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それ逝け勇者様

『魔王の苦悩日記〜99日目のバカ〜』

作者: 黒の巣
掲載日:2025/11/05


一日目


朝、勇者が窓をドーン!!って破ってきた。


「おはようございます☆ 今日も討伐に来ました!」


朝から☆つけんな。うるせぇ。

しかも持ってる武器が木の棒。

「最初の装備です!」

じゃあ帰れ。まだチュートリアルだろ。


勇者、いきなり棒をブンブン振って叫ぶ。

「えいやー! ドヤ顔スマッシュ!」


私の顔にクリティカルヒット。

鼻血出た。

殺した。


……三分後、また窓からドーン!!


「おはようございます☆ 今日も討伐に来ました!」


いやせめてドア使え。

毎回修理費かかるんだぞ。

請求書出してやるからな。勇者株式会社め。



七日目


お風呂に入ってたら、ドアがギィィ…と開いた。


「魔王さん、入浴チェック☆」


勇者いた。全裸。泡まみれ。

「泡が鎧です☆」

鎧って言うな!ただの汚れだ!


しかも木の棒で背中をゴシゴシしてくる。

「サービスです☆」

サービスの方向性おかしい。

火球でお湯ごと蒸発させた。


湯船から☆マークが浮いてきた。

呪われてる気がする。



十五日目


勇者、会議中に乱入。


「はいっ! 今日の議題は“魔王軍の給食改善”です!」


誰が頼んだ。

「メニューはカレーライス☆」

お前、給食のおばさんか。


「ちなみにデザートはプリンです☆」

「魔界にプリンなんてねぇよ」

「今から作ります☆」


鍋を振って爆発。

会議室ごとプリンになった。

床、ぷるぷるしてる。

怒る気も失せた。



三十日目


寝ようとしたら、ベッドの下から声。

「魔王の寝相チェック~☆」


勇者、いた。しかもパジャマ。

「おそろいですよ☆」

知らんわ。誰が選んだその柄。

クマが木の棒持ってるデザイン、誰得だ。


「添い寝いいですか?」

「死ね」

「はーい☆」


言うなり倒れて本当に死んだ。

でも三分後、生き返った。

「おはようございます☆」

寝かせろォォォ!



四十五日目


勇者がまた神像を持ってきた。

「トイレにも設置完了☆」


いやなんでトイレ!?

用足してる時に後ろで光るな!

「清潔感、大事です☆」


お前の清潔感の定義おかしい。

神像、今日で32体目。

もうどこ行っても☆が光ってる。

目がチカチカする。助けて。



六十日目


朝食。

スープを飲もうとしたら、テーブルの下から勇者。


「スープ泥棒アターック☆」


お前、食い物のタイミングでしか出てこないな!?


「味が薄いですね☆」

「貴様のせいで涙で薄まってんだよ」


勇者、真顔でスプーンを持って言った。

「愛情を入れましょう☆」

スープに☆を浮かべるな!

油膜だよそれ!



八十日目


勇者が部屋を片付けてくれた。

「断捨離しました☆」


私の玉座がない。

「いらなそうだったので捨てました☆」


誰が判断した。王座を断捨離するな。

「代わりにトランポリン置きました☆」


飛び跳ねながら叫ぶ勇者。

「テンション上がる~☆」

私も試しに乗った。

悪くなかった。

でも負けた気がする。



九十日目


勇者、魔王軍の制服を勝手に改造。

胸にでっかく「☆YUSYA☆」の刺繍。


「これでチーム感アップ☆」

「いや勇者、お前敵だからな?」

「敵とか、そういう壁を壊していきましょう☆」


お前の頭の壁が壊れてるわ。

部下たちが無言で笑ってる。

あいつらもう慣れてやがる。



九十九日目


朝。

今日も勇者が来た。

でもいつもより静かだ。


「おはようございます……☆」


なんか優しい声。

どうした? と思ったら勇者が言った。


「今日で99日目です☆ 記念にこれを!」


差し出されたのは――手作りの「勇者と魔王の友情ノート」。

表紙にでっかく『まおうのともだち☆』


……開いたら、中身全部☆マーク。

文章ゼロ。意味ゼロ。努力ゼロ。


でも、笑ってしまった。

なんか、全部どうでもよくなった。


勇者「魔王さん、今日も元気そうですね☆」

魔王「おかげさまで☆」


あ、言っちゃった。

ついに私まで☆感染。

終わったな、世界。


……まぁいいか。

今日も平和だし、スープはうまいし、トイレも光ってる。

幸せって、たぶんこういうことなんだろう。


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