10 報奨
エルサニア王都目指して街道をぱかぱかと、
お馬さんモードのアンチさんにふたり乗り。
大丈夫? 重くない?
『返答次第では、マーリエラさんからお仕置きされるかも』
「このパーティーは優しい人ばかりです」
「いじわる言う悪い子なんていませんよ」
だよね、みんなホント優しいよね。
だからアンチさんも、前みたいに"おじさん"って呼んでくれると嬉しいです。
『"おじさま"の方がキュンとくるでしょ』
あー、確かに。
かなりキマスよ、それ。
でも、そういう態度は男の方が勘違いしちゃうから、程々にね。
『……本当に勘違い、っていうか鈍感』
「そういうところも含めて、全てがノアルさんらしさ、ですよ」
俺らしさとは、何ぞや……
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エルサニア王都に到着。
冒険者ギルドで、新ダンジョンの発見と、その概要を報告。
もちろんラスボスの挙動不審の件も。
ギルド内は、それなりに大騒ぎって感じですな。
ホールにたむろしてる連中に気付かれないよう、
すぐに小部屋に隔離されたので、
今のところ慌ててるのは職員さんたちだけですが。
口頭での報告はもちろん、
書類やら何やらで結構拘束されてます。
あまりにも手続きが煩雑で、マジめんどくさいです。
新ダンジョン発見って名誉に思う冒険者も多いんだろうけど、
俺としてはあまり嬉しくないんだよね。
ギルドからの暫定報奨金も、驚くほどってわけでもなかったし。
もっとも本番は、ダンジョンランクの査定が完了してからだろうけど。
まあ、こうして綺麗な事務員さんと差し向かいでアレコレ出来ちゃうのが、
レアイベント遭遇者への特別なご褒美、だよね。
だって、ギルドの受け付け嬢や事務員さんって、めっちゃレベル高いですよ、どこ行っても。
これってやっぱり、選考基準からしてそっち方向に極振りってことなんでしょ。
この異世界って、確かに素敵な乙女との遭遇率が妙に高いけど、特定の職種にこんだけ乙女の華園が集中してるとさ、ゲスじゃなくても勘繰っちゃうよね、いろいろと。
まさに職種プレイ!
なんちゃって。
「ノアルさんっ」
はいっ。
「命名権の方、どうされますか?」
命名権?
「新しいダンジョンは、発見したパーティーの代表者に命名する権利が与えられます」
「冒険者としての足跡を歴史に刻むことが出来るまたとない機会であり、その偉業を後世まで讃えられる大変な栄誉でもあります」
「命名の方は、ご自身や愛する方のお名前、パーティーネームなど、公序良俗に反するものでない限りは自由となっております」
おっと、いきなり大変なことに。
どうしよ、報奨イマイチなんてへこんでる場合じゃなかったよ。
「あの、もしよろしければ、"命名権"の譲渡も可能ですが」
ほえ?
「新ダンジョンの発見は冒険者さんたちにとっての朗報というだけではないのです」
「各ギルドや大手商会などの活性化はもちろん、その国の将来に影響を及ぼす国益でもあります」
「命名自体一個人の思惑に留めるべきものではないと考える方たちもおり、金額に糸目をつけずに交渉しようとしてきたり、争い事にまで発展したことも」
うわっ、勘弁してほしいですよ、そんな厄介ごと。
「今は、可能な限り穏便な譲渡方法として、オークション形式による競売が一般的となっております」
なるほど納得。
冒険者は名誉と報酬を天秤に掛けることが出来て、どうしても命名権が欲しい人たちも安全にゲット出来る手段があります、と。
ちなみに、過去のオークションの結果とか、知ることは出来ます?
「匿名性の高いオークションですので、落札金額も落札者の情報も公表されてはおりません」
「ただし、国が動くほどの案件ですので、漏れ伝えられた情報からの噂までは止められないようです」
「一説には、とある高難度ダンジョンの命名権オークションでは激しい競り合いの末、国が傾くほどの金額が動いたとか」
マジっすか、
国、傾いちゃったんだ……




