの二人もまだまだ恋愛経験が浅いので、そういったアドバイスはできないし、また恥ずかしい。
「皇魔くんとレスティーちゃんは」
「論外だ。」
アンジェが言うより早く、ゲイルが横から口を挟んだ。確かに皇魔とレスティーが互いに抱いているのは、恋慕というより好敵手に対して抱く友情のようなものである。それは室岡もわかりきっているので、相談しなかった。
「それで、消去法というわけか。」
ゲイル達四人は、室岡と一番仲が良かったりする。だから室岡も、こうしてゲイル達を頼ってきたのだ。
「よし、わかりました!あたしが何か考えておきます!」
決意したのは、空子。
「本当か!悪いな…俺どうもこういうことは苦手で…」
室岡は申し訳なさそうに頭を下げた。彼は戦闘面こそ学園でも指折りの実力者だが、日常面はからっきしなのである。
「じゃ、俺はメイリン先生から話でも訊いてくるか。まず、付き合ってるやつがいるかどうか確認しなきゃな。」
狩谷の判断は的確だ。もし既に交際相手がいたら、計画を練るどころではない。というわけで、狩谷は早速訊きに行く。
場面は変わって職員室。
「メイリン先生。」
狩谷はメイリンに尋ねた。
「狩谷じゃない。どうしたの?」
「いきなりで悪いんだけどさ、メイリン先生って付き合ってるやつとかいるのか?」
「本当にいきなりね…うーん…」
狩谷の質問に、メイリンは悩む。
「付き合ってる人はいないけど、気になってる人はいる…かな?」
「へぇ…それって誰だ?」
「それは…内緒。」
「いや内緒って…教えてくれよ!」
「ダーメ。そんなの、こんな人の多い場所で言えるわけないじゃない。っていうか、何でいきなりそんなこと訊くの?」
「えっ…いや…ちょっと気になっただけだよ。」
「ならいいけど…」
狩谷は教室に戻り、結果を報告した。
「付き合ってないけど気になってる人はいる、かぁ…誰なんだろう?」
首を傾げるアンジェ。一方、室岡は近くの机に手を付き、落ち込んでいた。そんな教師の姿を見て、ゲイルは呆れる。
「交際相手はいないんだろう?ならまだ望みはある。意中の相手がいても、その好意を自分に向けさせてやればいい。だからそんな世界の終わりみたいな顔をするな」
「…そうだよな…まだ結論を出すのは早いよな…」
「そうだ。第一、その意中の相手が室岡先生である可能性もあるぞ。」
「…!!」
ゲイルからの慰めの言葉に、室岡は一気に元気になった。
「そうだよな!うん!きっとそうだ!」
「…この男は…」
「相変わらず、日常と戦闘時のギャップがすごいよね…」
ゲイルは室岡の様子に、アンジェと二人揃って呆れている。
「いずれにしても、作戦は決行できるわね。ちょうど明後日は休みだし、室岡先生とメイリン先生のデート計画を立てておくわ。」
一番肝心な情報を入手できたので、空子は作戦の計画を始めることにした。
「じゃ、後は室岡先生次第だな。」
狩谷は室岡を見る。
「…俺?」
「当たり前だろ?室岡先生のデートだぜ?あんたが相手を誘い出さなくて何が始まるってんだよ。」
「そ、それはそうだけど…」
元気だった室岡が、また一気に小さくなる。
「…前途多難、だな。」
「…だね。」
ゲイルとアンジェは室岡の姿を見て思った。彼の恋が実るのは、気が遠くなるくらい先になりそうだと。
*
その後、室岡は焦りながらもどうにかメイリンをデートの日に呼び出すことに成功した。その日は、ちょうどメイリンもフリーだったのだ。
そして休日。
「…」
待ち合わせの場所で、メイリンは腕時計を見ながら室岡が来るのを待っていた。ゲイル達はそのすぐ近くで、彼女の姿を見守っている。
「っていうか、お前も来たんだな。」
「不安になっただけだ。お前達の計画が悲惨な結果をもたらさなければいいがとな」
「心配しすぎよ!どんだけあたしのこと信頼してないの!?」
「お前達はどうも、遊び半分でこういうことに取り組む傾向があるからな。どうせ心のどこかでは面白そうだとか思っているんだろう?」
「「「うっ…」」」
三人は思っていることをズバリと言い当てられた。
「だ、大丈夫だよ!室岡先生の恋が成就して欲しいっていうのは本当なんだから!」
「そ、そうそうそうだぜ!」
「人の恋路を邪魔するなんてそんな…」
アンジェ、狩谷、空子は焦りながらも弁解する。
「…まぁいい。それより、室岡先生が来たようだぞ。」
「えっ!?」
ゲイルに指摘されて、空子はメイリンを見る。ゲイルが言った通り、室岡がメイリンと合流していた。
「すいません待たせちゃって。」
