16. 日没の拒絶
めっちゃ遅れてすみません!
……でも!今回はいつもの(さぼり)じゃないです!!
なんと!ここからクライマックスまで『毎日投稿』しようと思います!!!(途切れたらごめんなさい)
毎日、24時(0時)近くに投稿致しますので、ぜひ毎日読んでもらいたいです!
あと、過去話から読み返して頂けると、めちゃくちゃ嬉しいです!
色々、こだわりを持って書いてるので見つけてもらいたい!
では、始まりをどうぞっ!
「あ、漸く見つけたわ!」
店の隅、外部からの視線を遮るように本棚に囲まれた、隠し部屋の様な場所にカウンターはあった。
うわ、机の上すごいな……。魔物の骨か?本もいっぱいだし……
黒いカウンターの上には魔物の骨らしき物や、魔石ランプそして、様々な本が積み重なっている。
さらに、カウンターの奥にも、所々抜けた本棚があり――だがタイトルからしても明らかに初級の内容とは思えない物ばかりが並んでいる。
「……ん。会計か。……適当に置け。」
カウンターの奥――深く椅子に腰掛け片手に本を読み耽っていたヴェリディアが、手に開いた本を閉じ、乱雑にカウンターの上の物をどかしてスペースを作ってくれる。
「ふふっ、あのヴェリディアにお会計してもらうなんてすごく新鮮ね!」
整理された?スペースに、母がドンと何冊もの本を置きながら会計を待つ。その中には俺が読んだあの本も――
「…………全部で80エル……銀貨8枚だ。」
ヴェリディアが、カウンターに置かれた魔導書と図鑑の山をちらりと見て、淡々と告げる。
え?やっす!!
銀貨8枚って……8000円ぐらいだよな……まぁ、俺はまだこの世界の相場とか分かってないけど……この数の専門書がこの値段で買えるなんて心配になるぐるいだ。
「ちょ、ヴェリディアいくらなんでも安すぎない!?」
カウンターに両手を突き、前のめりに抗議するミレア。だが、そんな勢いなど気にも留めない様子で――
「ふっ……未来への投資と思えば安いものだ……。それに――――」
じっ――と、心の奥底までも見透かされ、観察されているかの様なあの金色の視線――
……またあの眼だ。……めっちゃ綺麗。だけど、どこまで見えている?何を観ている?
「それに、何なのよ?」
「いや……気にするな。さっさと持って帰れ。私は研究で忙しいんだ……。」
「……そう。じゃあ銀貨8枚渡したわよ? 本当にいいのよね?」
その問に答えが返ってくることはなく――ヴェリディアは会計前に閉じた本を開き、再び本の世界へと意識を向けてしまう。
「ふふっ、昔となんにも変わらないわね。…………じゃあ、ヴェリディア、今日はありがとう。また来るわね!」
そう感謝と別れの挨拶を済ませ、クルリと踵を返し店の出口へと向かう母。俺もまだまだ読んでいたい気持ちを抑えつつ母の背を追おうとした時――――
「……死ぬなよ。」
そう、俺にだけ聞こえる様に小さく、けれど胸の奥にずっしりと重く入ってくる一言――
慌てて振り返ってみるも、変わらず本を読んでいるだけ。けれどそこには、これ以上は何も言わないという明確な意思を感じる―――
▲△▲△▲
城壁都市メンバ二を出る頃には、空は茜色に染まり始めていた。行きと同じく、馬車を使わずに徒歩での帰りだ。お目当ての魔導書が買えたらしい母は、とても上機嫌に前を歩く。だが、上機嫌な母に反して俺の頭の中には――――
死ぬな、ねぇ……。
俺の頭には先程の本屋で会ったミステリアスでオッドアイのかっこいい店主、ヴェリディアさんの意味深な言葉が繰り返し反芻されている。
……意味が分からない。……いや、分かるよ?意味は分かるけど、どうして今、なのかが分からない。……いや?もしかして、この世界の別れの挨拶的なあれか? まぁ、かっこいいからいいんだけど……どうしてもさっきの情報と重ねてしまう。
……
…………
『死ぬなよ』……この言葉を言われたのが自分より弱いCランク冒険者、Dランク冒険者に言われたのであれば「あ〜はいはい、かっこいいね〜!」で簡単にスルーできた。……だけど――――
あの、金色のオッドアイは反則だよな〜。あの眼には何が写ってるんだろう……。やっぱり俺みたいなユニークスキルみたいなものか?……いや、俺のもまだ〈ユニークスキル〉って決まったわけじゃない。
先ずはそこだよな〜。先ずあの金色の眼の能力・効果を探っていかないと……学生時代の友達って言うぐらいだし母なら―――いや、ダメだな。……すぐに攻略情報見るのはつまらないし、先ずは自分で考えよう!確実に観られていたのは――――ん? 遠くに微弱な反応がある。
ナノン村への帰路、街道を北上してる途中、いつも通り探知を広げていると、遠くに僅かに漏れ出る一体の魔力を探知した。その魔力は――
……ん?この形は……倒れた人の子供か?
