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短編 15 北風スイーティー

作者: スモークされたサーモン


 恋愛物が書きたーい! そんな思いで作った短編です。





 私は初めて恋をした。


 生まれて初めて恋をした。


 


 その日、お店は珍しく閑古鳥が鳴いていた。地元では隠れた名店として知られる洋菓子屋。


 こじんまりとした店は昔からこの地域の小さな洋菓子屋さんとして受け入れられてきた。


 洋風の外観に店内は狭いながらもアンティークの小物が飾られている。


 まるで物語の中に出てくるようなお店。


 オーナーの趣味が詰まった夢の店。


 このお店はそんなお店だった。


 だから閑古鳥が鳴いていてもそれはそれでそういう日もある、として普通の日として過ぎていくはずだった。


 だから私は今日も奴の背中を睨んでいた。


 メイド服。


 可愛くて可憐なメイド服。


 店員はメイド服。


 奴はメイドじゃないのにメイド服。


 ぐぬぬぬぬぬ。私はパティシエ。コック衣装。可愛くない。


「……あっちゃんの視線が背中に刺さってるんだけどー」


「……気のせい」


 調理場のドアから覗いてる事を気付かれた。ぐぬぬ。少しだけしか開けてないのに。


「……あっちゃんもメイド服着てみる?」


 奴はカウンターに座ったまま背中を見せて聞いてきた。あの背中に煮えたぎるカラメルソースをかけてやりたい。


「うひっ!?」


 ……勘のいい変態め。


 今日は珍しく人が来ない。だからこんな風に遊んでいられる。メイド野郎もいつもの接客スマイルはしていない。カウンターに座ってはいるけれど。


 店のなかはゆっくりした時間が流れてる。オーナーの趣味で鳩時計とか置いてある。カッチコッチという音が店内に響く。


「……珍しく暇だねー。あっちゃん」


「売れないと困るんだけど。ちょっと外に出て脱いでこい」


「あっちゃん……今日もキレてるー」


 メイド野郎の気の抜けた返事が店内に消えていく。


 私はパティシエ。私の作ったものがこの店には並んでる。商品は私の子供みたいなものだ。そしてその大切な子供を売り払うのがカウンターに座るメイド野郎の仕事。ぐぬぬぬぬ。許すまじ。


「あっちゃん、視線が痛いよ」


「私のベビーを売り払う貴様にはこれでも生ぬるい」


「あっちゃんの愛が重いよぉ」


 いつものじゃれあい。暇だから許されるちょっとしたお遊び。流石に私も本気で言ってる訳ではない。


 二割ぐらいだ。


 いつもならお客さんが沢山来てる時間なのに今日は一体どうしたのか。


 でもそんなときもある。


 客商売の基本は焦らないこと。


 オーナーはこの店で儲かろうとは思っていない。この店が誰かの幸せに繋がれば、という想いでやっている。


 私もオーナーのそんな気概に惚れてここのパティシエを務めさせてもらっている。


 だのにその店の店員がメイド野郎。


 やはり脱がして店の前に転がすか。


「うひっ!?」

 

