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19 旅立ち


 あれからも、何やかんやとありました。



 例の"初心者向けダンジョン"は、


 問題が解決したことが確認され、現在一般の冒険者にも解放中。



 ただ、オープンした直後に問題を起こしたせいで、


 新人冒険者たちにはイマイチ不人気みたいです。



 本来は、あの周辺に冒険者目当ての宿やお店が出店される計画だったそうだけど、


 冒険者たちの間で悪い噂が広まったせいで肝心のダンジョン探索の方があまり盛り上がっていなくて、


 商機に敏感な商人さんたちはとっくに撤退しちゃったそうです。



 ただ、せっかくの初心者向け好立地ダンジョン、冒険者がガラガラでも放っておくのはもったいないってことで、


 今はエルサニアの軍や騎士団の訓練場所として利用しようという計画が進んでいるみたいですね。




 俺たちは、ぶらり旅の準備もとっくに完了していて、いつでも旅立てる状態。


 なのに出発していないのは、俺のわがまま。



 アシュトさんたちが帰って来るのを待って、


 ちゃんとご挨拶してから出発したいなって思ってたんですが、


 先日、届いた速達鳥の便りによると、


 どうやらお帰りはもう少し先になりそうなのですよ。



 マルミさんから旅商人修行の方をがっつりスパルタされちゃって毎日めっちゃ大変、とのこと。


 王都に戻れるのはまだまだ先のことになりそう(泣)、ですって。



 はいはい分かってますよ、アシュトさん。


 本当は、がっつりじゃなくてしっぽりなんでしょ。


 いいですよ、がっつりしっぽりふたり旅してくださいな。



 そんなわけで、そろそろ俺たちの方もぶらり旅再開ですね。



 ---



『結局、行き先未定?』


 そうだね、具体的な目的に縛られない自由な旅ってことで。


 それって何だか、俺たちらしいよね。



「私は、みんなで一緒に旅が出来れば、それだけで充分満足ですよ」


 ありがとうございます、いつも通り安全第一で行きましょうね。



 ただ、いくらなんでも最初の目的地くらいは決めないといかんよね。


 ってことで、何度も聞いて申し訳ないけど、おふたりの希望は?




『美味しいもの食べられるなら、どこでも!』



「みんな一緒なら、何処へでも」



 うん、そうなるよね。


 ここはパーティーリーダー(仮)として、


 リーダーシップの見せどころ、ですよ。



 ---



 エルサニア王都から延びる街道を、


 お馬さんモードのアンチさんの背に揺られながら、


 目指すは北西、アルセリア王国。



 とりあえず行ったことのないとこにおじゃましちゃおうってことで、


 王子生誕で国中が盛り上がってるというアルセリア王国を目指します。




「民があってこその国であると、善政を心掛ける王家」

「そんな王家を慕い、尽くす国民」

「小国だからこその幸せな一体感こそが、あの国の永きに渡る平穏の秘訣なのでしょうね」


 なるほど、いい感じにアットホームな国ってことですな。


 そりゃあ王子さまが産まれたら国民一同大喜びだよね。



『ずっと戦乱とは無縁だった豊かな農業国』

『王子様生誕のお祝いで大盛り上がりの真っ最中』

『とびっきり美味しいもの、期待しちゃっていいよねっ』


 もちろんですとも、宿屋も飯屋も屋台も、がっつり期待しちゃいましょ。



"伝統的食文化の豊かさこそが、その国の平和の長さの指針"


 きっとアルセリアならではの伝統料理が華盛りのてんこ盛りですよ。



『うひゃっ、楽しみっ』

『じゃあ、アルセリアまで全開で走っちゃっても、イイかな!』


 いいともっ!



 じゃなくて、


 ちょっと待った、アンチさんっ。


 お馬さんモードの全力疾走って、どれくらいスゴいの?



『たぶん『猪突』状態のゲレルダ大いのししのトップスピードより早いよ!』


 なるほど、分からん……



 異世界固有名詞は、まだ勉強中なのですよ。


 申し訳ありません、マーリエラ先生。


 解説、お願い出来ます?



「ゲレルダ大いのししは、エルサニア中央部に広く生息している大型のいのしし系の魔物ですね」

「固有スキル『猪突』を所持している個体が多く、『猪突』を使ったトップスピードを維持しての突進はとても危険です」

「全速で逃げる馬車を後ろからの突進で粉砕するほどの脅威、と一般では認識されておりますが、美味であることでも有名です」

「討伐に成功すれば、安定して高額な買い取り価格の恩恵はもちろん、美味しいお肉料理で食卓が賑わうという、まさに二重の意味で美味しい魔物ですね」


 相変わらずの詳細な解説、ありがとうございます、マーリエラ先生。



 えーとつまり、アンチさんのお馬さんモードでの全力疾走は、


 馬車より遥かに早く走れる魔物を凌駕する速度でイケちゃいますよ、と。



 ……それって不味くね?


 俺、常勝一流ジョッキーやヒャッハー騎馬民族みたいな乗馬なんて出来ないし。




『大丈夫だって、目をつぶってギュッてしがみついてれば、すぐアルセリアに着いちゃうからっ』



「それでは、私も準備を……」



 むぎゅっ



 ちょっと、マーリエラさんっ、


 そんなにむぎゅってしがみつかれたら背中が幸せ、


 じゃなくて、


 おじさんのおじさんな部分が王子さましちゃいますからっ。




『頑張れっ、おじさま!』


 ちょっと、アンチさんっ、


 そんなに急がなくてもアルセリア名物は逃げませんからっ、


 じゃなくてっ、



 暴走行為禁止ぃぃぃーーー




 あとがき


 ダンジョンの怖さが骨身に染みたノアルさん。


 予想以上に厄介な迷宮事情とか、


 予定通りにいかないアドリブ感とか、


 襲いかかる書類仕事の山とか、


 襲いかかってこないアレなラスボスとか。



 でもこれに懲りずにどんどこ冒険していただきたいです。



 つまりは、これからもこんな感じでよろしくお願いします。



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