7. 判明
〈アーティファクト〉……それはダンジョンで生成される、宝箱及び魔物を倒すことで稀に獲得できる、現代では再現不可能な道具や武器のこと。
その数多く存在するアーティファクトの内、最も有名で、最も求められる鑑定のアーティファクト。それを自慢げに見せつける母に問う。
「適正属性?」
「適正属性っていうのはね〜……まず、人には元々使える属性と使えない属性があるの。その使える属性の中でも、更に得意な属性なんてものもあるわ。そして、それが分かるのが、このアーティファクトってわけ!」
ニコニコとした笑顔から、真面目な顔に切り替え説明したと思えば、また笑顔に戻る母。
「…………あの、使える属性なら、そのアーティファクトを使わなくても、全属性試してみれば分かる、のでは?」
小さく挙手しながら、少し考えてみれば誰もが思う疑問をロアが投げかける。
「うん。確かに、全属性試してみれば、使える属性、使えない属性が分かるわ。……でも、使えない属性、言ってしまえば才能の無い属性を無理に使おうと試したらどうなると思う?…………それはね、無理に使おうとすればするほど、魔力が乱れて魔力暴走が起こるの。その暴走の中、正常に練られない魔力が暴発し、周囲に甚大な被害を及ぼすわ。それに最悪の場合、魔力暴走を起こした人は魔力が伝達する回路、所謂魔力回路が傷ついて、一生魔法が使えなくなる……なんて事もあるわ。だからこれまで、魔力の使い方とか技術は教えても、属性魔法は教えてこなかったでしょ?」
「……へ〜そうだったんだー」
いや、そうだったのっ?? あっぶな!……でも使えない属性って何なんだろう? 波長を変えればいいだけだから、使えない属性なんて無いと思うけど………もしかしてこれって――――
「なんか脅しちゃったみたいになったけど、適正属性が分かればなんの心配もないわ!」
少し重くなった空気を切り替える様に、母は水晶玉の様なアーティファクトを丸テーブルの中央に置いて説明を始める。
「鑑定ができるアーティファクトは形関係無く、魂写鏡と呼ばれるわ。と言ってもその殆どが、これみたいに水晶玉の形をしているけどね。でも中には眼鏡の形をした――」
「そうなんだ。でも今は早く鑑定しない?形は見た感じ、魔力量を測るのと同じみたいだけど……」
話を途中で遮るのは申し訳ないけど、こうでもしないといつ鑑定できるか分からないぐらい長引くことを俺は知っている。何より早く試してみたい!
「わ、分かったわ!つい教えたくなっちゃうのよ。……じゃあ早速鑑定の仕方なんだけど……ドアの言う様に魔力量を測るアーティファクトと同じで、ただ魔力を込めればいいだけよ。……でも水晶玉の中に小さい玉が六つ有るのが見える?」
水晶玉を覗くと、確かに小さくこれまた水晶玉の様な玉が六つ有るのが見える。
「……その六つの玉は火・水・土・風、そして光と闇の各属性を担っていて、魔力を込めたら、適性のある属性の玉が光るわ。火属性だったら赤く、水属性だったら青く、みたいにね。……まぁ、やってみましょうか。…………どっちからやってみる?」
俺とロア、二人して見合う。どちらが先に鑑定するのか、後に鑑定したそうなのはどちらなのか、その駆け引きをアイコンタクトだけで行う。そんな膠着を破り、先陣を切ったのはロアだ。
「で、では私から……」
おずおずと立ち上がり、どこか緊張した面持ちで、ロアが水晶玉に手をかざす。緊張や期待、そういった雑念を体外に排出する様に、ふぅーと息を吐き集中し、魔力が高まっていくのを隣で感じる。
――――すると、まだ昼前の明るい部屋を更に強い一つの光が部屋を照らす。その色は――
これは――――紫?
