13 モード
『式典、見に行かないの?』
うん、せっかく匿名扱いで譲渡したのに、
わざわざ騒ぎが起こる可能性のある式典に顔を出すこともないでしょ。
もしかしてアンチさん、式典とか見に行きたかった?
『えーと、お祭りの屋台とか……』
はい、了解。
式典がひと段落した頃にみんなで食べに行こうね。
ちゃんと"パーカーモード"で、だよ。
『もちろん!』
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エルサニア王都の噴水広場で開催された、
"新ダンジョン開放記念式典"
式典会場のある噴水広場には、
賑わう人々をお目当てにした、ずらりと並んだ屋台の数々。
いや、この人たちの方が屋台をお目当てに集まってきたのかも。
『全屋台制覇したい!』
よござんす、アンチさん。
今の俺たちは、例の報酬でそこそこフトコロぬくぬく。
屋台全品食べ比べだって夢ではないのです。
でも、アンチさんがマジで本気出すと国が傾いちゃうので、
ちゃんと味わって食べてね。
『もちろん!』
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俺の頭の上で屋台の美味をご満悦のアンチさん。
今は、パーカーっぽい服に擬態している、
通称"パーカーモード"
街中で散策する際、もっと気兼ねなく食べ歩きしたいな、とのことで、
本来のスライムモードやお馬さんモードよりも目立たない格好を考えて、
例のマーリエラさんとの共闘モードを参考にした試行錯誤の結果が、
この"パーカーモード"
この見事なパーカーっぷりのアンチさんを俺が着て、
パーカーのフードにひょいっと焼き鳥を持っていけば、
そのままパクリといただきます出来るのですよ。
『タレも塩も美味しい!』
ご満足いただけて何よりです。
ホントに屋台全種類制覇しちゃいそうな勢いですな。
マーリエラさんも、遠慮せずにね。
「もうお腹いっぱいですよ」
ぽっこりお腹、是非、後で拝見させていただきたい。
苦しかったら撫でたりさすったりしちゃいますから、
もっと遠慮無くどんどこイっちゃってくださいね。
『確かにらぶらぶな間柄だからセクハラじゃないかもしれないけどさ』
『もー、別の意味でお腹いっぱいだよっ』
それは朗報。
ではそろそろ、屋台散策もお開きってことで。
『スイーツがまだだよ!』
「ノアルさん、いじわるしてはいけませんよ」
おっと、申し訳ない。
でも不思議ですよね。
これだけ食べても重さが変わらない"パーカーモード"
流石はアンチさん、
大きさもテクスチャーも自由自在、
その上、乙女垂涎の重量可変能力も完備。
『……何ならヘビー級ゴーレムの重さも体感してみる?』
えーと、ファイトゼロ発の虚弱なおっさんですので、
あまりいじめないでね。
「今のはノアルさんに非がありますよ」
「宿に帰ったら一緒にお仕置きしましょうね、アンチさん」
『楽しみ!』
出来れば、俺も楽しめるお仕置き、希望……
『もちろん!』




