048(閑話・三人称視点)夜更けの密談
少しは三人称視点も書かないと書き方を忘れちゃうから思いつきで書いた。設定の復習といった感じで本筋には関係ないので、読み飛ばしてOKです。
エスパルダ王国第三の人口を持つ、迷宮都市リンゲック。
この町でもっとも豪華、かつ守りが万全な建物は、言うまでもなく領主フェルスター辺境伯の城である。面積に限りがある城塞都市ゆえ規模こそ小さいものの、その堅牢なることはつとに名高い。
当然、フィリップ王子らはここに宿泊している。現領主とは昵懇の仲なので尚更であろう。
さて、幼き王女と王子が眠りについた頃。
城内の一室に、フィリップ王子とその側近、および領主親子らが集まっていた……
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「まず一廉の人物といってよいかと。母親であるジュリア様との人脈も含めて、味方につけなくてはなりません」
そう語るのは、アニス王女の教育係を務める美貌の魔法使い、ジョゼット・フォン・メリロー。家督は既に息子が継いでいるため先代のという断りがつくが、子爵夫人でもある。
「貴女に屈せぬとは、たいした胆力ですな」
「若さゆえの向こう見ずでなければよいが。そこはどう見ましたか、ジョゼット様」
近侍らが問う。
「その辺りが分からぬほど無知とは見えませんでしたね。また、打算で行動していたとも思えません」
これを聞き、フィリップ王子は深く頷いた。
「ふむ。となると、いかにして誘うかだが……なにか良い思案はあるかな、ジョゼット」
「金銭や地位になびくとは思えませんね。まだ若いこともありますが、それ以上に根っからの武芸者気質で、世俗的な富や成り上がりにはあまり関心がないようです」
「それは私も思った。金子で釣れれば楽なのだが、そう甘くはないか」
彼らの議題は、彗星のごとく現れた若き英傑、次代の勇者――少なくとも世間はそう見ている――ヒデトを、いかにして自陣営に取り込むか、ということであった。
冒険者ごときに、と思うかもしれないが、それは早計である。
この職業は、強さや功績によって世間の目に天地の差があり、一人でドラゴンを討ち果たす豪傑ともなれば、その影響力は侮れぬものがあった。概して民衆とは若き勇士に喝采を贈るものだ。
ましてヒデトは、現国王を救った武勲ゆえに貴族からも英雄視される「桜花の剣士」こと勇者ジュリアの息子である。彼が味方となれば、母もそれに続く可能性は低くない。
「あれほどの英雄が味方するなら立派な人なんだろう。それなら自分もその人につこう」
そうやって、一人を取り込めば十人、百人と味方が増えてゆく。勇者の真の力は、個人の武勇よりむしろこの求心力にこそあった。
しばしの沈黙が流れ、ジョゼットと近侍らの言葉がそれを破る。
「思うに、彼を引き込む鍵は女性ですね。といっても、性的な意味ではありません」
「と、仰いますと?」
「どうも、彼は女手ひとつで育てられたせいか、年長の女性に頭が上がらないところがあるようです」
「その女性を味方にせよと」
「はい。この町で該当するのは、冒険者ギルドのマスターであるエレナ先輩、定宿の女将のエマさん、南地区の教会を統括するマノン様、そして冒険者仲間のカルロッタ嬢と見ました」
再度フィリップ王子が頷く。
「マノン様……たしか二十年ほど前、異民族との戦で名誉の死を遂げられた男爵のご夫人であったな」
「ええ。今は義弟さんに家督を譲って信仰に生きておられますが、実家や教会を支援すれば心を寄せてくれましょう」
先代と現領主も心当たりはあるようだ。
「エレナ様は問題ないでしょう。ジョゼット様はもちろん、私とも長い付き合いですし」
「エマさんは、ジュリア様とはいわゆるママ友らしいな。それに、ヒデト君と親しいリーズ嬢のお母様でもあるし、お忍びで直に伺ってみましょう」
近侍らはというと。
「カルロッタ嬢……実況をしていた少女か。彼女はよく分からん。ジョゼット様、何かご存じで?」
「冒険者ギルドの職員に聞いたところ、ギルドに結構な額を預金しているそうです。何か事情があるのかもしれませんね。ランテルナの生まれだそうですし、その辺を探ってみるのがよいかと」
おおよその方針が決まった。フィリップ王子がぽん、と軽く手を叩いてまとめに入る。
「よし。訪問の準備は明日以降として、今夜はもう休むとしよう。まずは対抗戦に集中しないとな」
「いかにも」
「他にも、恃みとなる人物がいてほしいものですな」
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ロッタは、力を持つ者は、それを利用しようとする者が近づいてくるのは避けられないと言っていた。
そして彼女の予想どおり、ヒデトの知らぬところで王位をめぐる戦いは進行していたのである。
フィリップ「在野武将を登用しよう」
▷ヒデト
▷金
名馬
手紙
三顧の礼
ジョゼット「そんな事では彼は動きません」
アニス「美女! 美女を贈りましょう! ぐへへ」
ジョゼット「姫様、それは古いPC版だけです。ちなみに2でもPS版では魅力上がるアイテムが美女から装飾品に変更されてますよ」
アニス「ええ……」
ジョゼット「そもそも姫様、他にやる事はないのですか」
アニス「あうう」




