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2-5

本日2回目の更新です


アビゲイル・エピリック。

 エピリックの名はエスメリア帝国を脅威と感じる全ての国が知っていると言われる程、有名な一族の名前である。

 エピリックはエスメリアの辺境にある広大な土地を領地とする辺境伯の事なのだが、その土地は海と森に面している。

 海側にはエスメリアと同じくらい大国のルグニカ王国が隣接していて、現在休戦中。

 休戦されてから既に100年以上がたち、今は貿易も行われていて緊迫した様子は無い。

 王族同士の交流もあり、お互い良い関係を築いている。

 だが、休戦中という事は戦いが始まってもおかしくない状態とも言える、そんな微妙な状態を保っているのだ。

 

 そんなルグニカに変化が無いか目を光らせているのがエピリック辺境伯一族である。

 この一族は全員、もれなく戦闘意識の高い人員で構成されていて、その最たる能力は豪腕である。

 元々強さを追求する一族は武術を極め、頑丈な体作りに精を出し、生まれ持った豪腕で敵を蹴散らすのを何よりも楽しむ一族なのだ。

 そんな一族だからこそ、この広大な土地に一族全てが移住して領地を守ることを命令した王は今でもその選択は良策だったと頷いている。


 それは、ルグニカ王国を見張るだけでは無い重要な役割があるからだ。

 もうひとつ面している森にはそこを住処とする強い魔物や魔獣が沢山生息していて、それらは増えすぎると溢れ出るように森から出てきて周辺を襲うのだ。

 ここの守りが崩れたら、一気にエスメリア帝国は滅ぶのではないかとすら言われている。

 今から1500年以上前に爆発的に溢れ出た魔物、所謂スタンピードと呼ばれる現象が起きて魔力の強い者が何百人と集まりなんとか食い止めたと伝わっている。


 その為、エピリックは一族全てがこの領地を守る為にいるのだ。

 一騎当千の人材が生まれるエピリック家は対抗する為に昔から子沢山で親戚も多い。

 アビゲイルはその直系、辺境伯を父に持つ11人兄弟の8番目として生まれていた。

 一族に負けない、戦闘狂である。


「まさかアビゲイルがあの有名なエピリックだとは思いませんでした。」


「名乗らず申し訳ありません」


「いえ!そんな!」


 ラヴィニア達は夕飯の為人通りが少なく見通しの良い場所を選び休んでいた。

 今日はこのまま野営して、順調にいけば明後日の午前中にはエスメリアの首都に入れるらしい。

 ラヴィニアは食後の休憩にと外に出てアンジェリーナと合流していた。

 勿論護衛のアビゲイルも一緒である。


 まさかの事実に驚いたラヴィニアは興奮気味にアビゲイルに話しかけ、そんなに食いついて来るとは思っていなかったアビゲイルは表情に出さずとも驚いていた。


「嬉しいです、お会いできて」


「恐縮です。……ですが、私は特段変わりない周りと同じ兵の1人ですよ?」


「そんな!歴史にも名の残る一族ではありませんか!そのたゆまぬ努力、素晴らしいの一言です!」


 両手を握りしめて話すラヴィニアにアンジェリーナは思わず笑いながら諌める。そんな侍女の姿にも驚きながら、アビゲイルは今までないグイグイと来るラヴィニアに焦っていた。

 近づくラヴィニアに距離をとる為1歩下がると、揺れる大きく開いた胸元に零れそうな大きな胸。

 思わずガン見して自分の貧相な胸元を見たアンジェリーナは羨ましい……と思う。

 主であるラヴィニアも、なかなかの発育なのだ。


「……わたしも発育が良ければ……悩殺出来たものを。未来の旦那は何処にいるんだ」


「?アンジェリーナ何か言いましたか?」


「何も言ってませんよ」


「そう、ですか?」


 

 一瞬で侍女の仮面を着けたアンジェリーナが笑顔を張りつけ答えた。


「……ん、ラヴィニア達馬車へとお戻り下さい」


「え?」

 

