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3回目の更新です


「お待たせ致しました」


 しっかりと髪を乾かしてから来たため少し待たせてしまった、と小走りで来たラヴィニア。


「休んでいた所悪かった。」


 手で促されラヴィニアは椅子に座る。

 その後ろにはアンジェリーナが綺麗に手を揃えて待機してる。


「時間が今しか取れなかった。悪かったね」


「いいえ、お気遣いありがとうございます。アビゲイル」


 ラヴィニアはアビゲイルを呼ぶと少し大きめの箱を渡してくれる。


「今日街に行った時のお土産をサーシャ殿下に」


「あぁ、あの店の。ありがとう、休憩時間にいただく。街はどうだった?」


 包装紙で店を把握したサーシャは頷く。

 用意された紅茶を飲みながら聞くサーシャにラヴィニアはにっこりと笑った。


「凄く楽しかったです。おすすめ頂いたマカロンも美味しかったですし、何より見たことない街並みや物に溢れておりました!道路を走る……列車?とか!……どういう仕組みで走っているのでしょうか。あ!露店も素晴らしいですね!ファイライトでは外で長時間滞在は寒くていけません。店が並んで声を出しあい、周囲に食べ物の香ばしい香りが広がるのがもう!こんな経験初めてです!」


 あまりにも衝撃的だったのだろう、握りこぶしを作ってキラキラの目で伝えてくるラヴィニアにサーシャは笑った。


「気に入ったか?」


「はい!とても!!」


「それはよかった……へぇ、美味いな。蜂蜜か」


 足を組み優雅に紅茶を飲みながら返事をする。

 いつも飲まない紅茶の味に思わず感想を言うと、ラヴィニアは笑った。


「はい、私のお気に入りです。蜂蜜の優しい甘さがいいですよね」


「あぁ」


 ゆっくりと紅茶を口に含んで味を堪能したラヴィニアはサーシャを見る。


「いつもお気遣いありがとうございます」


「いいや、何かしたいことや欲しいものがあったら遠慮なく言いなさい」


「…………では、図書室に入る許可を頂きたいです」


 少し考えたあと、ラヴィニアは紅茶を置いて今1番したい事を伝えた。


「……へぇ?何をするために?」


 ピクリと反応したサーシャは、カップで口元を隠しながら聞くと、予想以上に目を輝かせたラヴィニアが答えた。


「それは!街の知らない物を調べたり、知らない食べ物を調べたり!……とにかく知らない物を見て触れて調べたいのです」


 このエスメリアは、ファイライトと何もかもが違う。

 城内の雰囲気から兵の体制、街並みや繁栄させた様々なアイデアで作られた物。

 それはラヴィニアの知りたい意欲を殊更刺激した。

 前かがみで興奮気味に話したラヴィニアは、すぐに声を荒らげて言っているのに気付き、冷静さを保つように背中をピンと伸ばして深呼吸を繰り返した。


「……あぁ、いいよ。なんなら一緒に市街にも行くか?」


「市街!!また街に行ってもよろしいのですか?」


「あぁ、好きにこの国を見て回るといい」


「好きに!!」


 キラッキラの目でサーシャを見たあと、アビゲイルを見る。


「アビゲイル、お願いします」


「かしこまりました」


 護衛をお願いしたら、アビゲイルは満足そうに笑って返事をした。


「明日は視察で街中を回るんだが、一緒に来るか?」


「……お仕事、御一緒に連れて行ってもらってよろしいのですか?」


「ただの視察だから、そんなに凄いことはしないけどね」


「……ぜひ!御一緒させてください……っあ、アンジェリーナ、お約束は後日でも?」


「かしこまりました」


楽しみ全開に返事をしたが、アンジェリーナとの約束、八つ当たりを受けるアンジェリーナのターンを思い出して眉を下げて断りを入れる。


「予定があったか?」


「いえ、明日楽しみにしております」


「ああ」





 こうして、明日のラヴィニアの予定が決まった。

 ファイライトでは有り得なかった皇太子としての仕事の見学。

 婚約者のラティスの仕事に同行を頼もうものなら嫌な顔をされ、一喝されて終わりだろう。


 眠る前の準備も終わらせアンジェリーナも退室した後、ベッドで眠る体制になったラヴィニアは明日が楽しみでなかなか寝付けなかった。

 なんども寝返りを打ちながら、早く寝なくては、と思えば思う程眠気が遠ざかる


「……昔、まだ子供の頃にもありましたね。興奮して眠れないなんて、なんだか恥ずかしいわ」


 ふかふかの枕に顔を埋めて目を瞑る。

 モゾモゾしている間、ラヴィニアは気付かない間に眠気が来て眠りについた。






「おはようございます」


「おはようアンジェリーナ」


 気付いたら朝だった。あの後寝たラヴィニアは、寝返りすらせずに朝まで爆睡していた。

 いつもは侍女が来る前には目が覚めているのに、完全に隣に来て肩に触れらるまで起きなかったのだ。


「珍しいですね」


「楽しみでなかなか寝られなかったのです」


「……こ」


「子供じゃありませんからね!」


 小さな声で言いかけたアンジェリーナの声を遮るように言うと、アンジェリーナと一緒に来ていた侍女は目を丸くした。


「ラヴィニア様、ご準備いたしましょう」


 ワゴンに置いてある洗面器に入った暖かなお湯やタオルなどをアンジェリーナが受けとり、ラヴィニアに差し出すと、大人しく身支度を開始した。


 このもう1人の侍女は城に仕えている侍女のようだ。

 アッティリア家の家族たちは殆ど居なくなってしまった為、ラヴィニアに付く侍女はアンジェリーナだけだった。

 他はリーンハルトとカナリアの元にいる。

 1人では大変だろうと、サーシャが声をかけてくれて現在アンジェリーナを含めた3人でラヴィニアをみてくれていた。

 そのうちの一人は今いる薄紫の髪色をした女性。

 どうやらサーシャ付きの侍女らしい。

 サーシャ付きとはいっても、専属護衛程側にいて仕事をする訳でも無く、せいぜいサーシャにお茶を入れるくらいしかすることが無い名ばかりの侍女である。

 彼女の親が重役で、婚約者のいないサーシャのそばに置かせたい親の企み……なんて噂がある人だ。


「本日のお衣装でございます」


 出されたそれは、光沢のある緑の生地のドレスでレースやリボンをふんだんに使ったものだった。それに合わせたつばの広い帽子もある。

 とても可愛らしいドレスだが、視察をする今日はほぼ1日歩きっぱなしだと聞いている。

 派手なものではなく、動きやすいものを希望するが


「ラヴィニア様、いくら視察といえどサーシャ殿下とご一緒なさるのであれば恥ずかしい格好はおやめ下さい」


「……恥ずかしい、ですか?」


「ファイライトではどうでしたかわかりませんが、このエスメリアでは動きやすい簡素な格好など好んできる貴族はおりません。エスメリアにいる間、サーシャ殿下と御一緒に行動する時は特に失礼な事はなさらないようにしてください」


 そう言って着替えの準備のために別室へと向かった侍女、オパールをアンジェリーナは顰めた顔で観ていた。


「……なにあれ」


「言葉の端々が刺々しいですね」


 サーシャに紹介された2人のうち1人はオパール・ロックバックと言い、城の重役ポストに付く父親を持つ侯爵のようだ。

 数人いるサーシャの婚約者候補の1人なのだが、1番の有力候補とされているにもかかわらず何故か侍女をしている。

 これは彼女自身が望んだ事らしいのだが、何を考えているのかわからない。

 ただ1つわかることは、ラヴィニアを好いていない、という事だけ。

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