「いえ、いいんですよ。まだ時間には早いですし」
メイリンの腕時計の針は、約束の時間の三分前を差していた。
「…じゃあちょっと早いけど…」
「…行きましょうか。」
歩き出す二人。
「追いかけるわよ。」
「うん。」
「おう。」
「…」
それを追っていく四人組。
こうして、デートが始まった。
(…やっぱり不安だ…)
ゲイルのみが不安を抱えて。
*
本日のデートは、あらかじめ空子から渡されたスケジュール表に沿って行われる。当然スケジュールの内容を知っているのは、室岡のみだ。まずは喫茶店に行く。そこはメイリン行きつけの喫茶店であり、今回行くことによって室岡が自分のことをよく知ってくれていると思わせ、好感度を上げる。道中いろいろな話をしながら、二人は喫茶店に到着した。
「ここ、私の行きつけなんですよ。もしかして、知ってました?」
「ええ。たまに見かけるんで」
「そうだったんですか。」
ここがメイリン行きつけだということは空子から聞いて初めて知ったが、無論そんなことは言わない。二人は中に入って、適当な飲み物を注文した。ゲイル達は窓の外から、様子を伺っている。
「ここまではスケジュール通りね。」
空子は小さくガッツポーズをした。
「で、このあとは?」
「水族館に行くことになってるわ。その後は…」
狩谷に訊かれて、空子は説明していく。ゲイルは興味がないので聞き流し、メイリンと室岡を見ていた。
「楽しそうだよね、どっちとも。」
そんな彼に話しかけたのは、アンジェだ。
「…ああ。」
ゲイルの目に、室岡とメイリンは楽しげに談笑しているように見える。
「もしかしてゲイルは、あの二人みたいになりたいって、思ってる?」
「…馬鹿を言うな。」
自分が誰かとあんなふうに…アンジェに囁かれて想像してしまい、顔が熱くなるのを感じたゲイルは、悟られないよう顔を背けた。
「何やってるの?」
そこへ、光輝とさだめがやって来る。
「うおっ!?」
驚く狩谷。
「そんな所で張り込みなんてやってたら、不自然に思われるよ?」
「…好きでやっているわけじゃない。」
さだめに指摘されて、ゲイルは今自分達が何をやっているのか話した。
「先生達、今デート中なんだ?」
「うん。」
光輝の問いに、アンジェは頷く。
「…本当だ。すごく楽しそう…」
さだめが窓から見てみると、なにやら盛り上がっているのが見て取れた。
「あっ、もう出てくるみたいだよ。」
アンジェが見ると、二人がレジに行き、会計をしている。六人は隠れ、室岡とメイリンが店から出るのを見届けた。
「って、なんでお前らまで?」
「えっ?なんとなく…」「私も…」
狩谷が尋ねる。光輝とさだめは無関係なので隠れる必要はなかったのだが、ついノリで一緒に隠れてしまったのだ。
「追わなくていいのか?」
今度はゲイルが訊く。彼がこう訊いたのは、完全に諦めからだ。
「あっ!」
「追いかけるぜ!」
「せっかくだし、僕も行くよ。」
「私も、あの二人のデートがどうなるか気になるし。」
こうして光輝とさだめが尾行に加わり、一同は室岡とメイリンを追った。
*
その後も二人はスケジュールを難なくこなしていき、ゲイル達も尾行がバレることはなかった。
気が付けば、夜。
「あー楽しかった!」
「僕もメイリン先生と二人きりで楽しかったです。」
ベンチに座って背伸びをするメイリンと、同意して笑う室岡。
「結構いい感じになってきたな。」
狩谷は言った。二人は夕食を済ませ、スケジュールの最後の項目、告白を残すのみ。
「上手くいくかな?」
「いくよ絶対!」
光輝とさだめは告白が上手くいくかどうかを予想する。
「あの…」
「…はい?」
室岡は告白するべく、メイリンに声をかけた。
「僕は…俺は…」
「…」
真面目な顔で何かを言おうとする室岡を見て、メイリンもまた真剣な顔になる。
「俺は…あなたのことが…!!」
室岡が想いを告げようとしたその時、
「見せつけてくれてんじゃねぇかよ。」
無粋な声がかかった。見ると、柄の悪そうな男が数人、二人を取り囲んでいる。
「そこ、俺らのたまり場なんだわ。どいてくれや」
どうやら、ここはこの男達がよく使っている場所らしい。
「おいどうする?」
ゲイルは相談した。
「よし、ここは俺が…」
狩谷の風なら、室岡達に気付かれることなく男達を倒せる。だが、
「待って。」
空子が制止した。
「ここは先生達に任せましょ。第一、あんな雑魚に負けるはずがないわ。」
「…確かにそうだね。」
アンジェも同意する。
「…ないとは思うけど…」