「この黒紫は……どうやらロアは闇属性に適性があるみたいね!」
「…………そう……ですか。」
ロアが少しの沈黙の後、絞り出すように答える。
闇属性は光属性と同じく、適性のある人間種はとても珍しく、貴重。だが、ロアが昔から好きな御伽噺の中で、人類の敵として現れる魔族は、総じて闇属性を使うことが多い。その為、魔族=闇属性、黒色等といったイメージが人々に浸透していて、闇属性の印象はあまり良くない。何より、そんな魔族を倒す御伽噺が大好きなロア自身がそれを望んでいなかった。
「じゃ、じゃあ次。次はドア、やっていいわよ。」
無言で頷き、ゆっくりと水晶玉に手をかざし、魔力を込める。
……とその前に、波長の調整をしてっと……よし!まずは――
――――すると、ロアの時と同様に一色の強い光が部屋を明るく照らす。
「凄い!こんなに濃い青色は初めて見たわ!」
――よし。まずは成功。そしてさっき見た――――
魔力の波長をついさっき見たものに変化させ、更にアーティファクトに魔力を注ぎ込む。
「えっ?!二つ目? ……そっか…………いえ、これは――――」
――魔力を込めるのを止め、光が収まるのと同時に、ふぅーーと長く息を吐き、集中を解く。
――――やっぱりだ!
属性とは魔力の波長の変化でしかないんだ。このアーティファクトはその波長を読み取っているのだろう。そして俺は、生まれつき魔力の波長を感じ、変化させることが出来る。それはつまり――――
――全属性を使える。それに、母の驚き方を見れば、二属性でもかなり珍しいみたいだし、全属性となれば――――――この事は隠していた方が良さそうだな。それに力を隠す系主人公なんて大好物だし、本当は冒険者になってからやろうと思ったけど、これはこれでいいか!いや〜本当の力を見せた時の反応が楽しみだ〜!
「ドアは水属性と闇属性の二重属性だわ。 赤ちゃんの頃から魔力が沢山あったから、凄くなるとは思ってたけど……」
「やっぱり二属性って珍しいの?」
内心、とても珍しいことを確信しながら尋ねてみる。
「いえ、それはあまり珍しくないわ。」
「えっ?!そうなの?!!」
思わず大きい声が出てしまった。
この世界、二属性持ち珍しくないの?!大体珍しくない?……あっやばい。さっきドヤ顔してたのめっちゃ恥ずかしくなってきた。
「人の多い順に四重属性その次に三重属性そして次が二重属性だから、確かに多くはないけど……珍しいとは言えないわね。」
まじか、この世界。もしかして全員転生者か?……あれ、でもそういえば――
「でもさっき、凄いって言ってなかった?」
「あ〜それは、二重属性のことじゃないわ。……先ず、基本的に属性魔法というのは、適性のある属性が少ない程、強力な魔法が使えるようになるの。それに、適性属性が多くなればなるほど、一属性の適性も弱くなるのよ。……そのはずなんだけど……ドアの場合は、水属性・闇属性の二つとも同じ適性で、しかも単属性と変わらない強さ、なのが凄いのよ。……凄いというか、初めて見たわ。」
へ〜、この世界ってそういう感じなのか。
待てよ?もしかして、全属性を完全な適性で使える俺はめちゃくちゃチートなのでは?
「すごいです!おにいさまっ!」
さっきまで自分の適性が闇属性しかないことに落ち込んでいたロアが、いつの間にか元気を取り戻した明るい声色で褒めてくれる。
「ありがとう。……母さん、この後はどうするの?」
「…………そうねぇ。私が使えるのは水属性と、少しだけの光属性だから、闇属性のことは深く教えてあげられないわ。……(少し遠いけど都市に行って魔導書を買う?でも、歩いていくとなると)……あっ!そうだわ!明日の朝、クエストで冒険者が来るのよ!都市までの道中、護衛して貰えるか聞いてみましょうか!」
単属性のルビ変更
アリア→ソロ
アリアという響きがかっこよすぎて使いたかったけれど、ソロにしました。
そもそも、よく考えたらデュオとかださい気がしてきました。でも、アリアは使いたいのでこのままにします。そして、そのアリアは今後より特別な存在として出せる様に頑張ります。