全身から漏れ出るぼんやりとした魔力が小さく人を形作っている。
へ〜、赤と茶色……火と土の二重属性か……。だけど、……魔力の密度が薄い。それに、制御しきれず漏れ出てるというよりは、ただ蓋がされてないだけ……うん、雑魚だな。
……あ、反応間違えた!ここは助けるかどうかでしょ。 何、雑魚だなって!
……まぁ、助けた方が物語の主人公っぽいし……いや、どうせ進む先に倒れてるんだ。そこで発見イベント挟めばいいだろ!……うーんでもなぁ……
チラリと母を見てみるが、変わらず上機嫌に魔導書を抱えていて、当然ながら気づいてない。
まぁどうせ後で見つけるし…………でも、もしも、もしもだ!
この心の声が聞こえてたらどうする?…………いやまぁ有り得ないとは思うけど、もしもこれが誰かの作る世界だとしたら…………
――もしかしてやばい?………いや、違うんです〜。本当は助けたい気持ちでいっぱいなんです!でもでも、こんな所で力を隠してるってバレたくないんです〜!劇的な展開にしたいんです〜!
一人、頭の中で居るのかも分からない相手に言い訳してみるが、その効果は分からない。
とは言っても、俺が好きな主人公とかなら助けるよなぁ〜。いや、助けるのは助けるよ?
でも、わざわざ急いで向かうか?
「俺は力を隠してます!」って言うようなものだし、わざわざ今ばらす必要ないだろ。
でも、見つけてるのに何もせず、死なせたりしたら後味悪いしな〜…………――――
「ねぇ母さん、みんな待ってると思うし、早く帰らない?」
常時展開している広範囲探知で見つけました!……とは言えるわけもなく、それとなく促してみる。
「ん?……そうね!早く夕飯の準備しなきゃだし、少し急ぎましょうか!」
…………よし!……どうだ読者!これで満足だろ?……うん!俺めちゃくちゃ主人公してる!!
先ほどよりも、気持ち足早にスタスタと歩き始めていくと、次第に微弱な反応との距離が狭まってきて――――
「……ッ! ドア、止まって!」
突然、母が鋭い声を上げ、俺を背に庇うようにして立ち止まる。その視線の先――街道の脇の茂みに、何かが倒れているのが見える。
「……嘘でしょ……? リナちゃん!しっかりして!リナちゃん!」
母が駆け寄るのを追って、俺もその姿を確認する。そこに倒れていたのは――――
リナ……リナ、リナ……あぁ!
たまにナノン村に来てる……確か、隣村の村長の孫娘……とかだった気がする!
……だが、その姿は記憶にある明るく朗らかな様子とは違い、あまりにも酷い。服は引き裂かれ、泥と血に塗れている。
うわ、酷いな……。背中も前も傷だらけだ。
これは、一度メンバニに連れて帰るしかないか?……ん?何やってんの?
母の方を見てみれば、あんなに上機嫌に抱えていた魔導書を放り投げ、傷だらけのリナに手をかざしている――――
「お願い、間に合って……!
聖なる灯火よ、死の冷たさを拒絶せよ!………その傷を塞ぎ、脈動を取り戻せ!――〈小治癒〉!!」
長閑な街道に響く悲痛な声――
それは、呪文の詠唱という様な高尚なものでなく、ただただ目の前の運命を拒絶し、救いたいという魂の叫び――――
へ〜、この世界の呪文詠唱って水属性優位の波長を任意の属性の波長へと調律させる為のものなのか…………ん?……光属性の虹色が……少しずつ白っぽく…………
その詠唱に応えるように、母の手から淡い光が溢れ出す――
これは……凄いな……。傷口の乱れた波長が元の波長に整えられていく……。なるほど……白っぽい光属性の癒しの魔力がリナちゃん?の生まれ持った正しい波長に同調して、怪我の波長を上書きして癒している。……それが小治癒ってわけか……。
傷だらけで倒れた少女、リナの背中や腕に浮かぶ鋭い爪で抉られた様な切り傷や鈍器で殴られたような打撲。それら無数の怪我は癒しの光に当てられると、じわじわと塞がってはいくが―――
「どうして!……どうして塞がってくれないの!!……もっと魔力を、もっと祈りを込めないと――」
傷が深い。母の治癒魔法じゃ――
……仕方ない!こんな悲しそうな母の顔は見たくないし………
俺の魔力を母のと完全に同調させて……魔力を軽く送ってあげれば――――
――途端、ふわっと強まる光の奔流――だがそれは決して攻撃的なものでなく、全てを包み込む優しい光――
「やったわ!……治癒できたわ!……リナちゃん……リナちゃん!目を開けて!」
やった!回復魔法使えた!
