10. 人を知り己を知る
一行は今回の要因と推測されるダンジョンへ向かう。そのダンジョンは、ただのゴブリンしか出ないEランクダンジョン。冒険者ギルドにも認知されているが、その危険性の低さと帰らずの森の中に在る事で、誰も近寄らない。
という様な事を歩きながら、ルネッサさんが教えてくれる。
「流石ルネッサさん、博識ですね!」
すかさず賞賛する。このタイミングが大事なのだ!―――ツンデレとの会話は餅つきと同じだ!(名言) 勿論つく方がルネッサさんで、素手でひっくり返す方が俺だ。速すぎても雑になり、遅くなれば痛い目を見る。―――さぁ、次はどう来る?
「ふふん、そうでしょう?ほら、もっと褒めていいのよ?」
――なにっ?更に褒めろと?もう合いの手なんてできないぞ。いや、考えるんだ!――――っと無駄に膨大な魔力で思考速度を強化していると――
「ルネッサちゃん……受付嬢から今朝教えてもらったばかりの情報をよくそんな得意げに教えられるね……」
「ミ、ミリエラ?それは秘密って約束でしょ!?」
「そんな約束、していませんっ」
あわあわしているルネッサと、少しツンとした様子のミリエラ。そんなほんわかした雰囲気だが、姉さんの手は変わらず俺の手を強く握っている。
あれ?そう言えばここら辺見覚えが……と言うか、一昨日来たばかりのところじゃ――――
「皆止まって。」
先頭を進むタテノが手を小さく挙げ、それを確認したエイクの指示。――訪れる静寂。ミリエラ、ルネッサの表情も引き締まり、リーダーの言葉を待つ。
どうしたんだろう?俺の探知ではまだまだ先なんだけど……
「リーダー、どうされました?私の探知魔法には何も反応が無いのですが……」
同じ疑問を抱いたミリエラの質問。その答えに……
「あれを見て。」
そう、エイクが指を指す方向に目を向ける。
あれは――――
「ん?……あんなのただのゴブリンの死体じゃない。……別に珍しくも―――違う、あれは―――」
「そう。別に自然界のゴブリンは何も珍しくない。でも、あれは殺されているんだ。それも……相当な腕前の持ち主にね……。」
へ、へ〜〜、相当な腕前の持ち主ね……そいつはすごいな〜。一体どこの転生者の仕業なんだろ〜
「まだ新しいな……。2,3日前ぐらいか?」
〈黄金の誓い〉の面々は、3匹のゴブリンの死体の元へ行き、しゃがみ、調べ始める。
えっと…………バレない、よね?……俺が殺ったってバレないよね?……たぶん大丈夫なはず。必要最低限の魔力で殺したから、魔力残滓は殆ど0だ。それに、その波長を解析するには、俺の目以外ならアーティファクトが必要なはず!……だからたぶん大丈夫!!まぁ、いざとなったら記憶を消しちゃえば解決だ。
「首と胴を一撃ずつ。そして火属性魔法……。
同じ火属性魔法の使い手として、ミリエラはどう思う? 同じことができる?」
エイクが顎に手を当てながら、ミリエラに問いかける。
「いえ、できません。死体の損傷を観る限り、恐らくこちらも一撃。そして、たった一撃でこの火力……最低でも私達と同じCランク、それも単属性。もしくはBランク以上ですね。」
そうなの!?ただかっこつけて魔法を使っただけなんだけど!?……あれでC〜Bランク相当なら、今の俺でも、Aランクぐらいの強さはありそうな気が……
「切って殺されてる方はどうなのよ?」
ルネッサがエイクとタテノ、2人に目をやり、暗に答えを待つ。
「僕には無理だ。……正確に言えば、ゴブリンを両断する事ならできる。……だけど、この断面はあまりに綺麗すぎる……」
先ず答えたのはタテノ。その答えを聞いていたエイクが続ける。
「僕もタテノと同じかな。見てよ、ほらこの断面!剣が入った所から真っ直ぐだ!まぁ、最後だけ少し斜めになってるけど。でもこれほど綺麗な切り方ができるのは、剣の技術は勿論だけど、込める魔力の操作と制御も相当上手だよ。」
何これ?……めちゃくちゃ嬉しいけど、めちゃくちゃ照れる……。どうしようかな?もう本気見せちゃおうかな?……いやいや、駄目だ。隠すからいいんだ!
「…………で、問題なのはこれを誰がやったのか、だ。この倒し方からして、僕たちの同業者の可能性が高いけど、そんな話は聞いていないし、魔石も抜かれていない。それに、この森には犯罪者が隠れ住んでいるみたいな噂もあるし……」
「そんなのどうせ、あの村に居た元冒険者とかじゃないの?確か、剣の腕が一流だとか言ってたじゃない。」
「……そうだね。その可能性も確かにある。……けど万が一の可能性も考えて警戒だけはしておこう。……でも、例え襲われも、僕たち〈黄金の誓い〉なら、みんなとなら大丈夫だと信じてる!――――よしっ、みんな行こう!」
エイクの指示とパーティーメンバーへの信頼に――――
「ふん、もし襲って来ても私の軌道操作魔法で一撃よ、一撃!」
「まぁ、防ぐだけなら僕にもできそうかな。」
「探知と範囲攻撃は任せてください!」
うわ〜めっちゃ気合い入ってる〜…………なんかごめんなさい。それ殺ったの俺なんです……。決して未知の敵でも、高位の冒険者でもない、ただの村人Aなんです〜。
士気の高まった様子を見て、気まずさと恥ずかしい気持ちに苛まれていると、既に〈黄金の誓い〉は先へ進み始めている。
俺も行くか〜と進もうとした時、手が空いている事に気がつく。
あれ?姉さん?――――姉さん!!