 こんな平和で危険な昼下がり。私達はいつものように今日が終わると思っていた。


 だが、それが現れた。




 ドアベルがカランと音を立てる。客が来たのだ。私は急いでドアの陰に身を隠す。


 私の瞳は闇の邪眼だ。


 直面したものは皆泣く。


 それこそ赤ちゃんからお年寄りまで分け隔てなく。


 だから私はパティシエとして裏方の仕事に就いている。ちょっと目付きが鋭いだけなのに。


 客商売に絶望的なまでに向いていないのも理解している。


 理解しているが納得はしていない。だからあのメイド野郎が羨ましい。


「いらっしゃいま……」


 ようやく来たお客さんにメイド野郎が挨拶途中で固まった。外面が極めてよろしい奴にしては珍しい。


 どんな相手にもニコニコと営業スマイルをするのが奴の得意技。


 相手がちょっと気になった。


 チラリとドアの陰から覗いてみた。


 店の入り口。本来ならカウンターやメイド野郎が邪魔になって客は見えない。


 だが、見えた。見えてしまった。


 黒のワイシャツの上に白のスーツをまとったスキンヘッドの巨漢がそこにいた。ご丁寧にサングラスも着けていた。完全に『そっち』の人だった。


 ハゲの巨漢は店内を物珍しげに見渡すとまっすぐにこっちの方へと近付いてきた。


 私はこの時『あ、喰われる』と思った。ガチで。


 巨漢がどんどん近付いてくる。私はそっと調理場のドアを閉めた。


 ……接客はメイド野郎の仕事。


 私には私の仕事がある。


 それが大人というものだ。


「助けてあっちゃん!」


 バタンと大きな音を立てて調理場のドアが開かれた。メイド野郎が泣きながら入ってきたのだ。くそ、鍵を掛けておけば!


「あれはどう見てもヤバイ人だよ!」


「……多分お客だよ。ほら、調理場に入ってこないで」


 メイド野郎は調理場のドアを閉めて座り込んだ。


 この店には裏口なんてない。店の入り口が唯一の脱出口。どうにかしてこのメイド野郎を囮にして逃げなければ。


 調理場のドアには窓が付いている。チラッと見てみた。


 ハゲヤクザがカウンターの前に立っている。サングラスをしているので何処を見ているのか分からない。商品を見ているのだろうか。それとも私達をどう始末するのか考えているのだろうか。


 圧がヤバイ。とにかくヤバイ。


 メイド野郎は腰が抜けたみたいで床にペタリと座り込んでいた。女の子座りとは芸が細かい。いや、感心してる場合ではない。


 早く警察に連絡を、と電話を探した所で……。


「注文、よろしいか?」


 扉の向こうから声がした。


 ハゲヤクザは意外にも優しそうな声音であった。つまりあれだ。我らを殺る気満々ということだ。


「……私、初エッチもまだなのに」


 メイド野郎は泣いていた。私も泣きたいがそんな暇はない。


「黙れ変態。私が時を稼ぐ。警察に機動隊を向かわせるように言って」


「あっちゃん……」


 私にだって譲れないものがある。私の初めては優しくてかっこいい素敵な男性にお姫様だっこされながら愛を囁かれて一緒にメロンソーダを飲む。そこから更に顎をくいっとされて……


「もしもーし」


 扉の向こうから聞こえる声が私の妄想をぶち壊す。くそ。メイド野郎も私を変態を見る目で見てやがる。


「あっちゃん……それは流石に無理が……」


 くそ。こいつはどうしてこんなに勘が良いのだろう。


 と、ここで調理場のドアが開かれた。


「……取り込み中か?」


 ハゲのヤクザがそこにいた。


「……」


 メイド野郎は眼がぐるんとして顔から地面に倒れた。初めて人が気絶する瞬間を見てしまった。わりとホラーだ。


「……目的はなんですか」


 私の膝も笑っている。大爆笑だ。腰が抜けてないのが不思議でならない。しかし今ここで私が倒れたらこの店が終わってしまう。このヤクザによって店内がメチャクチャにされた挙げ句、放火されてしまうだろう。