うーんでも、これじゃあ回復効率悪そう……。まぁ、俺みたいに波長が見える訳じゃないから仕方ないけど、今みたいに白い魔力に固有波長への同調を頼るんじゃなく、手動で波長を調整させて……いや、それよりも――
――うん!こっちの方が良さそう! だけどこれは、光属性と言うより……もう1つ違う属性の様な…………って今はそんなことより、そろそろ目を開けそうだ。
「……う、ぁ……」
リナの瞼が、薄っすらと開く。
――状況を理解できない虚ろな瞳――だがすぐに、その瞳は色濃い恐怖の色に染められていく――
「きゃぁーー離してぇ!!」
命の恩人であるはずの母を両手で突き飛ばし、怯えた瞳で後ずさる。
「……ッ大丈夫。……大丈夫だからね。私、ミレアよ。よく一緒に魔法の練習したでしょ? ほら、土魔法でお父さんお母さんの人形作るって………」
「……ミ、レア……さん……?」
「そうよ、ミレアよ! ……一体何があったの!?」
リナは乾いた唇を震わせ、掠れた声で信じられない言葉を紡いだ。
「……ゴブリン……が……たくさん……。みんな……連れて行かれて……殺されて……ッ。ミレアさん、セアさんに助けを求めろ……って……私を逃がしてくれて……」
恐怖、悲しみ、絶望……とめどなく溢れてくる様々な感情――それらに言葉を堰き止められながらも、頭を抱え、懺悔するように打ち明けていく――
「もういい……もう大丈夫。私が、私達が絶対に連れ去られた人、連れ戻してくるからね。」
母が怯えるリナの心を少しでも落ち着かせようと、ぎゅっと抱きしめている――
――その温もりに安心した為か、はたまた役目を果たせた安堵ゆえか、プツリと糸が切れたように寝入ってしまった。
「ドア、村まで飛ばすわよ!一刻も早くお父さんに知らせてリナト村に行かなきゃ!」
母はリナを背負い上げると、身体強化の魔法を発動させて駆け出した――
魔導師と言えど元Bランク。子供を背負っているとはいえ、かなり速い。慌てて後を追いながらも、さっきから頭に引っかかっている事を考える。
――被害が大きすぎる……いくら大量と言っても一般成人男性一人で1匹は追い払えるレベルだ。……まさか――
――『大罪種』――
間違いないな……。だが、どこに潜んでいた?それほどの強者なら俺の探知に引っかからないはずないんだが……いや、逆か?探知できないまでに魔力制御が緻密なのか?……それとも俺が探知できない場所に――――ダンジョン!!……そうか、俺の思い過ごしじゃなかったんだ!ミリエラさん達の急変は『強欲』の権能の影響で間違いない。……だが、どこ居た? ダンジョン内全域を探知したが居なかった……もしや、あの小部屋の前で感じた異質な魔力は―――
……いや……待て。……そうなると、なんで俺だけ影響されてないんだ……?
――――いや、違う!!
本屋での事を思い出せ!……俺は確かに、2匹だけで読み終えようとしていた……。だけどっ―――
――くそ!!俺の村もやばい!
ロア、姉さん、2人に何かあったら俺は…………って何悲観してんだ!村には父が居る!暫くは持ちこたえられるはず……なら、俺が今やるべき事は――――
「……ごめん。母さん。先に行く―――」
俺は小声で呟くと、脚に魔力を爆発させた――――
力を隠す?先の展開?
……そんなもの、どうでもいい
俺の日常が、俺の楽しみが……俺の大切な家族が、理不尽に壊されようとしてるなら、俺の全てを持って、それ以上の理不尽で塗りつぶすだけだ――――
全てを塗りつぶす黒――
理不尽を……運命さえも塗りつぶすかのように街道を黒き閃光が走る――――