慌てて見回すと、姉さんはゴブリンの死体の前にしゃがんで、見つめていた。
良かった……居た。姉さんの探知反応に慣れすぎてるな……。これは何か対策しないとまずい……俺の魔力が込められた何かを持たせておくか?……いや、今はそれより―――
「姉さん、もう……大丈夫なの?」
「え?…………うん。もう全然大丈夫!!……って言いたい所だけど…………ごめんね、ドア。私はあなたのお姉ちゃんなのに……。」
強がった笑顔、そして伏し目がちに申し訳なさそうな表情―――。
――――違う。俺は姉さんのそんな表情が見たいんじゃない。姉さんは、俺にとって初めてできた姉さんなんだ。そんな自分の姉にはいつも笑っていてほしい。だから――――
「姉さん。安心して。俺が絶対に守るから。何があっても、何が来ても絶対。約束する。」
――――少し驚いた様に見開かれる目。そして――――
「ふふ、さっきも言ったでしょう? 私は、ドアのお姉ちゃんなの。だから守るのは私の方。………でも、ありがとう。約束、だからね……」
あぁ、この笑顔の為なら俺は命をかけられる。――――もう二度と家族を殺させたりしない。誰であろうと、国であろうと俺の大切なものを奪おうとするなら、全力で滅ぼす。その為にも俺はもっと強くならないと…………
そう改めて決心していると――――
「ドアー、エリシアーー!早くしないと置いていくわよー!」
その呼びかける声に俺と姉さん、二人で顔を見合わせて……
「行こっか」
「うん、そうだね。」
▲△▲△▲
「見えた。あれがダンジョンだ」
道中、数匹のゴブリンを倒しながら着いたのは、一見するとただの洞窟。それよりも異様なのはその周り。森の中だと言うのに、不自然に木が生えていない。とはいえ…………
「案外、普通なんですね……」
周りにゴブリンも居ない為、ダンジョンの入口の前まで行くが、異世界、ファンタジー、ダンジョン……と期待が高まっていただけに、思わず落胆の声が出てしまう。
「ははっ、残念かい?……でも安心していいよ。中は完全な異界だからね。こんな木に囲まれた所でも中に入れば、一面氷の極寒の地……なんて事もある。それが理外の迷宮というものさ。まぁこのダンジョンはEランク……見た目通り……だね。」
道中と陣形を同じくして、ダンジョン内へ入ってみるが、外見通りただの洞窟だ。強いて言えば、入口は人2人並べれば良かった狭さが今は5人は並べる。それと助かるのは、洞窟内だと言うのに薄暗い程度で、魔力を無駄に使わなくてもいいという事。
でも、やばい。テンション上がってきたかも!最初は、こんなもんかぁって思ったけど、違う! そうじゃない!この、初級ダンジョン感が最高なんだ!……わぁ〜、めっちゃ初級だぁ!ゲームとかでも初期装備とかめっちゃ好きなんだよなぁ!
そう、めちゃくちゃワクワクしながらダンジョン内をキョロキョロしていると、ミリエラさんと目が合う。
何かよく目合うなぁと思っていると――――ニコっと微笑まれる。そして、――――むぎゅっという幸せな感触。
「あ〜ドア君かわいいです〜。どうしたんですかぁ?ダンジョンにワクワクしちゃってるんですかぁ?会った時から我慢してたんですよぉ?なのにドア君は私の事を誘惑しすぎですぅ。」
――――えっ?何?敵意が無いから何もしなかったけど、何が起きてる?殺した方がいい?……あっ、柔らかい。それにいい匂い。
ミリエラさんの急変とローブに隠れて分からなかった柔らかな感触に包まれ、困惑していると――
「ちょっ、ミリエラ!あんた何してるのよ! こいつはもう私の物よ! だってもう私にメロメロなんだからっ!」
ルネッサが、抱きつかれた俺の腕を強引に引っ張り、自分の物だと主張する。
いや、別にメロメロになってないし、誰の物でもないんだけど……。まぁ、抜け出そうと思えばいつでも抜け出せる。でも力加減を誤ってミリエラさんを傷つけてしまうかもしれない。……うん、だからこれは、きっと仕方ないことだ!
すると、もう片方の腕も優しく引っ張られて……
「ドアは私のも……弟です!」
――姉さんまでっ!?
「ちっ、ミリエラ、気をつけた方がいい。そういうガキはスケベだって現実的に考えて決まっている。」
いや、意味分からないし! 現実的って言葉そんなに万能じゃないからね!? それに……お前がちらちら、ミリエラさんの胸を見ていたの知ってるんだからな!
「ドア君はスケベなんかじゃありませんよね〜?もう完全に無抵抗ですけど、スケベなんかじゃありませんよね〜………と本当はこのまま抱きしめていたいのですが……そうも言っていられないみたいです。……――――来ます!」
見切り発車で始まったこの物語。それが10話まで続けられている事……自分の事ながら信じられないです。ここまで読んで下さっている方……本当にありがとうございます!!
それとごめんなさい。物語の先なんて見えておらず、毎回完全にアドリブで、登場人物たちが勝手に物語を進めてくれています。なので、今後大幅に変更する可能性があることをご了承ください。
それと、なろうファンタジーなのに戦闘回数少なすぎない?進み遅すぎない?って思われてたらすみません。あくまでこの物語は、この主人公がもし異世界転生したら……という、ただそれだけの物語となっています。