 それだけは許さない。


「……買い物なんだが……その子は大丈夫か? 倒れているように見えるんだが」


「私の体は安くないがそれでも欲しいのか」


 言ってやった。私の声は震えていたがちゃんと言ってやった。ここで私の処女が散らされてもこの店が守られれば惜しくはない。ついでにこのメイド野郎も付けてやる。


「……え。ここってお菓子屋じゃないの? ケーキが欲しいんだが」


「…………え?」


 こうして私は一人のお客に出会う事となった。そしてこの人が私の初恋の人にもなるのだが……。


「……売春は良くないぞ?」


 ヤクザに言われたくなかった。ぐぬぬぬぬ。





「で、何が欲しいんですか」


「……全ての商品を半分ずつ、というのは可能か? 土産として大量に必要なんだが」


「……大丈夫ですけど」


 ハゲのヤクザは上客だった。


 とりあえず私がカウンターに立ち、接客対応をすることになった。メイド野郎は気絶したままだし。


 どんなに売れている店でも廃棄率というのはそれなりに高い。大体作った分の二割はどうしても売れ残る。もしくは売り物にならない。


 だから商品が半分も売れれば利益は確定する。


 正直小躍りしてしまうレベルだ。原価計算から商品の値段を出しているのでちょっとだけ割安感はあるはず。他の店のは高すぎるのだ。


 でも全商品の半分は中々にエグい量である。組でお祝いとかするのだろうか。


「この店のパティシエか?」


 箱を組み立ててケーキをずんどこ入れているとそんなことを聞かれた。ここで私の取れる選択肢は二つ。


 肯定するか否定するかだ。


 このヤクザがそんなことを聞いてきた。ということはヘッドハンティングだと思っていい。きっと傘下の組織で馬車馬のように働かされて最後はシャブ漬けになって風俗行きだろう。


「いえ、違います」


 なので嘘をついてやった。なお、調理場の方にはメイド野郎を放置したままである。あれをパティシエとして扱うのは無理があるので余計な事は言わないでおく。


「そうか」


「そうです」


 ヤクザは何やら思案していた。やはり傘下の組織でパティシエ不足なのだろう。


「ではお代はこちらに」


 中々にエグい値段になった。ケーキの箱も巨大なものが三つ。私には持てない重さである。


 だがヤクザはさくっと支払いを終えると軽々と箱を持って店を出ていった。


 両手が埋まってるのに入り口のドアを器用に開けていた。


「……あれがヤクザの実力か」


 丁度その時、鳩時計が鳴き始めた。店内がいつもの店内になっていく。そんな気がした。


 その後メイド野郎を起こしたり掃除したりと大変な一日になった。ヤクザが消えてからしばらくすると客足も戻り始めた。


 なので泣きじゃくるメイド野郎をぶん殴って接客させた。


 勿論着替えもさせていた。メイド野郎がダサいジャージ野郎である。


「私の初めてが……」


 とすすり泣いているのは無視した。お前男だろ、という突っ込みは言い飽きた。


 そんなこんなでその日は暮れていった。



 そして次の日。


「今日も半分ほど購入したいのだが……可能か?」


 ヤクザがまた来た。今度は朝一だ。


 今日は紫のスーツにエナメルのシャツである。なんてセンスなんだよ、おい。


 メイド野郎はカウンターの席に座ったまま別世界へと旅立っていた。さっきトイレに行ったばかりだから多分大丈夫だろう。


「……まぁ可能ですね」


 そして私がケーキの箱詰めをしていく。私のベビーがこのあとヤクザ達に喰われていく。それを思うと複雑な気持ちになる。


「……明日も買いに来たいのだが……大丈夫か?」


「……大丈夫ですけど」


 このヤクザ……上客だ。思わず笑みが溢れそうになるのを我慢する。


 この日も箱は三つになった。そしてヤクザはその箱を軽々と運んでいった。


「……ヤクザも甘いものが好きなのかな」


 そう独り言を呟いてからメイド野郎を叩き起こす。


「……しくしく。セカンドバージンも奪われちゃった」


 とりあえず無視して午後の分のケーキを焼いた。


 

 そして次の日。


 ヤクザは来なかった。


 ヤクザは来なかったが大量注文があったので店に影響はない。むしろウハウハだ。


 メイド野郎も今日は元気だった。


 この日はオーナーも店に来てくれた。オーナーは私の手を握って給料アップを約束してくれた。わりと貰ってるから大丈夫と言ったのに押しきられた。メイド野郎は何故か据え置きだった。


 給料アップは嬉しいのだが……私はオーナーから『売春はダメよ! 絶対にダメだから!』と念を押された。


 私はバージンなんだけどなぁ。


 その日は微妙な空気が店内に漂った。メイド野郎はとりあえず殴っておいた。



 次の日。この日はお店の定休日だ。


 邪眼持ちの私には休日なんて罰でしかない。


 ひとまず近所のデートコースを巡ってイチャイチャしてるカップルを我が邪眼にて破局させる事にした。


 駅ビルの催し会場ではぬいぐるみ祭りなるものもやっているという。


 締めはここにしよう。そう決意して家を出た。


 



