2-23
現在ファイライトは、ラヴィニアの父である宰相リーンハルトを中心に、ラティス、そして官職達と話し合い進めている。
ラティスはサーシャについて視察をしながらファイライトの今後について決めなくてはいけないのだ。次期王として。
すぐに全てを決める力は今は無い為、リーンハルトに助言を貰っているのだ。
「……では、どんなに急いでも復興着手まで早くても1年かかるということ?」
「そうです、人が減った事は勿論ですが復興に必要な資金含め現物を集める為のツテがファイライトにはあまりに少ないのです」
資金繰りは勿論だが、復興にかかる物資がたりないのだ。
これはエスメリアの国でも集めてくれる手筈にはなっているが、国丸ごとの量をすぐには準備できない。
また、新しく街づくりを始めるのに当たってエスメリアの傘下に入ったファイライトはその技術も含めた街づくりをする。
つまり、あの雪国にも列車が走ったりするのだ。
その下準備だったり、現地確認だったりとすることは多々ある。
一から雪国に合った設計をして更には街や家の建築も話し合いが必要だ。
いきあたりばったりでは出来ないのだ。
「…………だが、その1年の間、我が領民はどうなる?流石に1年の生活をエスメリアに賄えとは言えないだろ?」
「……その事ですが、平民は既に働き出し生活を初めて居ます。まだ動いていないのは城に居ない貴族だけですよ」
「え!?……そうなのか」
「元々平民は働き、それで得た給金で生活を行います。場所がかわれどもすることは同じなんですよ」
「じゃあ、他の貴族も……」
「無理ですじゃ」
全ての髪が真っ白に変わった1番年配の官職が鋭い視線でラティスを射抜いた。
「……無理?」
「貴族は自分の領地を守る代わりに平民から税収を取り生活しとる。その領地が無い今、何をすればいいのかと右往左往しておるよ。勿論全員では無いがね」
長い顎髭を片手で撫でながら言うと、ラティスは、そうか……と呟いた。
働き方を知らない貴族達にはこの1年、いや今後も別の収入の仕方を模索させなくてはいけない、と考え直す。
黙って考えるラティスをリーンハルトは黙って見ていた。
現王よりも現状を見て考えるラティスに少しだけ未来を見始めていた。
エスメリアの皇帝や、皇太子であるサーシャにはまだまだ足りないことが多いラティスではあるが、あの自分に甘く他人の話に耳を貸さなかったラティスが、国に向き合って真剣に考えてる。
それは凄い変化だった。
一時は父王であるサラバンと同じ道を歩むのではと思われたラティスのこの変わりようは目を見張るものがある。
「…………国の再建の前にこっちをどうにかしないといけないか」
「そうですね、家が無くなった貴族は生活用品を持ってくることも出来ていません。その為宝石や装飾品、ドレスなどを売って生活費にする事が出来ないので」
元々別の事業をしている者や、家から財産を持ってきた者は生活費を稼ぐ、又は売って得る事が出来るが、それ以外は難しいものがある。
また、財産を売るにしても限度がある為何らかの金策を行わなければならなかった。
こんな時、貴族よりも平民の方が逞しいのがよく分かる。
「……何をするべきか」
金策の為に悩み出すラティスは、今自分がしている事を思い出し、パッと顔を上げてリーンハルトを見た。
「なにか、ここで学べばいいのではないか?僕がサーシャ様に学んでいるように」
それを聞いてリーンハルトは嬉しそうに笑った。
「はい、それを提案するつもりでした。ただ学ぶのではなく、仕事として請け負って頂き、一から学ぶ。そしてエスメリアの技術を学び国の再建後に運営を貴族が中心に行なう。勿論、エスメリアの国が中心に運用して頂くのがよろしいかと。」
「なるほど、ここでエスメリアの技術を学ぶのだな……」
「勿論1年で全てを理解できるとは思っていません。そこら辺は皇帝に話をして詰めていけばよろしいかと。なにはともあれ、皇帝にこの話をする所からですね」
