1話 ただそれだけの日
今回が初めての作品です。
至らない点しか無く、語彙力も無い、ただそれだけの人間ですが、少しでも面白いと感じて貰えたら嬉しいです!
俺は、右手が疼くわけでも、魔眼があるわけでもない、どこにでもいる平凡な高校二年生だ。
まぁ、中学生の時には右手が疼いたり、魔眼があったりしたが、そういった所謂、中二病は暗黒の力で封じて卒業している。
そんな平凡な俺、黒羽湊は普段と変わらない帰り道を歩く。
何か、変化を挙げるとすれば、今日が一学期の終業式で、少しだけ荷物が多い事だろうか。
はぁ〜〜と、意識して長いため息をつく。
なんだよ、荷物が少し多いって。
些細な変化すぎるでしょ。めんどくさい彼女でも、もっと大きな変化が有るよ。
……まぁ、彼女なんてできた事ないんだけど。
そんな変わらない日常に、俺は退屈していた。
そして、いつまでも変わらないと思っていた。
だが、この後直ぐに、世界を一変させる出来事が起ころうとは、今はまだ誰も知る由もなかった………
っと、頭の中でナレーションするのが最近の趣味である。
俺はフラグを待つだけでは何も変わらないことに気がついた。ならば、自らフラグを立てよう!というのが俺の考えだ。
そして、何時かは物語の様に――
期待を膨らませて、妄想しながら歩いていると、すぐ目の前の公園から小学生達の楽しそうな声が聞こえてきた。
「おい、ザコだ! 早くパスしろよ!」
小学生とは思えない低音の声が、ザコだ君なる人物に声を荒らげる。
この怒声もいつも通りだ。
小学生達は一足先に夏休みに入っていて、公園の前を通る度に、声が聞こえてきていた。
「ご、ごめんっ!」
ひ弱そうな声が慌てて謝罪する。
この声がザコだ君だろう。
君が何年生なのかは分からないけれど、小学生の間の我慢だ。頑張れザコだ君!と心の中で無責任に応援する。
「くそっ、お前のせいで外したじゃねぇかよ! 早く取ってこい!」
「わ、分かってるよ〜」
ザコだ君の、若干の不服さが混じった声が聞こえてきた。
「これが、平和……か」
おっと、声に出ていた様だ。
すれ違いざまの女子高生から、なんだ、こいつ。というような驚きの目を向けられてしまった。
まぁ、それは……うん。大丈夫。
それよりも、低音小学生が取ってこいと言っていたのは、目の前を通り過ぎたサッカーボールの事だろうか。
仕方ない、ザコだ君の為だ。取ってあげよう。
……と思ったが、ボールは道路の奥まで転がっていて、トラックが走ってくるのも見える。
うん。あれは諦めよう。
そう諦念を抱いていると、目の前をメガネをかけた少年が、勢いよく横切り、道路に飛び出した。
そんな突然の出来事に、俺は驚愕した。
なっ!この少年が、あのザコだ君なのか!!
俺は、今まで声だけでしか想像できなかったザコだ君の素顔を見れた事に謎の達成感に似た感動を覚えて……いる場合ではなかった!
どうする?運転手は気がついていないのか?
このままではザコだ君が轢かれてしまう!
というか、メガネかけてるのにボールしか見えてないじゃん!というツッコミは胸に納める。
こうなると、俺が取れる選択肢は2つ。
1つ目、このまま傍観者に徹して、ザコだ君を見殺しにする。
2つ目、ザコだ君に秘められし力の覚醒を信じて――見殺しにする。
――うん。どっちもないな。
であれば、幻の3つ目、自分の主人公性にかける。
これしかない。
道路に飛び出した子供、迫り来るトラック、こんな状況――まるで、物語みたいだ!
もし、これが物語であれば――
もし、俺が主人公であれば――
こんなとき、主人公なら何をするのか――決まっている。
そう、俺も道路に飛び出して、子供を抱き抱えてダイブ!物語でよくある、あれだ!
そう決断した瞬間、俺は道路に飛び出した。
それはいいけど……
――――これ間に合わなくね?
ダイブしながら抱き抱える――うん、無理だな。
因みにザコだ君は、ボールを掴んだはいいものの、トラックを見つめて、呆然としている。
手は無理、なら足だ!
俺は、前方に勢いよくジャンプし、両膝を軽く曲げ、ザコだ君の隙だらけの背中に、蹴りを入れる。
そう、ドロップキックだ。
途端、ザコだ君は、勢いよく吹き飛んだ。
その直後、俺の身体はドンッという衝撃と共にザコだ君とは比べ物にならない勢いで吹き飛んだ。