 ……何故だ。何故この世界には神がいないのだ。


 イチャイチャしてるカップルは我が邪眼を見ることすらなかった。大きな公園でも。小さな遊園地でも。商業施設の大通りでも。私は路傍の石扱いだった。


 私はひたすら惨めな思いをしただけだった。


 かくなるうえは……。


 決意を決めた私はぬいぐるみ祭り会場に突撃することにした。ここならカップルはいなくとも子供達がいるだろう。こいつらを泣かせて憂さ晴らしをしてやる。


 私はダークサイドに堕ちていた。全てはイチャイチャしてるカップルが悪いのだ。私は悪くない。


 駅ビルの催し会場に到着し、子供達で賑わうぬいぐるみ祭りの会場へとアスリート走りで駆け込もうとしたその瞬間。


 私は捕獲されていた。


 キグルミの熊にである。


 大きなキグルミである。中の人は相当巨大なのだろう。私は熊に抱き締められて埋もれていた。腹毛がもふもふで邪念が消えていく……ような気がした。


 私を捕獲したぬいぐるみ、それはこのぬいぐるみ祭りのマスコット『ハイパーベアー様』と言うらしい。


 可愛らしい見た目に反して名前は尖っていた。サイズもおかしいし。


 でも、この巨大なぬいぐるみはこのお祭りのヌシ、的な存在らしい。何となく納得した。私の後ろに子供達の列が出来ていることからそれは確認できた。


 私も列の後ろに再度並ばせて貰った。子供達の母親も並んでいた。ベアー様はモテモテだ。


 ちっこい子はベアー様の肩に乗せてもらったりもしてた。


 でけぇ。なんか……でけぇ。


 存在の格、その違いを見せつけられた気がした。


 子供に憂さ晴らししようとしてた矮小なる自分を省みて凹んだ。会場の片隅で凹んだ。


 べあーしゃまー、と子供達が熊のぬいぐるみに抱きついている。私はなんて事をしようとしていたのだろうか。


 とりあえず私も『べあーしゃまー』と抱き付いておいた。頭を撫で撫でして貰ったので、しばらくはダークサイドに堕ちることはないだろう。


 会場でミニベアー様を購入して家に帰った。私の宝物に認定である。



 そして次の日。


「あっちゃん……大変だよ」


 メイド野郎が珍しくケーキを焼いてる調理場にやって来た。


 ここは私のテリトリー。無断で入る相手には決して容赦しない。それがたとえオーナーであっても。


 そんなところにメイド野郎である。


 ケーキを焼いてる段階なのでまだ店は開いていない。開店前の準備をしているはずなのだ。


 だのにメイド野郎が来た。


「つちのこでも出た?」


 それくらいの出来事が起きたのだろう。というかそれくらいでないと許せない。調理場は衛生上、何かとうるさいのだ。


「……熊が来たの」


 ……ここは北海道じゃないよ? 




 コック衣装を脱いで向かった開店前の店内。


 鳩時計の前に熊がいた。


 それは巨大な熊だった。


 熊のキグルミだった。


「べあーしゃまー!」


 というかベアー様だった。


 私は童心に返ってベアー様に抱き付いた。やはり腹毛のもふもふ感がたまらない。抱き締めながらも私の頭を撫で撫でする優しい手付き……間違いなく先日のベアー様である。


「……あっちゃんが喰われてる!?」


 何かノイズが聞こえるが気のせいだろう。


 ベアー様タイムはケーキが焼き上がる音が鳴るまで続いた。


 


