5. 現状
場所は帰らずの森の中。恐ろしげな呼び名とは裏腹に、森の澄んだ空気と思わずお昼寝したくなる暖かな心地好い空間が広がっている。
「いい天気だな〜」
自然に囲まれ、心地好い風に吹かれながら目的地を目指し歩を進める。一見すれば穏やかな雰囲気だが、人は殆ど入ってこない。
その理由は、呼び名の通り、森の奥まで進んで帰って来た者が一人も居ないからだ。その為、人々はこの森を恐れ、近寄らなくなった。
それでもこの森に入り、行方不明になる者は年に数人は居る。何故なら森の中は魔力が満ちていて、滅多に手に入らない薬草や貴重な魔物が生息している事等が推測されているからだ。
「おっ、あそこめっちゃ魔草生えてる!」
村の住人でさえ、見回りの時や村の特産品ともなっている魔草採取の時以外は近寄らない。その為、人目につかず、大量の魔力を隠し持っている俺にとって、魔法のコソ練をするにもっていこいの場所となっている。
――――15分ほど歩いて行くと、森にぽっかりと穴が空いた空間が広がる。2年前、ここを見つけてからというもの、魔法や剣の修行はここでするようになった。
帰らずの森なんて呼ばれているけれど、全部が全部危険な訳ではなく森の深くまで行かなければ、何も問題は無い。
問題の所は、もう少し奥にある第二の柵を超えた辺りからだ。そこから先に行こうとすれば、原因不明の意識障害、思考能力の低下、方向感覚の喪失といったレパートリーに富んだデバフに襲われることになる。
それらに対しては、体内で全身に大量の魔力を練ることで抵抗できる。でも、それに抵抗し続けるには膨大な魔力が必須。
抵抗する為の魔力量だけなら、今の俺でも問題は無い。だけど、この森は魔力濃度が高いのもあり、強力な魔物もうじゃうじゃ居るらしく、それらを倒す為の魔力も温存しなければならない。それらを考えると、今のままでは奥へ進むのは厳しい。
そんな、目の前にある未知をとことん楽しむ為にも、俺は強くなりたい。それに、大切なものを奪われない様にする為には強くなければならない。
「始めるか…………」
…………と言っても、何もしない。俺は常に魔力を0にしている為、自然に魔力が回復するのを待つしかない。魔力を回復する手段は魔力ポーションなどあるが、今は飲まない。その理由は――
「めちゃくちゃ早くなってる!」
そう、魔力の自然回復速度を確認する為だ。数年前から常に魔力を0にしている恩恵か、魔力量だけでなく自然回復速度をも向上している。
「自然回復速度は分かったから、あとは総量だな」
魔力をいち早く満たす為、ここに来る道中で採取した魔草を取り出す。魔草とは、この森でしか採取できない、高品質な魔力回復ポーションを作るのに欠かせない薬草のことだ。
「おっ、これが一番甘いな」
魔力を回復させる為、水魔法で洗ってもしゃもしゃ食べる。魔草は、草自体に魔力が蓄えられているだけでなく、自然回復速度をも向上させる為、効能は落ちるが、そのまま食べても十分効果を得られる。
――――――10分後、魔力が体中に満ちるのを確認する。膨大な魔力を一気に得たことによる全能の感覚と高揚を理性で抑えつつ、体の調子を全身隈なく確かめていく。
「俺、強いんじゃね?…………いや、待て。俺は村の人間とたまに採取クエストで来る冒険者、年1で来る王都からの魔力量調査隊員しか知らない。」
そうだ。自分を強いだなんて思うな。満足したらそこで終わりなんだ。……もっとだ。もっと強くならないと……
「魔力制御も段々慣れてきたし、最大魔力量調べるか」
保有する魔力の総量がいくら増えても、一魔法に込められる魔力量も増えなければ、瞬間火力は変わらない。その瞬間的な火力を高める為に、一度に込められる最大魔力量を高めていく必要がある。
