27話:女王玉座固め!そして現れる『真実』!
「マト様ーーーーーーッ!!!!」
ユニエの声だ。
私の動きに対する観衆の罵声の中でも、不思議と聞き分けられた。
……そうだ、ユニエは恐怖を乗り越えて、私の為に闘ってくれたんじゃないか。
忘れそうになっていた。
ユニエの勇気に、私が答えなくっちゃ!!
私も、私だって、恐怖を乗り越えてみせる!!!!!
「っしゃおらァ!!」
私は吠えて、立つ。
それを見て、ソヴェラはニイと笑った。
「それでいい。勝利は劇的なものでなくてはな……!さあ、来……!!」
言われるまでもないっ!
私は姿勢低く、キュッと一歩で間合いを詰めた。
そして、詰めた勢いを利用しながら、拳を、アゴへ、ぶちあてる!!
『ああーっと!マト、アッパーカットだ~~!!言うまでもなく、プロレスでパンチは反則です!おそらく先ほどの、ソヴェラの首絞めの反則に対する『お返し』と思われます!それにしても迷いがない!思いきりのいいパンチでした!』
「んグウッ!!」
ソヴェラが前蹴りで反撃してくる!
けど、見える!
恐怖を呑みこんだ今なら見えるぞ!!
前蹴りを両手で掴んでっ!
腋にガッチリ挟んでっっ!
自分の身体を大きく回りながら倒れる!
そうすれば相手の足首を強く捻って大ダメージだ!!
『マト、ソヴェラの足を捕らえてドラゴン・スクリュー!!』
「んぐぐぅ!」
倒れたソヴェラはすぐに立とうとしている。
させるかーっ!!
『マト、飛び起きると同時にエルボー・ドロップ!ソヴェラの腹部に深々と突き刺さるー!!』
ワッと歓声が響き、私の心にも勢いがつく。
仰向けのソヴェラの足側に立ち、ソヴェラの太腿を、私の手で頭側に向ける!
『あーっと!?マト、はやくも『エビ固め』!?抑え込んでのスリーカウントに……い、いや!!』
私はソヴェラの太腿を巻き込みながら、背中を掴んで持ち上げた!
そして!そのままァ!
軽く前へ飛び出しながら!!
投げ叩きつける!!!
『うおーっ!なんという強引な投げ!『変形飛び込み式パワーボム』とでも、はたまた『マト式パワーボム』とでも言いましょうか!』
よし!追撃決まった!
「さあマト、投げたあとの体勢のまま、今度こそ抑え込みにいった!」
しかしソヴェラの足が私の首を挟み、捻り倒され、逃げられてしまう。
やはり抵抗する体力はまだ残っているみたいだ、クソッ!
そしてまたソヴェラの足が、うつ伏せに倒れた私のアゴ下に絡む。
ソヴェラは私の背に乗り、片脚を曲げ、両脚でアゴを締め付ける!
脚がちょうど4の数字のような形になるこの技は、『首4の字固め』…!まずい!
けど、それだけじゃなかった!
ソヴェラは、のけ反って私の両足を両手で掴み、のけ反りを戻しながら肩へと持っていく!
形はだいぶ違うが、『逆エビ固め(ボストン・クラブ)』だ!
つまり……『逆エビ固め』と『首4の字固め』の両立ぅ!?
『あーーーーっとぉーーー!!ここでソヴェラのオリジナル・フェイバリット、『女王玉座固め』だーーーっ!!!』
場内の興奮が大きく高まっていく。
『フェイバリット』とは、『得意技』の意味合いもあるけど、この場合『逆転勝利の一手』という意味が正しい、きっと。
つまり、この技で試合を終わらせる。
そのつもりなんだろう。
「3カウント!ワン!ツー……!」
「マト様っ!勝ってーーーーーっ!!」
普通は、そのつもりで、やるものなんだろう。
でも、この技は、やっぱり掛け方が、甘い!!
私は両脚をソヴェラの肩から無理矢理離し、ソヴェラのアゴ下を挟み返した。
そしてそのまま脚を降ろし、ソヴェラの頭をマットに叩きつけるように落とす!
更に、空いてる手でソヴェラの両脚をアゴから剥がし、腋にガッチリと挟む!
『マトッ!あの女王玉座固めを返しています!こ、この技は……!!』
この技は……『ウラカン・ラナ』だーーーーっ!!!!!
『3カウント!ワン!ツー……!』
『……スリーッ!!」
激しくゴングを叩く音が鳴り、どこから用意してたのか、紙テープ代わりの
花びらを観客の貴族たちがまき散らして騒ぐ。
『……なんと!なぁんと!マト、遂に国内最強のソヴェラを、そして、アレグリッター姉妹全員を打倒し、新チャンピオンの座に着きましたーーーーーッ!!!!!彗星のごとく突然に現れ、その激しい勢いのまま!ついに!頂点へーーー!!」
言語に変換できないような歓喜と困惑の悲鳴が反響し、逆に静かなくらいだ。
メイヤさんは実況を終えると、息を切らしながらリング端まで来て、様子をメモしているようだ。
最前列で観戦していたレイデとララフェイドは放心して、イスの上を尻で滑っている。
アーシは、こちらをグッと見て頷いたあと、ソヴェラに声をかけるためか、リング端まで近づく。
ユニエは、こちらに向かって笑顔で走ってきてくれてる。
「ああ!ついに!ついに……!望んでいました!信じていました!」
震える声でそう言って、リングに登ろうとした。
だから、私はユニエに掌を向けて、止めた。
「マト様……?」
「まだ終わってない」
「え?」
「出てきなよ!ここまで、予定通りだったんだろう!?」
私は、気を失ったかのように倒れていたソヴェラに一喝した。
「…………ああ、めんどくさいのう~……」
ソヴェラのいる位置から、声が聞こえた。
しかし、その声はソヴェラの声とは違った。
瞬間、毒々しい色の霧が、どこからともなく現れた。
霧はリング周辺を包み、景色が分断される。
突然、ドンドンと、『霧を叩く』音が聞こえてきた。
それ以外に、霧の外からは何も聞こえない。
どうやらこの霧は、視界だけじゃなく音や物まで遮るらしい。
霧に、閉じ込められてしまったようだ。
霧の内側には、私とソヴェラ、メイヤさん、アーシ、そしてユニエだけが残っている。
みんな、何が起きたのか分からないという顔で固まっている。
そしてソヴェラの身体から、煙のような、光のような、『何か』が浮き出てきた。
私がソヴェラの内側に感じていた、強烈に恐ろしい『何か』。
それは、きっとここまでのすべての謎の元凶。
ついに正体を現したんだ。
「お前は何者なんだ!!名乗れ!!」
『何か』は、人の形になって、私の怒声に応える。
「妾は……『スターシャドウ』……そう呼ばれていた」
全てが、きっとこれから、明かされる。




