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2-11

本日2回目の更新です


「…………」


 アビゲイルは、穏やかな雰囲気に戻った2人を後ろから眺める。

 サーシャの事について、アビゲイルにとっては主についての会話に口を挟まず黙って聞いていた。

 アンジェリーナの様子を前から見ていてサーシャに懸想していたのは知っていた。

 サーシャがラヴィニアを気にする事で嫉妬していることも。


 しかし、アンジェリーナはそんな気持ちを持っていてもラヴィニアの侍女として仕事ぶりを変えることは一切なく献身的に仕えていた。

 仲の良い学友である事も聞いていた為、2人の間に諍いなどは起きないだろうと思っていたのは間違いではなかった。

 ただ、思ったよりもあけすけなく話す2人に、その斜め上を行く内容にアビゲイルは頭を混乱させた。


「あ……」


「ん?」


 ラヴィニアはマカロンを食べる手を止めてじっと見つめる。

 アンジェリーナは首を傾げて見ていると、みるみるうちに眉を寄せた。


「……サーシャ殿下にお土産を買って婚約者へのお土産が無いのはまずいですね」


 うむむ……と悩むラヴィニア、ショーケースにあった商品を思い出し何を買って帰ろうか悩む。


「ラヴィニアさ」


「はい」


「エスメリアに来てからいい顔するようになったよね。いい意味で感情が表情に出るようになった」


「そう、ですか?」


「うん、私は嬉しいよ」











 こうして美味しいスイーツを食べお土産を買って、そして街中を見て回ったラヴィニア達は満足して城に戻ってきた。

 ほぼ1日かけて街中を散策したラヴィニア達の前に、通りかかったラティス。

 ちょっと目を見開いてから立ち止まった。


「……久しぶりだな」


「はい、お久しぶりです」


 同じ城の中にいても部屋から出なかったラヴィニアは会う機会がなかった。

 じっとラティスを見てから、アビゲイルを見る。


「アビゲイル、袋をください」


「はい」

 

 小さな袋に入ったお土産をラヴィニアはそっとラティスに渡した。


「……これは?」


「今日街に行ってきました。そのお土産です」


「……街に」


 袋をじっと見てからラヴィニアを見る。


「……もらっておく。」


「はい」


「じゃあ。……アンジェリーナもまたな」


「はい」


 コツコツと足音を鳴らして去っていくラティスの後ろ姿を見ていたラヴィニアは首を傾げた。


「様子がいつもと違いますね」


「私にも絡んで来ませんでしたね」


「皇帝陛下との話し合いが難航していますからそれで、でしょうか」


 角を曲がって見えなくなったラティス。

 ラヴィニアは行きましょう、と歩き出し部屋に戻る。

 相変わらず豪華な部屋で、数日使わせて貰ってはいるがまったく慣れない。


「湯浴みに致しますか?」


「そうですね、そうします。アビゲイル」


「はい」


 アンジェリーナはすぐに湯浴みの準備に向かった。

 ラヴィニアはアビゲイルに向き直り、小さな袋を渡した。


「これはアビゲイルにプレゼントです」


「え?私に、ですか?」


「はい。エスメリアに着いてからも私の護衛を請け負って下さりありがとうございます。その感謝と……今後もよろしくお願いします、の賄賂です」


 照れたように言ったラヴィニアにアビゲイルは目を見開いた。

 そんな冗談の様なことを言う人なのか……と、新たな1面を見た。


「ありがとうございます」


「中身はマカロンですよ」


「後でいただきますね」


 アビゲイルの反応に気を良くしたラヴィニアはにっこりと笑って準備が出来たと呼びに来たアンジェリーナと共に浴室へと向かっていった。










 部屋にノック音が響き、アビゲイルはそっと扉を開いた。

 そこに居たのは主であるサーシャ。

 久々の外出をしたラヴィニアを心配して時間を作り会いに来たのだ。

 勿論後ろにはフロリアンがいる。


「サーシャ様」


「入ってもいいか?」


「……今湯浴み中です」


「そうか、タイミングが悪かったな。でも……」


 少し考えた素振りをするサーシャはアビゲイルが抑えている扉を無理矢理開き中へと入っていく。

 

「サーシャ様、流石に湯浴み中の女性の部屋に入るのはいけません。」


「我が君、ラヴィニア様は王太子の婚約者ですから、男性が部屋に入り変な噂がたつのはまずいのでは?」


「まぁそうなんだが、やっと時間を作ったから今じゃないと話ができない」


 困ったな?と、笑うサーシャに2人は深く溜息を吐く。

 それはもう、わざとらしく。

 この主、引かないな……。



「ラヴィニア様」


「はい!なんですか?アビゲイル」


 扉をノックして声を掛けるアビゲイル。

 水音はしていないので、湯浴みは終わらせマッサージをしているな、と思ったアビゲイルは少し安心する。


「申し訳ないのですが、サーシャ様が訪問されました。お部屋にお通ししています。」


「え!!……きゃあ!?」


「大丈夫ですか!?」


 何かにぶつかったのか、転んだのか。

 派手に音がしてアビゲイルは思わず扉を開けると、ガウンを着ているラヴィニアが床に座り込んでいた。


「お怪我はありませんか?」


「大丈夫です……ごめんなさい」


 焦った為、滑って転んだラヴィニアを優しく立たせてくれたアビゲイルにお礼を言った。


「準備して向かうので少しお待ちいただきたいとお伝えください」


 転んだ恥ずかしさで顔を赤らめながらいい、アンジェリーナと一緒に準備にむかった。

 

「……可愛らしい人だな」


 思わず笑ってしまったアビゲイルは、表情を引き締めてサーシャ達がいる部屋へと踵を返した。

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