 その後、一通りの調理を終えた私は店内で待っていたベアー様の元へと直行した。


「べあーしゃま。今日はどうしたの?」


 ベアー様はペンと紙を持っていた。さらさらとペンを動かしていく。器用だ。


『ケーキが欲しい』


 とまずは見せてきた。なるほど。今日はお客様として来たのか。


『大体ショーケースの中身、半分は欲しいんだが大丈夫か?』


 ベアー様の書いた紙を前に私は固まった。


「半分!? すごい量になりますよ?」


 だからメイド野郎が反応した。


 ……いや、ベアー様はベアー様だ。あのヤクザと同じ文言を使っているのは偶然でしかあるまい。


『手土産として必要なのだ。祭りのスタッフとか沢山いるのでな』


「……祭り。今駅ビルの上でやってるぬいぐるみ祭りですか? 子供向けっぽくて私は行ってないんですよねぇ」


 ……ベアー様。いやいや、ベアー様だし。


「そういえばこの前の大量注文があそこの駅ビルでしたけど……」


『うちだ。みんなここのケーキが大好きになってな』


「べあーしゃまー!」


 よい。余計な事は考えずに私はベアー様に甘えるのみ! そう! 今の私はチビッ子あっちゃんなのだから!


 その後の詳しい記憶は私にはない。とりあえず甘えまくった。


 べあーしゃまは箱を三つ抱えて店を後にした。器用だ。器用すぎて惚れる。


「……あっちゃん。あの人と知り合いでしょ?」


「……」


 ベアー様がいなくなった店内。メイド野郎がニヤニヤしながら聞いてきた。私には答えられない。ベアー様はベアー様なのだから。


 というかこいつは気付いてないのだろうか。あれだけ勘が鋭いのに。


「あっちゃんに春が来たかー。相手が熊なのがあれだけど」


「熊ではない。ベアー様と呼べ」


「はいはい、べあーしゃまね」


 ぐぬぬぬぬぬ!


 こうして私の初恋は始まった。




 この日から数日間。私は仕事を終えるとベアー様の元へと直行した。駅ビルの催事場は日に日にベアー様を求める人が増えていた。


 なのでベアー様とのハグも子供優先となっていた。問題ない。私の見た目は中学生だから。場合によっては小学生並に見えることがあるらしい。錯覚だな。


 ベアー様に癒される日々。まさに天国だった。しかし天国は終わりを迎えることになる。


 ベアー様が店を訪れてから四日後。ぬいぐるみ祭りは最終日を迎えたのだ。勿論私はメイド野郎と一緒に会場へと赴いた。


 これにてベアー様ともお別れかと、多くの人が会場に訪れていた。その多くが人妻なのは多分気のせいだ。


 ベアー様とのお別れハグ。


 その列は途切れることが無かった。本当に途切れなくてスタッフの人が泣いていた。


 途切れぬお別れ会に終止符を打ったのは他ならぬベアー様からのお知らせであった。


 今回のぬいぐるみ祭りは思っていたよりも好評だったようで駅ビルの一角にベアー様のぬいぐるみショップを作る計画が出ているという。


 お祭り最終日は涙の別れではなく、喜びに沸く『お祭り騒ぎ』となったのだ。





 そして私の日常である。


 今日もケーキを焼く日々に変わりはない。


 いつものようにケーキを焼いていつものようにメイド野郎の背中を睨む。そんな日々が続いている。


 ハゲヤクザは頻繁に店に来るようになった。相変わらずメイド野郎は気絶するけど。


 ヤクザが買う量は激減した。もはや上客ではない。


 だがそれでも構わない。


「今度はいつベアー様がショップに来るんですか。吐いてください」


「……次の土曜には」


 週末はベアー様で決まりだ。

 

 私は初めての恋をした。


 それは人ではなくてキグルミだったけど、後悔なんて微塵もしていない。


「そろそろ私もいい年なのでベアー様に食べてほしいのですが」


「……考えておこう。いや、伝えておこう」


 今日も店内で鳩時計が鳴いている。いつもの日常。いつもの毎日。きっとこれからもこれが続いていく。


「……週末はまたケーキが山ほど必要になるだろうか」


「そりゃベアー様カフェなんて企画を立てれば当然です。私も行きますから」


「……そうか」


 ハゲのヤクザは少し微笑んで私の頭を撫でてくる。


 私の初恋はまだ始まったばかりだ。


 


 今回の感想。


 最後をもう少し書いた方が良かったかな? 何となく分かりにくい気もする。むむむむ。



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