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友達の定義とは

「いいだろ別に。だめかよ、散歩」

「いや全然いいよっ。なんか可愛いーって思って」

「はぁ?」

 

 散歩の何が可愛いんだ。意味がわからない。

 

「なぁ、シモンって呼んでいい?」

「もうとっくに何度も呼んでるだろ」

「ふはっ。そうだったっ。じゃあ俺のことは雅って呼んでっ」

「…………俺が?」

 

 影みたいな俺が……人気者の小嶋を……?

 

「もう友達だろっ? これからよろしくなっ!」

 

 え、いつ友達になったんだ?

 友達の定義とは……?

 


 今日は変な日だった。どっと疲れた。変なやつに懐かれた。

 そんなことを思いながら、いつものように学校帰り、ばあちゃんの入院先を訪れる。

 家の最寄り駅前にある病院。もう一年以上入院してる。

 おそらく、もう家には戻ってこられない。母さんには「覚悟しておいて」と言われてる。


「ばあちゃん」

「……あ、史門。今日も来てくれたの?」

「通り道だからね。ばあちゃんが嫌がっても毎日来るよ」

「私のことはいいから。早く帰って勉強しなさいな」

「ちゃんとやってるって」


 椅子に腰をかけ、今日も二人でたわいもない話をする。

 俺は、ばあちゃんが大好きだ。日に日に弱っていくばあちゃんに、少しでも笑顔で楽しい時間を過ごしてもらいたい。

 だから俺は、通話でしかスマホが使えないばあちゃんに、毎日SNSの使い方を教えた。毎日、丁寧に、根気よく。

 今では、俺の空の写真に“いいね”を押してくれるまでになった。


「昨日の写真、綺麗だったろ?」

「また無理したんでしょう? でも、あんなに綺麗な朝日がまた見られるなんて思わなかったわ。ありがとうね史門」

「ただの趣味だよ。昨日はたまたま早く目が覚めてさ」


 ばあちゃんが嬉しそうに写真を見てくれるから、俺は毎日SNSにアップする。

 ばあちゃんの“いいね”が、今日もまだ大丈夫(・・・)だと教えてくれる。

 でも、最近はベッドから身を起こすことすら困難になってきていた。俺は“いいね”がいつ途絶えるかと、毎日不安に襲われるようになった。


          ◇  


「シモーン!」


 弁当を手に雅がやってくる。

 雅はあれから毎日昼休み、ベンチにやってくる。

 昼休みだけじゃない。授業の合間にも教室にきて、俺の写真を眺めては「はぁ癒されたー」と戻っていく。

 雅に懐かれた副作用で、俺は急に友達が増えた。

 友達の定義とはっ?!

 そう声を大にして言いたいくらい『俺の友達』と自称する人が増えた。


 そんなこともあって、最初は懐かれて迷惑だなと思っていた。でも、一緒の時間が増えるにつれ、雅のそばがどんどん居心地の良い場所へと変わっていった。

 一番のきっかけは『ばあちゃん』だ。


「ばあちゃんがさ、シモンの写真のファンなんだ」

「え、雅のばあちゃんSNSやってんの?」

「いや? 俺が毎日見せてんの。てかいつも一緒に見てんの」

「マジか。じゃあ雅の“いいね”は二人分なんだな」

「そうっ! そうなんだよっ! 二人分なんだよっ!」


 雅もばあちゃんが大好きだと知って、急に親近感がわいた。

 そこから急速に仲良くなった。

 雅のことは、今は本当に大切な友達だと思ってる。

 

 

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