自分の意見を聞いてくれたリーンハルトは肯定してくれた事で、自信の無かったラティスは少しだけ笑みを見せた。
「謁見の申し出をする。」
「謁見までにもう少し細かい内容を考えて置いた方がいいかと思いますじゃ」
「……わかった」
ある程度話をしたラティスは自室に戻りながら先程の内容を反芻した。
これを先に父王に伝えてから謁見へと進む予定である。
ラティスは一旦足を止めて、悩んだ結果向きを変えた。
まだ日は高くラヴィニアの元へと行っても差し支えない時間の為、色々話がしたいラティスは行き先を変えた。
「まぁ、ラティス様如何なさいましたか?」
突然の訪問に目を丸くしながらも室内に迎えたラヴィニアはすぐにアンジェリーナに紅茶を頼み席へと促した。
「突然来て悪い」
「お気になさらず。何か御用がありましたのでしょう?」
「……うん」
ラティスが話したのは先程の内容だった。
貴族の復興着手までの1年間、生活費を貰うと共にエスメリアの技術を学ぶ。
「……どう思う」
「……とても良いかと思います。復興し始めたとて領地が整っていない為整備は勿論、納税など出来ようはずがありません。今のこの状態で貴族だからと何もせずに居られるはずもありませんから、技術を学びエスメリアの技術者の元で復興の足がかりになるべきです。なにより、その技術は何者にも変え難い宝になりえます!」
私が学びたいくらい、と目を輝かせるラヴィニアに思わず苦笑したラティス。
やっとまともに会話をして、実際にはよく変わる表情や、変態じみたの好奇心を目の当たりにして、ただの無表情な小言を言う婚約者では無かったのだな、と認識を改めた。
そこに恋愛感情はやはり無かったが、良好な関係を築ける事が出来るのではとさえ思った
「……それに、普段皆さんがどのように学び仕事をしてどれくらいのお給金を頂いているのか知るいい機会かもしれません」
「ん?」
「中には貴族ということを盾にして傍若無人な態度をする方もいらっしゃいますから。今後エスメリアの傘下に入る我が国は、復興の際にエスメリアの皆様の指示に従い動きます。そこに不満などが出ては困りますし……」
そこで会話が途切れラヴィニアは紅茶で口を湿した。
先を視線で促すラティスに、ラヴィニアは息を吐き出した。
「……きっとこの先情勢はかわります。今までの勢力はバランスを崩し、1番強かった我がアッティリアとて、エスメリアの介入によりどうなるかは未知数となりました。だからこそ、今から身を立てていく必要があるのです。復興後も変わらず領民を守り統治出来る者である為に。…………こういう時は平民や領地を持たない貴族の方が精神的に強いですね」
「……そうか、そうだね。だからこそ今が正念場だ」
「はい、そう思います」
「……うん、なんだか整理が出来たよ、ありがとう」
「いいえ、お役に立てて良かったです」
安堵したように笑ったラティスはラヴィニアに礼をしてから、扉付近でアンジェリーナと話したあと出ていった。
「変わったね、ラティス殿下」
「そうですね、変わらざるを得ないのでしょう……きっと、私たちも」
「……そうだね」
強い力を維持し、凄まじい影響力を持っていたアッティリアも、エスメリアの傘下となる今はその地位も磐石なモノではなくなった。
その為、アッティリアの後ろ盾の為に婚約者となったラヴィニアはこの先どうなるのか。
誰も何も言わない、むしろ言わないことが余計な不安を煽ってしまう。
そう、地位が落ちるのなら、時期王妃はラヴィニアでなくてもいい。
むしろ、エスメリアから王妃にと娶るのが1番だろう。
それはラヴィニア自身が一番わかっていた。
だから、口には出さずとも未来の自分が不明瞭になり困惑しつつも、今は生活の立て直しが先だとその不安を押し込んだのだった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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