「危なくなったら助けに入ろう。」
光輝とさだめの意見に従い、一同は見守ることにした。
「…今時こんな身勝手な連中がいるなんてね…」
意外にも、啖呵を切ったのはメイリンだった。
「あ?」
リーダーと思える男がガンを飛ばす。
「身勝手だって言ったのよ。」
しかし、メイリンは引かない。
「ここが自分達の場所ですって?公共物はみんなのもの、なんて幼稚園で習うようなことよ?それをこの場で教育させる気?」
「このアマ…舐めてくれてんじゃねぇか!?」
メイリンの発言に怒ったリーダーは、メイリンの胸ぐらを掴む。
「やめろ。」
それに怒った室岡が男の腕を掴み、握力だけで締め上げる。
「ぐっ!?」
万力のような力だ。握り潰される錯覚をした男は手を払いのけ、
「この野郎!!」
室岡に殴りかかった。
しかし、この場にいる誰もが気付いていなかった。
室岡の、先ほどまでの優男同然の目が、
冷徹な光を放っていることに。
スイッチが…仕事のスイッチが入ったのだ。
男の拳を軽くかわした室岡は、逆に男の顔面に拳を叩き込む。
「ぐわっ!!」
あまりの威力にひっくり返る男。だが、仕事モードになった室岡に隙はない。すぐ両腕を下に下げ、軽く振る。すると、服の袖の中に仕込んであったメリケンサック、ブレイクミョルニルが落ちてきた。瞬時にそれを装着した室岡は、次の攻撃に備えて拳を構える。
「アニキ!!」
「テメェやりやがったな!!」
「ぶっ殺してやる!!」
一斉に襲い掛かってくる荒くれ達。しかし、室岡は眉一つ動かさず、まず一人目のみぞおちを殴って倒し、続く二人目の右頬に肘鉄を喰らわせ、三人目の胸板に拳を入れる。室岡は、SPになる前はボクシングもやっており、SPになってさらに鍛えられたパンチ力と動体視力で、銃弾をも見切って殴り返すことができる。
「ひっ、ヒイッ!!」
残った四人目は室岡の鬼神のごとき強さを目にして、完全に怯んでしまっていた。強さだけでなく、室岡の目も怖い。まるで生ゴミか、虫けらでも見下すような目だ。
「チクショウ女の方を殺ってやる!!」
と、密かに持ち直していたリーダーがナイフを抜き、メイリンに突撃した。だが、メイリンが銃を抜くより先に、リーダーはナイフを落としてしまう。
「な、何だ…!?」
リーダーは何が起きたかを理解できていなかった。
当然だろう。いきなりナイフが重くなって持っていられなくなったなど、そんな不可思議な現象を理解できるはずがない。だが事実だ。ナイフは今、地面に側面から深くめり込んでいる。
室岡はリーダーが持ち直しているのに気付いており、自分のアーミースキル、重力を発動したのだ。ナイフにかかる重力だけを三十倍近く増加させ、落とさせた。武器を無力化した室岡は、リーダーの左頬にも拳を見舞う。
「ごほぅ…!!」
今度こそ、完全に気絶した。
「アニキぃ…みんなァ…!!」
取り巻きが一人もいなくなり、とうとう自分だけになってしまった男。
「…失せろ。」
しかし、室岡はとどめを刺すことはせず、そう一言だけ言った。
「はっ、はいぃぃ!!」
男は急いで仲間達を起こし、そそくさと立ち去っていった。
「…かっこいい…」
光輝は呟いた。
「室岡先生、戦う時だけはすごくかっこいいんだよね。」
アンジェも同意する。
「…はっ!」
仕事モードが切れ、室岡は優男モードに戻った。
「す、すいませんメイリン先生…」
「何で謝るんですか?」
「だ、だって、お見苦しいところを…」
「そんなことないですよ。私もつい見とれてしまって…」
赤面して頭を下げる室岡に、メイリンも少し頬を赤らめる。
「…少し、歩きましょうか。気分転換に」
「…はい…」
完全に縮こまってしまった室岡は、申し訳なさそうに答え、メイリンに着いていく。
「…相当ショックだったんだな。」
「無理もない。先生はいつも悩んでいたからな」
狩谷とゲイルは、室岡が自分の仕事モードについて悩んでいることを知っている。一度この状態になると、戦闘が終わるまで敵を無力化することしか考えられなくなるのだ。やりすぎてしまうこともある。
「とにかく追いかけましょう!」
空子が言い、一同は二人を追った。
*
五分ほど経っただろうか。室岡が気付いた時、彼らは誰もいない公園に来ていた。
「そういえば…」
メイリンは歩みを止めて、室岡を見る。
「さっき何か言いかけてましたよね?何て言いたかったんですか?」
「えっ!?」
唐突に質問してきた。
(ど、どうしよう!今になって告白しようとしてましたなんて言えないし…!!)
