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14.思いつきの9割は過去に得た知識のパクリ

さぼりすぎた……






〈魔導書〉……それは、魔法を行使する為の道具でも、ましてや読むだけで魔法を覚えられる様な物でもない。……この世界の〈魔導書〉とは、過去、幾星霜にも及ぶ数多の魔導師が、己が探究心を満たす為、より強大な力を手にする為、学び・探求してきた記録であり、知識である。




その様な事を目的の場所までの道中、母が教えてくれる。……だが、憧れのファンタジー都市を歩く俺の耳にはまともに入ってこない。

ポーションの様な物、大小様々な魔石、魔導師の杖やローブ、様々な物が売られている。



わぁ〜、城門近くは野菜とか多かったけど、ここら辺は魔導師関連のお店が多いのかな?……あれもしかしてポーション? ……うわ、何あの杖!かっこよ!……てか普通にガラスとかあるんだ〜!……あそこも、あそこも入りて〜!時間さえあればな〜〜………。



右を見ても、左を見ても前世からの憧れが並び、売られていて、俺のテンションを高めてくる。


だが、楽しい時というのはいつも唐突に終わりを告げるもので――



「着いたわ」


体感一瞬にして辿り着いたのは、煉瓦と黒木で造られた、歴史を感じさせる3階建ての建物。

壁には深緑の蔦が絡まり、周囲の煌びやかな店とは一線を画す、静かな威圧感を放っている。

入り口の上には黒塗りの木製看板が掲げられ、そこには金色の流れるような筆記体で――


『Nightshade』


――とだけ、刻まれていた。


うわ、なんか高そうな店……!

達筆すぎて読めないけど、これぞ「知る人ぞ知る名店」って感じだ!


魔導書を買うと言うから、てっきり暗くて妖しげな所かと思ってたけど……洗練された空気を感じる。



「私の学生時代の友達がやってるんだけど、居るかしら〜」



重厚な両開きの木製ドアを母が開ける。

その背中に続いて足を踏み入れれば――ふわりと、古紙とインク、そして微かにドライフラワーのような香りが鼻をくすぐった。



店内は、外の喧騒が嘘のように静謐な空間――

天井まで届く本棚が壁一面を埋め尽くし、そこには移動用のスライド梯子が掛けられている。

そして何より目を引くのは、暖色系の光を放ちながら空中にふわりと浮遊する魔石ランプたち。それらが幻想的に照らし出す店の奥には、上階へと続く黒鉄の螺旋階段が鎮座していた。



うわ、本屋だ!……でも当たり前だけど、ただの本屋じゃない!魔法のランプに、壁一面の本、そして螺旋階段……! ここは異世界の知識が詰まった、ファンタジー世界の本屋だ――


…………やばい。ワクワクしてきた!!……どんな本があ――――


――突如として背後に出現する反応


考える間もなく母の腕を掴み――魔力障壁を母に5枚重ねがけると同時に――螺旋階段前まで飛び退き瞬時に距離を離す。




「――驚愕だ。……まさか、私の気配(ステルス)を探知出来る子が居るとはな……」



――入口前、探知(サーチ)が反応を示すは、上下黒の衣服に身を包み、深い暗緑の長い髪がさらりと揺れる、片目を閉じた怜悧な顔立ちの美女。



「これは――魔力障壁を3層………いや5層か。……1層1層の精度も限りなく高い……とんだ化け物が居たものだ………」


閉じていた左目を薄らと開ければ、暗緑の右目とは違い、輝くような金色の瞳が俺を映す。

その瞳には感情の色はなく、ただ事実を冷徹に解析する光だけが宿っていた。



どっちが化け物だ……

殺意は無いみたいだけど、真後ろに近寄られても気づかないなんて初めてだ……。もし殺す気だったなら、殺られていたかもしれない。……それに、何故か俺の魔法が看破されている。……あっこんな時はあれだ!…………


この女――できる!



