『魔王の苦悩日記〜99日目のバカ〜』
一日目
朝、勇者が窓をドーン!!って破ってきた。
「おはようございます☆ 今日も討伐に来ました!」
朝から☆つけんな。うるせぇ。
しかも持ってる武器が木の棒。
「最初の装備です!」
じゃあ帰れ。まだチュートリアルだろ。
勇者、いきなり棒をブンブン振って叫ぶ。
「えいやー! ドヤ顔スマッシュ!」
私の顔にクリティカルヒット。
鼻血出た。
殺した。
……三分後、また窓からドーン!!
「おはようございます☆ 今日も討伐に来ました!」
いやせめてドア使え。
毎回修理費かかるんだぞ。
請求書出してやるからな。勇者株式会社め。
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七日目
お風呂に入ってたら、ドアがギィィ…と開いた。
「魔王さん、入浴チェック☆」
勇者いた。全裸。泡まみれ。
「泡が鎧です☆」
鎧って言うな!ただの汚れだ!
しかも木の棒で背中をゴシゴシしてくる。
「サービスです☆」
サービスの方向性おかしい。
火球でお湯ごと蒸発させた。
湯船から☆マークが浮いてきた。
呪われてる気がする。
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十五日目
勇者、会議中に乱入。
「はいっ! 今日の議題は“魔王軍の給食改善”です!」
誰が頼んだ。
「メニューはカレーライス☆」
お前、給食のおばさんか。
「ちなみにデザートはプリンです☆」
「魔界にプリンなんてねぇよ」
「今から作ります☆」
鍋を振って爆発。
会議室ごとプリンになった。
床、ぷるぷるしてる。
怒る気も失せた。
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三十日目
寝ようとしたら、ベッドの下から声。
「魔王の寝相チェック~☆」
勇者、いた。しかもパジャマ。
「おそろいですよ☆」
知らんわ。誰が選んだその柄。
クマが木の棒持ってるデザイン、誰得だ。
「添い寝いいですか?」
「死ね」
「はーい☆」
言うなり倒れて本当に死んだ。
でも三分後、生き返った。
「おはようございます☆」
寝かせろォォォ!
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四十五日目
勇者がまた神像を持ってきた。
「トイレにも設置完了☆」
いやなんでトイレ!?
用足してる時に後ろで光るな!
「清潔感、大事です☆」
お前の清潔感の定義おかしい。
神像、今日で32体目。
もうどこ行っても☆が光ってる。
目がチカチカする。助けて。
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六十日目
朝食。
スープを飲もうとしたら、テーブルの下から勇者。
「スープ泥棒アターック☆」
お前、食い物のタイミングでしか出てこないな!?
「味が薄いですね☆」
「貴様のせいで涙で薄まってんだよ」
勇者、真顔でスプーンを持って言った。
「愛情を入れましょう☆」
スープに☆を浮かべるな!
油膜だよそれ!
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八十日目
勇者が部屋を片付けてくれた。
「断捨離しました☆」
私の玉座がない。
「いらなそうだったので捨てました☆」
誰が判断した。王座を断捨離するな。
「代わりにトランポリン置きました☆」
飛び跳ねながら叫ぶ勇者。
「テンション上がる~☆」
私も試しに乗った。
悪くなかった。
でも負けた気がする。
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九十日目
勇者、魔王軍の制服を勝手に改造。
胸にでっかく「☆YUSYA☆」の刺繍。
「これでチーム感アップ☆」
「いや勇者、お前敵だからな?」
「敵とか、そういう壁を壊していきましょう☆」
お前の頭の壁が壊れてるわ。
部下たちが無言で笑ってる。
あいつらもう慣れてやがる。
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九十九日目
朝。
今日も勇者が来た。
でもいつもより静かだ。
「おはようございます……☆」
なんか優しい声。
どうした? と思ったら勇者が言った。
「今日で99日目です☆ 記念にこれを!」
差し出されたのは――手作りの「勇者と魔王の友情ノート」。
表紙にでっかく『まおうのともだち☆』
……開いたら、中身全部☆マーク。
文章ゼロ。意味ゼロ。努力ゼロ。
でも、笑ってしまった。
なんか、全部どうでもよくなった。
勇者「魔王さん、今日も元気そうですね☆」
魔王「おかげさまで☆」
あ、言っちゃった。
ついに私まで☆感染。
終わったな、世界。
……まぁいいか。
今日も平和だし、スープはうまいし、トイレも光ってる。
幸せって、たぶんこういうことなんだろう。




