3-11
ラヴィニアは、入口の廊下で護衛してくれるアビゲイルを残し1人ベッドに座り込んだ。
その前には持ち出した数枚の紙と、ドライフラワーとなったホワイトライティアがハンカチに包まれている。
1枚紙を取り見るのはホワイトライティアについて書かれている紙で、挿絵のように描かれたホワイトライティアに矢印が書かれ何か補足が書いてある。
「…………ホワイトライティアは年に一度咲く精霊と妖精の加護をふんだんに受けた奇跡の花で、その効能は多岐にわたる。その為長年の研究を行い……人工的な栽培に……成功した!?」
詳しく見れなかった紙の内容に目を見開くラヴィニア。
黙って目で文字を追いその内容を理解していくと、手から紙が滑り落ちる。
慌てて他の紙も見ると、どんどん知らないホワイトライティアについてが書かれていて、それは研究の失敗もかかれていた。
「……まさか、こんな事が」
震える手で紙を見比べ、ドライフラワーを見つめると、部屋にノック音が響いた。
驚き跳ね上がったラヴィニアは慌てて布団を被せ、紙とドライフラワーを隠し扉の前に来ると再度ノック音がした。
「は、はい」
「ラヴィニア様、サーシャ殿下が来られました。」
「わ、かりましたわ。どうぞ」
振り返りベッドを確認してから返事を返すと、ゆっくり扉が開いた。
「夜分に悪いな」
「いいえ、どうぞ」
ソファを進めて暖かいお茶が用意されてるポットからコップに入れてサーシャの前のテーブルに音を立てることなく置くと、向かいの1人用椅子に座った。
「……ラヴィニア嬢、さっきの話を承諾してくれてありがとう。困っていたな?」
「まぁ、わかっていてそのようなお顔をなさるのね?」
口の両端を持ち上げて頬杖を付き言うサーシャにラヴィニアは呆れたように答えた。
「まぁ、ラヴィニア嬢もわかる通り教会からの頼みを簡単に無下には出来なくてな。しかも聖女絡みだ。……ラヴィニア嬢には苦労を背負わせるが頼む」
頭を下げたサーシャに目を丸くして腰を浮かせる。
「お、おやめ下さい!殿下が頭を下げるなどあってはいけません!」
「俺は出発前に君を守ると宣言していた。それなのにむしろ危険を承知で頼むことになるんだ。頭くらい下げるさ」
「……サーシャ殿下」
真摯に謝るサーシャに胸の前で手を組み小さく頷いたラヴィニアは、深く座り直した。
「畏まりましたわ。聖女様との同行しっかりと務めさせて頂きます。……殿下?危険とはルグニカの王についての悪癖の事ですわよね?他に何かあります?」
目を細めながら聞くと、サーシャは首を傾げた。
「他に何かあるのか?」
「……いえ、なんでもありません」
一瞬ベッドへと視線を向けたラヴィニアは、すぐに柔らかく微笑んでみせると、サーシャが眉を上げラヴィニアをジッと見る。
「何か気になる事でもあるのか?」
「……いいえ、今は」
「今は……か。」
ふぅ……と息を吐き出しお茶を飲んだ後椅子に寄りかかる。
目元に手を乗せて視界を遮ったサーシャは酷く疲れている様子だ。
「……ラヴィニア嬢、聖女マリアの相手はなかなかに疲れると思う。上手く息抜きをしてくれ」
「わかりましたわ」
力を抜いたサーシャをコロコロと笑って返事をしたが、スカートに隠れた足は不安で地面を強く踏みしめていたのだった。
人目もあると早めに退出したサーシャを見送った後、ラヴィニアは急いでベッドに戻り震える手で布団を捲った。
上手く隠れていた紙の存在をサーシャに伝えなかったのは、ここが教会であるから。
自分の安心出来る場所でゆっくりと話をする必要があるのだ。
なにか知っているようなユンリにも出来たら同席して貰いたい所だが、それはサーシャに相談してからの方がいいだろう。
まだ全てを見てはいないが、それよりも突然誰かが来たらと思う恐怖が強くラヴィニアは綺麗に折りたたんだ紙とドライフラワーを衣装ケースの底にしまい込んだ。
誰にも気付かれない様に二重にロックを掛けて、ベッドのすぐ横に置いて浅い眠りをとる。
明日も早くから行動する為できる限り休んでおかなくてはいけないからだ。
「……大丈夫、サーシャ殿下達にお伝えするまで私が隠しておくだけ。それだけですもの」
ラヴィニアは無意識に震える体を両腕で押さえ込み何とか目をつぶった。
部屋に鍵を掛けて、さらにロックを掛け安全面を強化したラヴィニアは、やっと少し安堵したのだった。