思わぬ不意討ちに、室岡はまた焦る。焦って、どう答えるべきか迷う。しかし、待てよ、と室岡は焦るのをやめた。
自分は今、何のためにここにいる?何のために、生徒にまでデートを計画してもらった?そう考え始めた。自分がデートをしたのは、この瞬間のためではないのか?と。
(…くそ…男を見せろ、俺!)
どうかしていた。少しアクシデントはあったが、やることは変わらない。そう決意した室岡は、メイリンに言う。恥ずかしくないよう、自分の全ての想いを乗せて、一気に言う。
「メイリン先生。俺はあなたのことが好きです」
「…」
メイリンは目を見開き、ずっと室岡の顔を見ている。
「俺と付き合ってください。」
さらに続けた室岡。メイリンは、答えを出す。
「いいですよ。」
「……えっ……?」
室岡は一瞬、メイリンが何と言ったのかわからなかった。だから、今のメイリンの返答の意味を、そのまま訊く。
「俺と…付き合っても…いい…?」
「はい。」
即答だ。
「ど、どうして…」
今度は理由を尋ねる。
「私が好きなタイプの人って、どんな人か知ってます?」
ところが、逆に質問された。
「い、いいえ…」
室岡はそれを知らなかったので、首を横に振る。
「ひたむきで、大切な人を思いやれる人です。」
メイリンにとって、室岡は自分の好みに当てはまる人物だった。彼女は知っているのだ。自分にとって大切な人、つまり、自分の生徒達のことを考えて、仕事モードを制御しようと毎日ひたむきに努力している室岡の姿を。
「だから、私も少し前から室岡先生のことが気になってたんです。」
「!!」
彼女が言っていた少し気になる人。それは室岡のことだった。
「じゃ、じゃあ…!!」
「…はい。ふつつか者ですが、よろしくお願いします。」
二人は両想いだった。室岡とメイリン。二人の教師は、ここに結ばれたのだ。
「まさか本当だったとはな…」
奇しくも的中していたゲイルの予想。
「うまくいったみたいだね。」
アンジェは二人の会話と様子から、デートが成功したのを察する。
「これにて一件落着だな。」
「本当に二人の仲を取り持てるなんて…我ながら才能が恐ろしいわ。」
頷く狩谷と勝手に自惚れている空子。光輝とさだめは、何も言わずただ赤面していた。
結果は決まったので、もうこれ以上見守る必要はない。そう感じた一同は、帰っていった。
*
交際を始めたメイリンと室岡。しかし、まだお互いに気恥ずかしいのかキスまではせず、そういった深い所に踏み込むのはもっと想いが強まってからと決めている。
「室岡先生。」
休日明けの月曜日。
「メイリン先生。」
二人は廊下で出会う。
「この前はありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ…」
デートの礼を言うメイリン。と、彼女は唐突に顔を室岡の耳元に寄せて、
「また誘ってくださいね♪」
と囁いた。メイリンは去っていったが、室岡は残っている。彼は顔を耳まで赤くし、頭から湯気を出していた。
「…メイリン先生って、意外と小悪魔かも…」
物陰から見ていたアンジェは苦笑し、その後ろではゲイルが肩をすくめて首を横に振っていた。
というわけで、今回は新キャラ、室岡先生の回でした。恋愛経験がないんでデートとか全然わからないんですけど、書いててニヤニヤが止まりませんでしたよ。
次回からは、いよいよ長編です。アンジェの秘密が明らかに!?乞うご期待!!