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14.夜のサンルームにて

 ――ベルトランさんは、前例がないわたしの自然療法を不信に思ってる。当然の反応だよね。わたしだって、神様のお告げじゃなかったら、思いつきもしなかったもん。実験台って考えられても、無理もない。たった一人の娘さんだもん。

 でも、わたしってそれがショックだったのかな。自分と自分の仕事が拒否されて、嫌悪感を持たれたことがショックだったのかな。なんだか、少し違う気がする……。

 わたしがショックだったのは……。


「――……ト、シュゼット? 聞いてるか?」

 目の前にエリクの顔が現れ、シュゼットはハッとして気を取り戻した。

 辺りを見回すと、膝の上にはブロンが、隣にはエリクが、そして正面にはラーロが座っている。そしてここはサンルームだ。

「あ、ご、ごめん。考え事してた」

「キューン?」

 ブロンは心配そうにシュゼットの顔をペロペロなめてきた。

「大丈夫だよ、ブロン。ありがと。何の話してたの?」

「ああ、今日マリユス教授から聞いたんだけど、エル・フェリィークにはこの辺りの魔獣のほとんどが住んでるらしいんだよ。ラーロも普段はそこにいるのかって聞いてたんだ」

「そうだよ。この前はたまたま町の方までお散歩してたんだあ」

 ラーロはシュゼットにガーゼを外してもらいながら答えた。

 今夜は冷たい雨が降っている。そこで風呂上りのシュゼットたちは毛布にくるまり、ラーロを囲んで話をしていた。

 フレゥールの町は、南と西が大きな山で覆われている。その形が妖精に似ていることから、妖精の羽、通称「エル・フェリィーク」と呼ばれている。その美しさとは裏腹に、クマやオオカミ、魔獣などが出没するため、町の人々が山に入ることは無い。しかしマリユス教授はエル・フェリィークに興味があるそうだ、とエリクは話した。

「なんでも、そこにしか咲かない植物があるって言われてるらしいんだよ。ぜひとも採取したいって身悶えてた」

「マリユス教授らしいなあ」

 シュゼットはカレンデュラの軟膏を塗りなおしながら、クスクスと笑った。そして、傷口を見て「あ、結構良くなってる」とつぶやいた。

「確かに平地には咲かない植物がたくさんあるね。タルティナとかディモナは実がおいしいし、ペーシャは体に良いんだ。人間に効くかどうかはわかんないけど」

「へえ、ペーシャには興味あるなあ。どんな薬効があるんだろう」

「きれいなお花だよ。ぼくが元気になったら連れて行ってあげたいけど、人間には危ないだろうからなあ。ぼくでも怖い時あるもん。オオカミとかさ、ぼくが肉食だって知らないから、襲ってくるんだよね」

「町に来た時に、あの山には近づくなって言われたけど、本当に危ないんだね」

 シュゼットは窓の外に見えるエル・フェリィークをチラッと見た。いつもはただ静かに佇んでいる山が、今は少しだけ緊張感を与えるものに思えた。

 町の周辺には狼やクマよけの魔法がかけられているため、襲われる心配はない。それでもすぐ近くで生き物たちによる食物連鎖が行われているかと思うと、畏怖を感じずにはいられなかった。

「まあ、人間が入らない方がいいのは確かだね。足場も悪いから、ぼくたちは飛んで移動するし」

 エリクはラーロの羽根をなでながら、「俺たちには羽がないからな」とあくびを噛み殺しながら言った。

「羽といえば、エリクが前にフェリアスの羽を拾ったことがあったんだ。それってラーロのかな? 前に庭を見に来たんだよね?」

「たぶんそうじゃないかな。みんな滅多に山を下りてこないから」

「その羽、わたしがもらったんだけど、今も部屋に大事に飾ってあるんだ。すごくきれいだよね」

「ふふんっ、まあね」

 ラーロは得意げに笑って、羽をバサバサ揺らした。すると心地よい風が起こり、ブロンのフワフワした毛が、ふわーっと揺れた。


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