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14話:高い所の物を取るにはどうすればいいですか?

 ララフェイドとの決闘、当日。


『決戦の第2局、ついに始まろうとしております。ここファータイル市民体育館はこれより、お嬢様戦士の闘技場(バトル・フィールド)となって、我々を熱狂へと誘ってくれることでしょう!!』


 メイヤさんのアナウンスが控室の私達にまで聞こえてくる。


 練習はそれなりに真面目にやってきたつもりだ。

 ユニエに(たしな)められる事も多々あったけど。


 (今日は休みにしない?)

 (ダメです!)

 なんて問答は何回したことか。


 問題は自分のやる気だ。

 この闘いは、その先の勝利は、もはや自分のためだけのモノじゃない。

 分かっているのに、心のどこかで未だにプロレスを拒否してる自分がいる。


 自分の顔を軽くピシャッと打ち、気合いを入れるフリをする。

 が、やはり自分は騙せない。



 周囲を見回すと、ティーポットとカップが置いてある。

 そういえば緊張からか、喉が乾いていたところだ。

 ありがたい。


 私がポットに手をかけようとした時


「待って!待ってください!」


 ユニエが大声で止めてきた。


「お水はこちらでご用意してあります、こちらをお飲みください」


「えっいや、なんで水筒持ってるのさ~。毒でも入れられてるっていうの~?」


「……」


 ユニエの過剰な用意を茶化(ちゃか)して笑うつもりが、肯定にしかならない沈黙で返され、凍ってしまった。


「これはただの試合ではありません。プロレス強者、いえお嬢様としての威厳、体面(たいめん)、面目、名誉を賭けた決闘なんです。なりふり構わぬ者が出てくるのもおかしな話では無い、と。それに相手は、ララフェイド様です」


「もう悪役じゃなくてマジの『悪』じゃん……」


 そこまでの価値があるのか、プロレスに。

 あっていいものなのか……!


 ユニエから水を受け取り、不安と不満を胃の中に押し込めるようにグビグビと飲み干す。



 衣装は結局、例のニワトリみたいなやつだ。

 ご丁寧にリングに上がる前に羽織るマントまである。

 金の刺繍が入った赤いマント。

 嫌いじゃない。


「マト様、今回もセコンドとして上がらせて頂きます」


「……本当にありがとうね、ユニエ」


「気にしないでください」




「マトお嬢様、入場5分前です」


 スタッフの人がドア越しに声をかけてきた。

 お嬢様、か。

 そう、これは私がお嬢様になるための試練なんだよね。


「行きましょう!」


「おう!」




 ドヨドヨドヨドヨドヨドヨ……。


 会場は決して狭くはない。

 だのに、人でごった返している。

 観客は貴族だけかと思いきや、平民、それも富裕層ですらなさそうな人達のための立ち見席まである。


 上から下までプロレス国家。

 父さんがいたら泣いて喜んだろうな。


『それでは、選手入場!!』


 重低音の響くスピーカー(そういえば電源はどこにあるんだろうか)から、ゴリゴリのメタルな曲が鳴り、どよめいていた観客がワッと盛り上がってくる。


『赤コーナー。現代最強の家名、アレグリッター家が三女。美麗なる身のこなしと、獰猛なる気性をあわせ持つ『ビューティフル・デンジャー』!ララフェイド・アレグリッター!!!』


 ウワアアアア!!と歓声が鳴り、ララフェイドが登場。

 その背後には、爽やか系イケメン執事が構えている。

 全身を黒と、アクセントの白で統一したようなコーデだ。

 黒地に白のユリの花がプリントされたマスクを付けている。

 華やかだけど、どことなく悪役感が滲み出ているのはなぜだろう。



『青コーナー、アレグリッター家のアーシ嬢を倒し、その実力を表明した令嬢!いまだ謎の多い彼女ははたして神か悪魔かはたまたタダの無鉄砲か!?マトー!!!!!』



 ギラギラの照明を浴びて花道を歩く私。


 両肩を上げてマントを脱ぐと、またも歓声が響く。

 この瞬間だけは、嫌いじゃない。


 私とララフェイドが花道の先に止まり、睨みあう。

 ララフェイドの目は笑っている。

 いや、嗤っているというべきか。



 魔導師たちが会場の中央で呪文を唱えると、魔方陣が浮かびあがり、陣の輪からプロレスのリングがズゴゴゴとせりあがってくる。

 魔導師たちがリングを出し終えて一息つくと、突然リングの中央がビカビカと光だした!



 私は突然の発光を腕で防ぎつつ、光の先を見る。

 輝きは1つの丸になってリングの中央からそのままゆっくりと浮遊し、5メートル程の高さで止まった。

 そしてだんだんと光が収まり、その正体が分かった。


 ……ティアラだ。

 あの、西洋貴族もののマンガとかで、王女様とかが着けてる頭飾り。

 つまりお嬢様のためのアクセサリー。


 うーん、きれいだ。


 じゃなくて!

 なんで突然リングから!?

 どうやって浮いてるの!?

 わからない!この世界まったくわからない!



「おお……ティアラが出現するとは珍しい」


 魔導師の1人が若干嬉しそうに語る。


「ティアラ争奪戦」


「ティアラ争奪戦だ」


「スゲーですわ、生で見るの初めてですわ、ティアラ争奪戦」


 観客が口々にそう溢す。


『おおーっと!これは予想外の展開!この試合はリングのお告げにより、たった今『ティアラ争奪戦』ルールを適用します!!!』


 メイヤさんのアナウンスで歓喜の声と指笛が騒ぐ。


 ティアラ争奪戦。

 単語だけでだいたい想像はつく。

 つまり今、リング空中に浮かんでるティアラを先にとった方が勝ちというルールなんだろう。


 問題は……。



「アレ、どうやって取るのさ?魔法でも使って空飛べっての?」


 つい心の声が口から出てしまった。


「はぁン、カス貴族様はまったくしょうがねぇなァ……」


 ララフェイドが嘲笑してきた。


「私、魔法なんて……」


「あたんめーだろ、魔法なんて魔導師でなきゃそうそう使えるものかよォ……随分(ずいぶん)と常識しらずだなあオイぃ?」


「じゃ、じゃあ結局どうやって取るのさ!!」


 私の質問に対し、ララフェイドは自慢げな表情をしながらリング下に潜り込み、『あるモノ』を取り出して答えた。



「『コイツ』を使うのさァ!!!」


 ララフェイドが取り出したのは……!





 脚立。




 …………あーうん、そう、そうだよね。


 高いところのモノ取るなら普通は脚立使うよね、ウン……。




 なんか、なんかよく分かんないけど、すごく不条理なナニかを感じるっ……!!!

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