魔法はなんでもいいけど、何にしようかな? まぁ無難で大きさも分かりやすい――
「水球」
手を天に向け行使するは、水球……その魔法はこの世界で初めて使った魔法であり、あの頃はボーリング玉サイズだったのが、今となっては直径3mを優に超える。
「まだまだ大きくできるけど、この辺で消さないと流石にまずいか。なんか元気玉みたいになっちゃってるし……あれ?この発言の方がまずかったりする?」
すくすく育った水球を、ただの魔力へと変換し、自身の体内に還元する。この能力は、家の中でこっそり魔法の練習をしていたのが要因か、気がついたら出来るようになっていた。
よし、次は――――――
▲△▲△▲
「大体分かったし、いつも通り魔力0にしますか」
常に魔力を0にするそれはつまり、常に魔法を使っているということ。急成長し続ける魔力量を0に維持するにはその魔力量に合った強大な魔法や、魔法を複数同時展開する技量が求められる。
そして俺が常に使っている魔法の1つは、魔力障壁……これは文字通り、全身に纏った魔力の壁であり、鎧の様なもの。実際の鎧と違い、形を自由に変えられる為、関節の防御にも隙はない。その障壁を常に5枚纏っている。だがこれでも3割程しか使えないし、使わない。
「同じ3割でも全然違うな〜。これならもっと枚数増やせそう……でも、1枚1枚の堅さを高める方が良いのか?……悩ましいな」
まぁそれは追々考えるとして、次は漆黒剣使うか。
おもむろにベルトを外し手に持つと、さっきまでベルトだった物が、瞬く間に一振りの剣へと形を変える。
漆黒剣は俺のオリジナルだ。剣を構成する柄から刃まで全て俺の魔力で作られている。まぁ、刃は無いけど。
このオリジナル魔法に残りの7割の内の6割を使っている。何であれ魔法を維持するのには、ただ魔法を使うよりも遥かに多くの魔力を消耗する。その維持する魔法の魔力量が多ければ多いほど、維持するのに必要な魔力量も多くなる。
「うわ、結構減っちゃってるな」
常に魔力を練り、強化しているけれど、先程までの魔力を練られていない間にだいぶ、漆黒剣の魔力量が減ってしまっていた。
まぁ魔力総量も増えたし、これぐらいはすぐに元に戻せるか……。
魔力消耗が激しいこの魔法だが、それに見合った魅力が3つほどある。その1つは、全部が魔力でできているので当たり前だが、魔力伝導率が100%であること。
2つ目は、水球を消した際に用いた自身の魔法を魔力へと還元する能力によって、漆黒剣に込められた魔力を吸収し、何時でも魔力を回復できるということ。これは、常に魔力を0にしている俺にとってかなり重要な力だ。
3つ目は、かっこいいから!!うん、これが一番重要だよね!普段は決して抜かない二振り目の剣。だが本気になった時のみ抜かれるその漆黒の剣は全てを切り裂き、無に返す……うん、めっちゃかっこいい。
そして総魔力量の残りの1割は――――
「探知」
円上に微細な魔力を飛ばし、周囲に潜む魔物や敵を探知する魔法。俺はこれを大きな円と小さな円、この2種類の探知魔法を常に使っている。大きな円、つまり遠距離は大まかに探知するだけで、小さい円、近距離は精密に……………って遠くに魔物の反応?!
「いや、人か? 1匹だけみたいだけど」
人であれ、魔物であれ見つかるわけにはいかない。とはいえ、魔物であれば見てみたいし、ゴブリンなら厄介だからな。幸い、魔力量も少ないからそんなに強くはないだろ。
「よしっ、行ってみるか!」
質問や矛盾などあれば、なんでも言ってください!(答えられるとは言ってない)
それと、自分の作品……おもしろいですか??
一言でも感想くれたらめちゃくちゃ嬉しいです!
あっ、漆黒剣のネーミングがダサいとかは無しでお願いします。ちなみに主人公がそういうネーミングセンスというだけで自分は違います……はい。




