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2-20


 視察に出た日から3日が経過した夜の事、就寝の準備を終わらせ次女を下げたラヴィニアはソファーに座り読書をしていた。

 まだ眠くならないラヴィニアは、体を温めて眠気を誘うようにアンジェリーナの入れたゆず茶を飲んでいた。

 ガラスの器に入ったゆず茶はしっかりと保温されて冷めることはない。

 これも、エスメリア発祥の魔道具らしい。

 

「エスメリアの技術は凄いわ」


 許可された図書室から一冊ずつ借りる本はエスメリアの魔道具や、暮らしについてが多い。

 疲れた時には恋愛小説を挟みながら、エスメリアの発展していった経緯を追っていった。


「……失礼いたします」


「はい?」


 ノックの音と共に扉の外からアビゲイルの声が聞こえた。

 外で護衛をしてくれているのだ。

 あと1時間で退勤、別の人と交代になる時間なのだが、普段声を掛けたりしないアビゲイルにラヴィニアは何かがあったのかとすぐに返事を返した。

 少しだけ空いた扉からアビゲイルがラヴィニアを見て言う。


「ラティス王子が訪問に来られました。いかが致しますか?」


 すでにパジャマに着替えている。

 眠気もないから特に問題は無いが、時間が時間だ。

 しかし、明日からもラティスは視察が入っている。

 ラヴィニアは考えてから入室の許可をだした。


「……夜分に悪いな」


「いいえ、私もこのような格好で申し訳ありません」


 少しだけ扉を開けた状態で2人は椅子に座り話し始めた。

 暖かなゆず茶を同じカラスのカップに入れてラティスに渡すと無言で受け取り口にする。


「…………」


 話し始めないラティスをラヴィニアは黙って待つが、揺らめくゆず茶から視線を外さないラティス。

 じっくりと数分かけてから、ラティスは顔を上げた。


「…………お前は、僕たちの婚約した経緯って知っていたのか?」


「え?……はい、色々聞いたり調べたり致しました。……将来旦那様になる方の事でしたから」


「……そう、なんだ」


「いかがされましたか?」


 まだラヴィニアの部屋に来てラティスは1度もラヴィニアを見ていない。

 何かを迷い、考えながら言葉にしている様子のラティスはやっと顔を上げてラヴィニアを見た。

 そこ買おは今まで見たことがない後悔の表情だった。


「……ラティス様?」


「エスメリアに来た日の夜、父王から話を聞いた。権力の維持の為にお前と婚約したって。だから、僕が王になる為にはお前との結婚は必ずする義務があるって」


「……そのとおりです」


「なんで言わなかったのさ」


「何をですか?」


「政略結婚のその内容の事!」


「……むしろ、何故知らないのです」


 思わずため息を吐くと、ラティスはうつむいた。

 ラヴィニアは悪くない、知ろうとしなかった自分が悪い。

 それはわかっているけど、今までのラヴィニアのせいにしてきた自分が顔を出した。


「……いや、ちがう。僕が悪かったんだ。ラヴィニアのせいにしてごめん」

 

 初めて、ラティスが謝った。

 紅茶を持つ手がピタリと止まりラティスを見る。


「正直さ、国の復旧をエスメリアが手伝ってくれるって言うからあんまり心配してなかったんだ。確かに父はあまり国の運営だったりに興味がなくてリーンハルトに任せきりだったけど、僕は公務はしてたし、やることはしてる……。だから、エスメリアの皇帝が出した条件も僕は大丈夫だって思ってた」


 今までと明らかに変わったラティスを感じていたラヴィニアは、やっと紅茶を置きしっかりと姿勢を正してラティスを見る。

 考えながら、止まりながらも話すラティスはやはり今まで見た事のない姿だ。


「でも、視察や城内でのサーシャ殿下の仕事量は明らかに僕がしてきた事とちがう。こんな仕事任されてなかった。同じレベルを求められてるなら、僕には無理だ……ラヴィニア、君に聞くのは多分間違ってると思う。でも、僕にはどうすればいいかわからない。僕が王になる為に何をしたらいい?」


 真剣に見て聞いてくるラティスに、ラヴィニアはフッと笑った。


「……初めて聞いてくれましたね」


「え?」


「私は貴方のお飾りの妻になる為に王妃教育を受けてきたわけではないのです。貴方と同じ方向を見て同じように学び感じ取り、一緒に生きていきたかったのです。だから、相談も連絡も私は拒否など致しません。貴方がまだ王となろうとしているのならば、それについて行くだけです。私は婚約者なのですから」


 ただ、もっと早く気付いて欲しかった。貴方自身で。


「…………ありがとう。」


「知りたいことを学びましょう、一緒に答えを出しましょう」


「……うん。国の為に、国民の為に、アンジェリーナの為に。僕に出来ることをするよ」


「…………………………ん?」


 清々しく晴れやかな笑みで言ったラティス。

 その最後の固有名詞にラヴィニアは首を傾げた。

 なぜ、アンジェリーナ?


「……アンジェリーナの為?」


「ん?勿論国の再建が先だけど、僕が王になったらすぐにラヴィニアとの結婚式があるだろ?同時にアンジェリーナとの婚姻も結べるように法改定が必要だからね。遅くなったらそれだけアンジェリーナを待たせることになるから、早くしないとね」


 いい笑顔で言いきったラティスに、ラヴィニアの表情が抜け落ちた。



 ……………………だめです、この人。

 どうすれば、この御花畑の頭を爆発させてやれるのでしょうか。

 

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