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3-10


 ラヴィニアは手に持ったホワイトライティアのドライフラワーをそっとハンカチに包み手提げの中にそっとしまい込んだ。

 それを見ていたアンジェリーナは眉をひそめて見ている。


「……ラヴィニア、それ大丈夫なの?」


「わかりません。ですがこれは持ち帰ら無ければいけないものだわ……アンジェリーナ、内緒ですわよ」


 しっかりとしまったラヴィニアを見て不安そうにだが頷くアンジェリーナの手を引き、紙の束があった部屋をソッと覗いた後誰も居ないのを確認してから部屋に入った。

 

「ねぇラヴィニア、早く部屋に帰ろう?ここに居るのマズイと思う」


「えぇ、出たいところなのですが部屋が施錠されておりますわ。開けて出る事は出来ますけれど、閉められないから中にいた事に気付かれてしまいませんかしら」


「……鍵の確認に来たくらいだしね」


 2人は扉の前で立ち尽くし顔を見合せて居ると、ラヴィニアは机から離れた部屋の隅に1枚紙が落ちているのを見つけ、それを取り見てみる。

 そこにもラヴィニアの顔を青ざめさせる内容が書かれていた。

 アンジェリーナが紙を見ようとした時、ラヴィニアはそれを丁寧に折りたたみ膨らみはざめた袋に入れる。


「ラヴィニア、それは……」


 困惑するアンジェリーナに強い眼差しを向け黙らせたラヴィニア。


 沈黙する室内に突如扉が開き2人は声にならない悲鳴を上げ、身を寄せあって扉に振り返った。



「……こちらにいましたか。さぁ、早く出て、今のうちに」

 

 ユンリが周りを警戒しながら言うと、ラヴィニアとアンジェリーナは顔を見合わせてからすぐに部屋を飛び出した。

 ユンは閉める直前室内をサッと見てから閉め、何かの工具ケースを取りだす。

 片手サイズの小さなケースだが、その中には12個程の何に使うかわからない小さな道具が綺麗に並べられていた。

 そのうちのひとつを取り、鍵穴に差込みカチャカチャと動かす。

 銀色の小さな突起がある棒状のもので、それを使って鍵を締めようとしているようだ。


「……よし、いいですよ」


 カチャカチャと数回音を立ててから、ユンリは中腰からしっかりと立ち上がり軽く腰をさする。

 ドアノブを1度回し施錠しているのを確認した後、銀の棒を工具ケースにしまってユンリは2人を促して足早に歩き出した。









「……ここまで来れば安全です」


「ユンリ、大丈夫でしたか?司祭様とお話されていましたでしょ?」


「あと安全って?何かあったの?」 



 泊まる用の客室が並ぶ廊下に来てからユンリはソッと振り返りながら言うと、ラヴィニアは足を止めること無く聞く。


「……教会は、皆が思っているほど安全で清廉な訳じゃない。教会にも派閥があって過激派もいる。」


「……派閥」


「詳しくは言えないけど、不用意な事は出来ないから」


 ユンリは人知れず、教会に来てからピリピリと何かに警戒をしていた。

 最初はわからなかったが、先程の司祭と対面する前はかなり警戒しているとラヴィニア達にもわかるくらいに。

 ラヴィニアは手に持った袋をちらりと見てから、ユンリを見た。


「……あとでお話して下さいます?」


「今すぐは難しい。……聖女がいるから」


 最後の言葉は小さく、静かな廊下でもやっと拾える位の声量だった。


「……では、詳しくは後程に致しましょう」



 ラヴィニアに頷いてみせると、正面から早足で近付くアビゲイルを見つける。


「ラヴィニア様、お側を離れて申し訳ありません」


 探していたのか、軽く汗をかいているアビゲイルは、先程までサーシャやフロリアンと今後について話をしていたようだ。

 教会内で安全だと判断したサーシャが、ユンリにラヴィニアの傍に居るように伝えてからアビゲイルを連れて行ったのだ。

 その時間を利用して入浴に行ったのだが、思わぬ出来事と遭遇していた。ラヴィニアは冷静に微笑みアビゲイルを見つめる。


「いいえ、特に何もありませんでしたから大丈夫ですわ」


「そうですか、よかった」


 ホッと息を吐き出したアビゲイルが、しっとりと濡れた髪をかきあげラヴィニアを、そしてアンジェリーナとユンリを見た。


「後程サーシャ殿下が少しラヴィニア様のお部屋へ訪問するから時間を開けて欲しいと言付かっております。聖女様の件についてのようです。」


「……わかりましたわ」


 頷いたラヴィニアを見てから安心したように笑ったアビゲイルはラヴィニアの護衛につき部屋へと戻って行った。

 途中メイド用に用意された3人部屋へとアンジェリーナとユンリが入り、別れた後ラヴィニアはアビゲイルを見上げる。


「アビゲイルは今日このままお部屋の前で待機なのですか?」


「はい、0時までですのであと数時間ですが」


「そうですか」


「どうかしましたか?」


 わざわざ確認して来た為、心配そうな表情を見せるアビゲイルだったが、微笑んで首を横に振るラヴィニアの次の言葉に納得して笑った。


「いえ、全てが終わってエスメリアへと帰るまでまだまだ日にちが掛かりますから、アビゲイル達護衛の皆様もお休みが取れるか心配しただけですわ」


「ありがとうございます、サーシャ殿下が配慮してくれています」


「……安心しましたわ」



 アビゲイルに微笑み返してから、ラヴィニアは自室として借りている客室へと戻っていった。



 

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