「化け物なんて酷いじゃない、ヴェリディア。私の子供よこども!」



俺に強引に引っ張られるも、何とか着地していた母が立ち上がりながら目の前の美女に言い放つ。



「ミレアの子供?……あの貴族からの求婚も断っていたミレアが……。」



「そ、そんな昔の事今はどうでもいいでしょ!それより……ドア、このいつも左目を閉じてる魔物オタクがこの店の店主ヴェリディアよ」



なんか仲良さそう……母の友人ってこの人の事か……。



「……魔物オタク。否定はしない。……私はヴェリディア・ナイトシェイド。ヴェリディアでもなんでも好きに呼んでくれて構わない。左目の事は気にしないでいい。私は人より見えすぎるんだ……。」



「ドアです……」



うわ!何この人!かっこいい!オッドアイは反則じゃない? 俺も魔法で色変えれるか、今度試してみよ!……いや、それよりもだ。あの左目のせいで俺の魔法が看破されていたのか? 見えすぎるとも言っていたけど、何かの魔法か、能力か……。




「――――その目は好きだ。……その目は知識を求める目だ。君はどうやら、私の事よりも私のここに興味津々らしい……。」



閉じた左目を指先でトントンとしながら、ヴェリディアが微かに口角を上げる。

それは妖艶というより、興味深い観察対象を見つけた学者のような笑みだった。



「……いいだろう。君には面白いものを見せてもらった。その礼だ、一つだけ教えよう。……私は、目に映した対象の『状態』が分かる……。」



――状態が分かる?アーティファクトを用いない鑑定みたいな事??……それ強すぎない?……まぁ、俺が言える立場じゃないか……。それに、何の状態かは分からないし、どこまで分かるのかも分からない。でも少なくとも、俺の魔法は看破されている。いったい、どこまで知られているんだ?



「ヴェリディア、あんたが人に興味を示すなんて珍しい事もあるのね。魔物だけがヴェリディアの興味の対象だと思ってたわ。」



「いや?……その認識で合っている……。……ただ、この子は興味深い。私の目に写して尚、その深淵までは覗けない……。君はいったい……いや、詮索はよそう。それを識る為に観察するのが私の仕事だ。」



何この人?いちいちかっこいいな。

俺も魔法で色変えれるとして、何色にしようかな?……やっぱ赤?……こう、異能力者!みたいな感じがいいよな〜。片目が黒だとして、もう片方は青、紫…………



「そうそうドア!ヴェリディアってこんな感じだけど、結構凄いのよ!……なんたって、記録者(レコーダー)で初めて二つ名を与えられたAランク冒険者なんだから!」



………え、何??

情報量多すぎるって!えっと……まずこの世界にも()()()とかあるんだ!……いやまぁ大体あるか。俺もそういうのめちゃくちゃ欲しいけど、今はいいとして……この人Aランク冒険者なの!?……確かに、あの気配の無さと探知(サーチ)にも殆ど反応しない魔力制御の腕を考えれば納得か……。で!問題は次だ!……レコーダーって何??



「……私の事はどうでもいい。……それより、用件は?」


ヴェリディアが淡々と話を切り上げる。無駄話を好まない性格らしい。



「そうだわ! 私達は闇属性の魔導書を買いに来たのよ。ドアと、その下のロアが闇属性に適正あってね。……此処に売ってるかしら?」



「……闇属性。確かに在庫はあるが……私の店は、多種多様な魔物の知識が売りなんだが……。まぁいい。見た所、この子はまだ冒険者でもないだろう。……購入権限があるのはDランクまでの魔導書……案内する。」



そう言うと、案内しているとは思えない速さで歩き始めるが、不思議と全く音がしない。その背中は、店員というより、手練れの暗殺者のようだった。


俺と母は、慌ててその後を追う――。

案内されたのは、店の奥まった静かな一角だった――


「……ここだ。この棚に初級魔導書が陳列されている。……探している物はここにあるはずだ。」



「まぁ! ありがとうヴェリディア。ふふ、学生時代に戻ったみたいでワクワクするわ!」

 


