29話:真なる絶望!対決、スターシャドウ!!!!
……この闘いを最後に、私が、この世界から、消える……。
その言葉を聞いて、私はすぐにユニエの方を向いた。
ユニエもまた、私の顔を、愕然とした表情で見ている。
ユニエの顔を見た瞬間、反芻されるユニエとの繋がりの記憶。
その記憶たちが脳内で燃えていき、残った炎と黒い灰、そして煙が私の中に溜まっていく。
目の前が見えなくなり、涙が出そうだ。
私は振り向いてスターシャドウを睨む。
ヤツは『まあまあ』のジェスチャーをして、台詞を続けた。
「落ち着けと言っても難しいじゃろうが、落ち着け。冷静になれ」
「どの口が……!!!!」
「聞けと言うとる。よいか?さっきも言ったが、結果は同じじゃ。お前が勝とうが負けようが、な。だったら闘う理由なぞあるまい?」
! … …。
少しだけ、火照りが止まった。
「お前が闘いを嫌っているのは知っておる。この世界に召喚する前に、下調べはしておいたからな」
スターシャドウが、口の端を伸ばしながらゆっくりと歩み寄ってくる。
「お前が折れてくれれば。『ギブアップ』と言えば、終わる話じゃ。妾もお前も傷つかなくて済む」
スターシャドウは私の顔を覗き込むように首をかしげた。
「だから……なあ?」
……私は……
……目の端で、ユニエと、アーシを見て……
…怒りを少し収めてしまった事を、後悔した。
もう一度、戦闘態勢に入る。
スターシャドウは口をへの字にして問いかけた。
「おおーう……どうしてもやる、というのか?」
「お前には分かんないだろうけどねえ!!闘いってのは、結果だけじゃないんだよ!そうでしょ、ユニエ!アーシ!!」
「はい……はい!マト様!」
「あ、あーしも!?……ま、確かにそーだわな。打算で決闘はできねーっての!」
私の呼び掛けに2人が応えて、追い風が、心の煙を吹き流してくれるのを感じる。
「それに、お前をお嬢様プロレス界に残しちゃあ、ユニエがまた悲しむ羽目になるからねえ!!」
「………」
スターシャドウの顔半分から力が抜けてくる。
「誰か、ゴングを!」
「あ、はい!」
メイヤさんがハンマーを握ってゴングを鳴らす!
決闘開始だ!
まずは、右のエルボーから──
「あーめんどさいのうー!本当になあ~」
私の右エルボーは空を切り、勢い余ってよろけてしまった。
「「「ああっ!?」」」
見ていた人達も一斉に驚く。
何が、なにが起きた!?
避けられた!?いや違う、スターシャドウは動くどころか揺れる前触れも無かった!
文字通り、微動だにしていなかった!
まるで空気を相手のしたような……!
「さっき『万が一、妾に勝っても』という言い方をしたのは、単純な実力差の話ではない。そもそも闘いにならんから、そう言ったまでのことよ」
「くっ!」
さっきの現象をもう一度確認する為に、後ろ蹴りを放つ。
突き出した足には、やっぱり物体を蹴った感触が無い!
足の先は、どうなってんの!?
視ると、私の足が、スターシャドウを貫通している!?!?
「確認は済んだかな?」
スターシャドウは答えを聞くより早く、貫通した脚のふくらはぎを両手で掴み、ねじりあげる。
私の身体が、捻り倒された。
「……他者の身体に憑依するには、『肉』が、邪魔になる。と、悪魔は言うとった」
スターシャドウが、また語りだした。
「だから悪魔は、妾の魂を『肉』から切り離し、魔力と融合させたのじゃ」
「……肉を持たない身体……!?」
「そう、そうじゃ!魔導師ですら、魔力に直線触れることはできない!せいぜいが杖と呪文でほんの少し操作できる程度!」
そんな、それじゃ……!
「お前は霧や雲を殴れるかの!?中山田マトぉ!!!」
スターシャドウはそう叫んで、トーキックを私の腹に刺す。
「うぐ、え」
「マト様!」
「てか、おかしーんですけどぉ!?なんでオメーからは攻撃できんだし!」
「そんな事、『そういうもの』としか言えんのう!カッカカカ!!!」
アーシの抗議をスターシャドウは鼻で笑い、また蹴りを入れてきた。
蹴りからは重みをしっかりと感じられる、でもその重みから敵の肉体を解析することができない。
おぞましい感覚が、改めて伝わってくるだけだ。
「一方的に殴られるだけなんて、こんなの、本当に試合にならないじゃないですか!」
「今更文句を垂れるな!ゴングを鳴らしたのは中山田マトじゃろうが!」
く、くそお……!
こんなイカサマ野郎、どうやって…!
「どうやって勝てって言うんだよー!!」




