↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファーナーティクスへの福音  作者: ベアりんぐ
第二章 女神と信者
18/29

聴こえぬ君に

「君のおかげで、全てのペンダントが揃ったよ。ありがとう!」


 「さあ、出口への手掛かりを彼女に言うんだ」


 「ああ…そうだったね。ねぇ君、今までに見た記憶の欠片を知ったとしても、君はあの世界に帰りたいかい?」


 観測者は尋ねる。このまま彼女が帰ると口にすれば、彼女は現実へ帰ることが出来る。


 彼女の顔は暗い。ずっと下を向いていた。やはり、今までのことが心にきているのか。


 しばらくすると、彼女が口を開き、観測者でもなく、俺でもなく、EmiRyでもない、榊に対して言葉を放った。


 「…わたし、これから、あなたを信じて生きても、良いんだよね?」


 「……うん」


 「途中で、何処かに行ったりしないよね!?」


 彼女が目線を上げる。


 全てを失い絶望しながらも、何かを信じて強くあろうとする、少女の顔があった。


 「ええ。約束する。」


 榊が、契約の旨を口にする。


 それを聴いた彼女は、強く、しかし震えながら、笑顔で、観測者に対して言った。


 「私、帰りたーーー」



 バアァァァン!!



 ドサッ



 遠くから鳴ったであろう衝撃音が放った物体は、彼女の、眉間を貫通していた。


銃?死んだ?あれ、なんで……


 「……え?」


 「いや……いやあぁぁぁ!!!」


 追いついていなかった思考が追いついた時、そこには、彼女が死んだという事実が残った。


 「そ、んな……どうして」


 「き、君たちは、はや、く……此所を、で、て、さ……も………なぁ」



ドサッ



 観測者が倒れる。起き上がる気配がない。そして、今まで原型を留めていた世界が、一気に崩壊を始めていた。


 「いやぁ~まさか君たちがいたとは想定外だよ」


 「!お前は!」


 そこにいたのは、さっき会った男だった。片手に銃のようなものを持っていた。


その時、俺の横から凄まじい速さで男に飛びかかろうとする人影が見えた。榊だ。


 「……!」


 榊が男に殴りかかる。当然、榊が男に叶うはずもなく、その拳は簡単に止められ、遠くまで投げ飛ばされた。


 「ぐぅ!!……う」


 「大丈夫か!榊!」


 「いや、急に殴りかかるのはナシでしょ~いやぁビックリした」


 「どうして!どうして彼女を殺した!まだ、生きられた、のに…」


 榊が睨みつけながら言う。すると、男は酷く愉快そうな顔で、不快な笑顔で、話し出した。


 「あっははははぁ!!どうしてか?それは簡単、彼女に福音を与えたまでさ。これが一番手っ取り早いのよ」


 「ふざぁけるなぁ!」


 「おっと、怖い怖い。じゃ僕はこれにてドロンっ」


 男はそういうと、沈むように地面に消えていった。


 一体何者なんだ?だが、今は榊と自身の安全が最優先だということを思い出し、榊を立ち上がらせる。


 「なあ!こうなった場合、どうやって出るんだ!?」


 「…出口を開く。自身の神化世界と繋げろ。」


 世界が崩れていく。EmiRyの写真も、世界の壁からボロボロと落ちていく。


 「繋げる!?っ、とにかく、やってみる!」


 榊が目を閉じ、そして俺も、目を閉じて自身の神化世界へとリンクを始めた。




 目を閉じる一瞬、俺の横で一粒の雫が落ちたことを視た。




           16




 神化世界へ通じた俺は、管理者の元へと歩き出した。


 彼が何処にいるかは、本体の俺ですらわからない。いや、俺がそもそも本体なのかすら、わからない。


 しばらく歩いていると、人影が見えたので、管理者がそこに居ることは明白だ。


 「管理者。思ったより早く会うことになったな」


 管理者がこちらを向く。するとその瞳に、涙を浮かべていた。


 「ああ……救えなかったようだね」


 「…正体不明の男が、現れた…アレは一体、誰なんだ?」


 「私にも分からない……だが、ひとまず君や彼女が無事で、良かったよ」


 「榊も、無事なのか?」


 「ああ、神化世界の精神は、個を持たず、されど人格がある。つまり繋がっているからね。」


 無事だということが分かり、一先ず安心した。


 「……君には、記憶しておいて欲しいことがあるんだ」


 管理者が告げる。俺は、なんとなくその意味を理解していた。


 「ああ…彼女のことだろ?」


 「ああ、そうさ。忘れないで、いてあげて欲しい。」


 「…絶対に、忘れないさ」


 さらに、管理者が告げる。


 「彼女の名前も、憶えていて欲しい。世界からは切り離されてしまったとしても、憶えてくれる人がいれば、まだ繋がっていられるから」


 管理者が彼女の名前を知っていることに驚きながらも、さっきよりも確固たる意志を持って、答えた。


 「大丈夫。俺と、榊で繋ぎ止めるよ」


 一体、何を繋ぎ止めるのか。その答えを知らずにいたが、とにかく繋いでおくことが、彼女のためになるような気がして。


 彼女の名前を知る。


 俺は記憶する。彼女の名前を繋げておくために。






 推野《おしの》 瑛真《えま》





 繋ぐべき、名前だ。







          独白


 また、救えなかった。ただその事実だけが、無情にも残った。


 だけど。


 いつまでも、後悔している場合じゃない。まだ、神化世界に取り込まれる人は出てくる。


 そして救うことを、私と彼女の福音を邪魔する奴も、現れた。


 だから。


 「行くよ、珠代」


 だから、私はーーー


 歩みを、止めない。






第二章 女神と信者 ~完~


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。