天井の節穴から何かきも覗いている。
幼い頃の思い出が残る自室で、一人横になっていた拓海。静寂に包まれた秋の夜、天井に残された光らないはずの星型シールが、不可解な青白さで揺らめき始める。
それは単なるシールの光ではなく、現実の裏側に潜む「あちら側」へと繋がる小さな穴だった。穴の向こうから覗く巨大な生きた瞳と重なる視線。逃げ場のない恐怖のなか、境界線は音を立てて崩れ去っていく。
登場人物
拓海
自室のベッドで金縛りのような恐怖に襲われる主人公。幼い頃に貼った天井の星型シールに違和感を覚え、異界の存在と目を合わせてしまう。
星穴の「目」
天井の亀裂から部屋を覗き込む正体不明の存在。濡れた漆黒の瞳孔を持ち、骨の軋む音とともに拓海へ執着を見せる。
虫の音がぴたりと止んだ秋の夜長、拓海は自室のベットで横になっていた。
部屋の天井には、幼い頃に貼り付けた蛍光塗料の小さな星型シールが幾つも残っている。長年放置されてすっかり光を失ったはずのその一つが、なぜか今夜に限ってぼんやりと青白く光っていた。
気になって見つめていると、光が小さく揺れた。
いや、光っているのではない。天井のクロスが直径数ミリほど丸く剥がれ落ち、そこから「あちら側」の光が漏れているのだ。小さな暗い穴。拓海は息を殺してそれを見つめ返した。
ズ……と、かすかな摩擦音が静寂を割った。
穴の向こうで何かが動いた。丸い穴の淵に、小さな黒い線が浮き出る。それはじわじわと広がり、白目と無数の血走り、そして濡れた漆黒の瞳孔へと姿を変えた。
巨大な生きた「目」が、天井の星穴にぴったりと網膜を押し当て、部屋の中を覗き込んでいるのだった。
拓海は恐怖で指一本動かせない。逃げなければと思うのに、金縛りに遭ったように視線が吸い寄せられる。
次の瞬間、穴の中の瞳孔が小さく絞られ、拓海とバッチリと視線が合った。
ギチ……ギチギチ……。
目玉の奥から、乾いた笑い声のような骨の軋む音が響く。そして、星穴の隙間から、ドロリとした黒い液体と、耳元に直接響くような濡れた囁き声が落ちてきた。
「みーつけた」
星穴が、内側からミシミシと音を立てて広がり始めた。
本作をお読みいただき、ありがとうございます。
幼少期のノスタルジーが宿る「自室の天井の蓄光シール」という日常の象徴が、ふとした瞬間に未知の恐怖へと変貌する不気味さを描きました。
幼い頃、暗闇の中で見たあの小さなシール。本当はどこに繋がっていたのか——そんな日常の裏側に潜む歪みを楽しんでいただけたら幸いです




