12 選択
歳を取ると月日の流れが早い、ってのはホントですな。
あっという間に式典当日です。
今日は"新ダンジョン開放記念式典"の日。
あれからいろいろありました。
命名権ですが、実は第三の選択肢があったのです。
①自分で命名
②オークションで譲渡
それ以外のやり方ですね。
俺が選んだのは、"匿名扱いで冒険者ギルドに全ての権利を譲渡"
全ギルドが、発見者としての俺たちの情報を秘匿。
つまり、発見者として公表された場合の権利も特典も全て放棄。
以降は、あのダンジョンには一般の冒険者として関わることになる。
要するに、名誉も面倒ごとも、まるっと丸投げ。
冒険者ギルドってのは、
何せ国の枠組みを超えた超国家的組織ですし、
そもそもダンジョン管理はお手のもの。
つまりこれこそが、任せて安心、俺たち安全、みんな安泰な、
ナイスこの上ない最上の手段。
えーと、実は俺たちにもがっつりメリットがあります。
しっぽ巻いて丸投げエスケープしたわけじゃないのですよ。
いかに採取専門とはいえ、俺だって冒険者の端くれ。
冒険者ランクなんていう格付けをされているわけで。
まあ、お察しの通り、ほぼ底辺だったのですが。
で、今回の件。
冒険者ランクってのは当然、実力のバロメータ。
ガシガシ高難度依頼をこなす実力者はどんどこ上がっていき、
のんきな採取専門冒険者なんてのは底辺すりすりが関の山。
そんなボトムなおっさんに降って湧いたような宝くじ案件、
それが"新ダンジョン発見"
めんどくさがり、じゃなくて、無欲なおっさんの、
"匿名扱いでの命名権譲渡"という行為は、
ギルドのお偉いさん方から、そりゃあ高評価だったわけで。
おかげさまで底辺なおっさんも、
それなりの一般冒険者へとランクアゲアゲですよ。
長々と語っちゃいましたが、
要するに、おっさんの下心とギルドの思惑がバッチシ噛み合いましたってことです。
めでたしめでたし。




