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雅の嘘

「シモン……ごめん……」


 雅が急に頭を下げた。


「……シモンのこと、本当はずっと前から知ってたんだ」


 葬儀が終わって学校に戻った俺は、突然の雅の告白に驚いた。

 雅の母親が、ばあちゃんの入院していた病院で看護師をしていること。

 葬式のことは母親経由で知ったこと。


「ああ、そうだったのか。……え、でも、ずっと前から知ってたっていうのは……?」

「母さんがさ。毎日お見舞いに来る高校生がいるってすげぇ褒めちぎっててさ」


『シモンくんがウチの孫だったら、おばあちゃんも幸せだろうなぁ。ね? 雅?』


 毎日そんなことを言われ“シモン”に興味がわいたと雅は言う。


「え、でも雅もばあちゃんと仲良いよな?」

「仲良くなったのは最近なんだ。……シモンの真似をしたんだよ」

「真似?」


 俺のばあちゃんが雅の母親に、俺のSNSを見せては毎日嬉しそうに話をしていたそうだ。

 そのSNSを雅の母親もチェックするようになり、雅も見るようになった。“Simon”のフォローの中に雅のクラスメイトがいて“Simon”と俺が繋がったと言う。


「母さんの話を聞けば聞くほどさ。俺とは全然意識が違ぇんだなって驚いて。ばあちゃんを大切にしてるシモンがすげぇカッコイイなって。SNSでばあちゃんを笑顔にするなんてすげぇじゃん。……だから、俺もシモンの真似をしてみたんだよ」

「雅……」

「そしたらさ。ばあちゃんすげぇ喜んでさ。毎日楽しみにすんだよ、シモンの写真。なんか笑顔も増えてすげぇ元気になってさ。マジでびっくりした。シモンすげぇなって思った……」

「それは俺じゃなくて雅の力だろ」

「シモンの写真の力だよ。だって俺、空なんて全然興味もなかったのに、今はすっっげぇ好きだもん」


 雅は空が好きだと言っているだけなのに、なぜか胸が苦しくなった。


「だから、どうしてもシモンと友達になりたかったんだ。……嘘ついてごめん……」

「……いや。俺、雅と友達になれてよかったよ」

「マジで……っ? あーよかった! なんか俺、ストーカーみてぇだなってすげぇ不安でさ……。あーマジでホッとしたっ!」


 雅にストーカーされて嫌なやつなんていないだろ、と思ったが言わないでおいた。


 ばあちゃん、ありがとう。雅と友達になれたのは、ばあちゃんのおかげだったよ。

 

 


 俺たちは学校でも親友と認識されるほど毎日一緒にいた。

 部活帰りの雅から『今どこ?』と連絡が来ると、俺はたとえ家にいても『公園』と返信した。それくらい、雅といるのが楽しくて癒されて、俺にとってかけがえのない大切な時間だった。

 

 

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