23話:「私達」の闘い
勝利の興奮が冷めやらぬ場内。
私はリングから降りて、ユニエに歩み寄った。
「ユニエ」
「マト様、鼻血が」
「えっ、うわ結構ドバドバ出てた」
「お拭きいたします」
ユニエがハンカチを出す。
「自分でやるよこのくらいー」
「いいえ拭かせてください!私の為に汚れてくれたのですから!」
「べ、別にユニエの為だけじゃないし……」
「えっ、でも先程は『まかせて!』と……」
「いやそれは、その、ええと……ユニエにもっと甘えたかったから、やったんだよ」
「ええ??」
「いや、なんと言ったらいいのか、その」
しどろもどろになっていると、後ろから声がした。
「マトさんはユニエを頼っているのですよ」
「フォスタ夫人」
「お母様」
「それほどに、マトさんの中で『ユニエの優しさ』は、心強いものだったという事です。優しさと嫉妬の葛藤という、ユニエの孤独な闘いは、決して無駄ではなかったのですよ」
「私の、闘い……」
「母も、これからは一緒に闘わせてね、ユニエ」
ユニエは私の鼻血を拭いたタオルで自分の眼を拭ってから、私に言った。
「マト様。これからは、私も一緒です」
「え?」
「一緒に、闘わせてください。傷つかせてください。それならきっと、マト様も怖くなくなると思うんです」
「……今みたいに?」
ユニエがハッとして、私とユニエ自身を交互に見る。
どうやら、自分がボロボロの大怪我状態なのを忘れていたみたいだ。
「ふ、うふふふふ……」
「あ、ユニエのその顔、初めて見たかも」
「そうでしたか?」
「そうだよ」
「ふふふ……」
「へへへへ……」
私とユニエが笑い、それを見た夫人もにこやかにしている。
と、そこに割って入る声があった。
「なに笑ってんだ……」
「アーシ……?」
アーシだ。
その表情は困惑のような怒りのような羨望のような、そんなカンジだった。
「お前らなに笑ってんだって聞いてんだし!次の相手はソヴェラ姉様だぞ!?国内最強!レイデ姉様だってソヴェラ姉様には一切逆らおうとしなかった!ただの一度だって!」
アーシの顔がますます歪み、肩で息をしている。
「勝てる自信でもあんの!?それともレイデ姉様に殴られすぎて頭イカレたの!?」
「自信があるかって言われたら……わかんないよ」
「だったら!」
「でもさ、願っちゃったから。……変えたい、変わりたいって」
「! … …! ………!!! 意味わかんねえしっ!!」
アーシは顔をひくつかせたまま去っていった。
そう、アレグリッター姉妹は、まだ1人残っている。
ソヴェラ……待ってろ!
お前たちの非道がまかり通る貴族社会、私達が変えてやる!




