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2-21


 あまりにもお花が咲き乱れたラティスの頭にラヴィニアの頭が一気にガンガンと痛みを発した。

 手を当てて深い深いため息を吐き出すと、ラティスは心配そうにラヴィニアを見る。

 今までにないラヴィニアへの気遣いに普通なら喜ぶだろう。

 しかし、目を座らせたラヴィニアはラティスを見たあと口を開いた。

 それはまさにマシンガントーク、ラティスの言葉を遮り叱りつけた。


 以前は一夫多妻制の話もあったのだ。

 それをしない理由もちゃんと存在しているのに、ラティスはいい案だとばかりに笑顔を振りまき言うのだ。

 後ろ盾が必要だからラヴィニアとの婚姻はする。

 でも、アンジェリーナを離せないから女性を複数娶れるようにする、と。


「我が国は、遥か前一夫多妻制でした。ですが!その結果、王位争いが耐えない為に現在の一夫一妻に変わったのです!当時の王以外のご兄弟様方が争いにより亡くなる事が何度も何度も繰り返されたから!それは歴史に刻まれ勉学に含まれる内容です!何故それを知っていてそんな話が出るのです!!まさか、知らないわけありませんよね!?」


「い、いや、知ってるけど……君たちは仲のいい友人なんだから大丈夫だろ?」


「大丈夫な訳がありません!なんですか、自分がいいように解釈するその頭は!自分の事しか考えられないのですか、その花畑満開の頭は!!」


「そ……そんな酷い事言ってる?」


 立ち上がり叫ぶように言うラヴィニア。

 そんな姿を初めて見たラティスは逃げ腰になっていた。

 淑女という仮面を脱ぎ捨てたラヴィニアは確実にブチギレている。


「まず!例えば、もし、仮に!一夫多妻制となったとします!」


「そんな強調しなくても……」


 小さく反論したらラヴィニアから鋭い視線が飛び肩をビクリと弾ませた。

 

「私とアンジェリーク、貴方が寵愛を向けるのはアンジェリークです。ですが、貴族の位や後ろ盾の関係で正妃になるのは私でしょう。」


「う、うん」


「そこで、私よりアンジェリークを優先するあなたを見て周りの貴族は王にするのはアンジェリーナの子だと密かに思うでしょう」


「え?そんな事……」


「その可能性は高いのです。寵愛を向ける人が居るのなら、その場所へ足繁く通うものです。ならば、子供が出来やすくなるのも必然です。第1子はアンジェリーナの子になるでしょう」


「アンジェリーナの子供……」


「妄想でアンジェリーナに子を生ませないでください」


 明らかに妄想しているラティスにラヴィニアはピシャリと言い放ち、また肩をビクリと跳ねさせた。


「そうなったら、摂政を父に持ち後ろ盾がしっかりしている私より男爵家の娘で実家が商家であるアンジェリーナの方が援助すると後ろ盾になる事で口出ししやすくなります。うしろからアンジェリーナを操ってしまうのです。」


「……そんな、そんな事させないよ!」


「実際に昔に起きた実話なのですよ、この国の歴史です。そしてそれは、一夫一妻制になった時に争いはほぼ無くなりました。」


 ラティスはラヴィニアに縋り付くような表情で見た。


「……私は一夫多妻制制については反対です」


「ラヴィニア!ではどうすればいい!?」


「答えは最初から決まっております。…………諦めるのです、アンジェリーナを。貴方が王となるのなら。なにより、貴方の後の世代の王はどうするのです。私たちは仲が良いから大丈夫など、次代の王には当てはまりません。必ず争いがおきますよ。後のことを貴方は考えておられるのですか?」


 絶望した表情でラヴィニアを見ていると、またノックが聞こえてきた。

 

「……はい」


「入るよ」


 扉を開けたのはサーシャだった。

 既に交代の時間が過ぎたのか、アビゲイルから男性の護衛に変わり、サーシャの後ろで背中を向けて警護を続けていた。


「……サーシャ様」


「珍しくラヴィニア嬢の声が廊下まで聞こえていたぞ。ラティス様は……もう深夜だがいつまで女性の部屋に?」


「まぁ!申し訳ありません……」


 頬を赤らめ恥じらって答えたラヴィニアをチラッと見てからラティスは立ち上がる。


「……今日はもう寝る。ラヴィニア、またあした」


「……………………はい、おやすみなさいませ」


 暗い顔のままフラフラと部屋を出ていくラティスを見送ったラヴィニアは、サーシャがいるのに深く息を吐き出し椅子にドサリと座り込んだ。


「……おつかれ」


 ポン、と肩を叩かれ見上げると苦笑するサーシャ。

 ラヴィニアは困ったように笑った。


「我が国は復興で立て直ったとしてもその先の未来に不安しかありません」


「確かに、俺が同じ立場ならぶっ飛ばしてるだろうな」


 軽く笑って頭を撫でてきたサーシャに、ラヴィニアは力無い笑みを向けるだけだった。

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