母はすぐに目の色を変えて、目当ての魔導書の棚に没頭し始めた。


俺も母と一緒に魔導書を……と思った、その時――

ふと、その隣の棚に視線が吸い寄せられる――



そこには、母の見る真新しい初級魔導書とは対照的に、煤けて年季の入った書物が並んでいた。

黒や深緑の装丁が多く、皮や羊皮紙の巻物も混ざって雑然と並べられている。

それらは、触れると指先に古いインクや、乾燥した薬草の香りが移りそうな、暗い知識の重みを感じさせる。


――その棚に並んでいるタイトルは、俺の好奇心を刺激してやまないものばかりだ。



『スクリーム・バードの生態』

腐食苔(コラージョン・モス)の培養記録』

影渡り(シャドウ・ウォーカー)の生態』



 うわー、色んな本売ってる!

これ、全部魔物の名前!? 知らない名前ばかりだ!

スクリーム・バードにコラージョン・モス…………どんな魔物なんだろう!



定番の魔物もあれば、聞いたこともない名前もあって、表紙を見てるだけでテンションが上がる!



「ドア、気になるの? 私が買っておくから見てていいわよ?……いいわよね?ヴェリディア。」



俺が隣の棚に釘付けになっているのに気づいたのか、母が助け舟を出してくれる。



「……構わない。だが、一つ忠告だ。」


ヴェリディアの黄金の瞳が、射抜くように俺を見る。


「……君の腕なら結界を抜けられるかもしれないが、2階へは行くな。あそこは、Dランク以上の権限を持つ者だけの領域だ。」



うわ!そんな事言われたら、寧ろ行きたくなる!

Dランク以上の者のみが読める本……何が書かれてるんだろう!……って危ない危ない。あの黄金の目がこっちを見ている。



……うーん、どうするか〜。

さっきめちゃくちゃ気になるタイトルあったんだよな〜。だけど、〈魔導書〉っていうのもどんな感じなのか見たいし……いや待てよ?魔導書は母が購入してくれる――つまり、後でも読める!!


――なら!



「分かりました!……じゃあ母さん、ちょっと読んでるね!」


「ええ、ゆっくりしてていいわよ。……ふふ、ドアったら。また何か『面白いこと』を見つけるつもりなんでしょ? 好きになさい。」



母は、俺の考えていることなんてお見通しだと言わんばかりに微笑むと、再び魔導書の世界へと戻っていった。



「……私は奥で作業をしている。会計の時は声をかけろ。」



 そう言い残すと、ヴェリディアも音もなく気配を消し、店の奥へと姿を消した。


……相変わらず、とんでもない隠密能力だ。

母の許可も得たし、店主も奥へ引っ込んだ。



――さぁ、どれから見ようか!



俺は逸る気持ちを抑えつつ、目の前の棚に並ぶ背表紙を目で追う。

――すると一冊の分厚い図鑑の背表紙に、思わず二度見してしまうような奇妙な煽り文句が書かれているのを見つけた。




『大陸西部・低ランク魔物生態図鑑』

 〜収録魔物〜

 音真似の天才:エコウモリ

 新人殺し:メル・スラッグ

 ……他、多数収録



……『エコウモリ』に『メル・スラッグ』??

誰これ?、知らない………


定番のゴブリンやスライムじゃない!!

前世のアニメ、ラノベとかでも聞いた事のない、この世界独自の魔物たち――



「……めっちゃ気になる……!」



俺は吸い寄せられるように、その図鑑へと手を伸ばした。

――この世界には、俺の知らない「面白いこと」がまだまだ山積みみたいだ。




前回の話で、タテノがメガネキャラだと覚えてた人0人説。


今回から、「〜話」を廃止しました!

なぜなら、ドアとしては「生きているだけ」なので、そこに話など存在しません。ドアは普通に生きてても「今日何話っぽいな〜」とかは考えてそうですけど。

また、”1話1話が短いのを誤魔化す為”とかでは決してありません!


今回から登場した新キャラ!

ヴェリディア・ナイトシェイドさん!

〈黄金の誓い〉の人たちには申し訳ないけど、設定を考えていくうちに、今一番のお気に入りキャラになっちゃいました。

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