02 攻略
「確かに新たなダンジョンの処遇は発見した冒険者に委ねられておりますので、探索・報告・放置、どれを選択するのも自由です」
「ここまで来た以上、私に出来ることは全力でノアルさんをお守りすることのみ」
「皆さん、どうか慎重な行動を」
『マーリエラさん、堅すぎ』
『いきなり全階層踏破したいってわけじゃなくて、新しいダンジョンの様子を確認したいだけ』
『もし私たちの手に負えないほどの難易度だったら、即撤退して入り口を封鎖、そしてギルドへ報告』
『でも、このままクリア出来たらスゴいお宝ゲットかも』
『そのくらいの冒険したっていいよねっ』
おふたりの意見、どちらも理解出来ます。
というわけで、暫定リーダーである俺の意見です。
俺たちのパーティーは出来たてほやほやなので、お互いの実力やら何やらを知ったばかり。
なので、せっかくですから実戦でどこまでやれるかの検証に、このダンジョンを利用しましょう。
もちろん、明らかに難易度が高すぎるようでしたら、即時撤収。
大丈夫だったら、行けるとこまで行くって感じで、どうでしょう。
幸い、食糧など物資はかなり余裕がありますし、
採取専門冒険者の俺が言うのも何ですが、
たまにはこういう冒険するのも悪くないかなって。
どうでしょ、マーリエラさん、アンチさん。
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ぽっかり開いていた洞窟の入り口は、入ってすぐに下り坂。
下った先の小広間でのパーティー会議で、
行けるとこまで攻略と決まったので、
諸々準備を済ませたら探索開始。
今は、なだらかな下り坂を慎重に進行中。
えーと、これって自然洞窟型ダンジョン、で合ってます?
「はい、この手の自然洞窟型はマッピングがとても難しいのですが、そちらの方はお任せください」
流石はマーリエラさん。
もしかして司法官って、そういうのも講習で学んだりするのですか。
「もちろんです」
「サバイバル訓練でダンジョンに放り込まれたことも何度か……」
あー、思ってたよりもハードみたいですね、司法省の新人育成方針。
「もちろん全員では無く、特務任務志願者のみ、ですよ」
ということは、マーリエラさんも志願して特務司法官に?
「私は…………」
……それ以上は歩きながらする話しじゃなさそうですね。
後ほどじっくり。
ってか、随分長い下り坂ですね、これ。
『ヒカリゴケが多めだから、結構進みやすいよね』
『このコケ、あまり美味しくないんだけど』
コケの味って、もしかしてスライムの頃の記憶?
『ハッキリとは残っていないけど、断片的には』
『この子も結構苦労してたみたい』
『元々、鉱山育ちのスライムで、鉱物しか食べるものが無くてこんな身体になっちゃった』
『もっと美味しいもの食べたいってようやく外に出られたら、アイツにテイムされたんだって』
あー、それは災難だったね。
でも今は美味いもん巡りだって出来るようになったんだし、結果オーライかも。
って、もしかしてスライムの方は記憶以外に意識も残ってるの?
『この身体のベースだから、ほんの少し意識も残ってる感じ』
『会話できるほどじゃないけど、今の境遇を喜んでくれているのは分かるよ』
『取り込んだ獲物の方は、記憶と感情だけ』
なるほど、でもそれで良かったのかも。
もしあの若造の意識とかが残ってたら大変だったよね。
「皆さん、そろそろ次の階層ですよ」