 飲み物を飲んでいたアビゲイルがコップを置いて立ち上がると、ラヴィニアを見てそう言った。


「魔物が近づいてきます」


「魔物……」


 ファイライトから出たことのないラヴィニアとアンジェリーナはアビゲイルの言葉を現実的に捉えられずポカンとした。

 しかし、アビゲイルの強い眼差しにゾクリと身体を震わせてラヴィニアはアンジェリーナの手を取る。


「お母様!お父様!馬車へお戻りになって!早く!!」


 王の側に居る父、友人の侯爵夫人と話す母に声を掛けると2人は振り返りラヴィニアを見た。

 そのすぐ横にはアビゲイルが自身の身長と同じくらいの巨大な槍を持って辺りを警戒してる。

 フロリアンも気付いていて剣を握りサーシャの隣で警戒し、まわりの護衛兵達も全員立ち上がり武器を持っていた。

 ファイライトの人々はその異様な様子に戸惑いキョロキョロと周りを見る。


「サバラン王、かなりの数の魔物が近づいてきている。みなを1箇所に集めて下さい」


「……わ、わかった」


 サラバンは震えた声で返事をしたあとリーンハルトを見た。

 リーンハルトは頷きすぐに馬車を持っている者は馬車に、それ以外は、馬車の周辺に集まれ!と指示を出しリーンハルトはサーシャ、フロリアンと共に王、王妃、そして王太子を守るべく馬車へと一緒に歩き出した。

 だがリーンハルトは宰相であり戦いは基礎攻撃魔法位しか出来ず、勿論戦闘など今までしたことは無い。

 震えるリーンハルトをサーシャは横目で見てから馬車の位置を確認。

 そして気配を読むと、「……間に合わないな」と呟いた。


「フロリアン、走れ」


「了解しました、我が君」


 剣を握りしめて魔物がいるであろう場所に一直線に走る。


「すぐに魔物が来る、もう少し早く走って」


 いちばん遅いラティスの腕を掴んで走り出す。

 急に早くなったスピードに足をもつれさせながら文句を言おうとした時だった。

 地響きのような唸り声が響き体がビリビリと痺れた。


「な……なん……」


「威圧だ」


「威圧……?」


「ひっ!……」


 エリザベータが引き攣った悲鳴を上げる。

 視線の先には人の2倍以上あるオオカミ型の魔物の群れだった。

 目と鼻の先にいるラヴィニアとアンジェリーナも目を見開いてカタカタと震えているのを見たが、すぐに動きだしたアビゲイルにニヤリと笑った。

 既に戦い出しているフロリアンは1人で多数の魔物と戦っていて、それに合流するアビゲイルは巨大な槍を振り回して一撃で魔物を吹き飛ばし命を奪っていった。その動きにボリュームのあるスカートが大きく広がる。

 戦うその顔には笑みが浮かんでいて血飛沫舞う中で艶やかに笑うアビゲイルが印象的だった。


「さぁ、動いて」


 背中を押されて人形が操られているかのように、ぎこちなく歩き出したサラバン。


「あ…… アンジェリーナ!」


 ラティスも震えが止まらない中、ラヴィニアを震えながら支えるアンジェリーナを見つけてガクガクと足を震わせながらもサバランを置いて走り出した。


「アンジェリーナ!大丈夫かい?アンジェリーナ!!」


「……え?ラティス様?」


 ガクガク震えながらもなんとかアンジェリーナの腕を掴むと、アンジェリーナは ラティスを見る。

 しかし、その後ろにいるサーシャを見つけてほっと息を吐き出した。


「……アビゲイル強いです」


 フロリアンとアビゲイル、あと数名が討伐に向かっていて倒していく。

 多くの護衛兵はファイライトの人々の護衛として残っているのだが、半数以上が笑いながらアビゲイルに殺られているので心配は無いのだろう。

 1対多数が得意なアビゲイルの周りには味方がいなく槍を振り回して敵を薙ぎ倒している。


「アビゲイルの強さに不安など無いだろう?」


「サーシャ様……はい、とてもお強いです」


「騎士試験に来たアビゲイルに惚れ込んでようやく口説き落としたやつだからな」


「ほ……ほれ…… こんだの」


「ん?ああ」


 ショックを受けて俯くラヴィニア。

 なんだか胸が苦しい……と思ってサーシャを見たが、その視線はアビゲイルに向いていた。

 ラヴィニアもだがアンジェリーナもまた、ショックを受けていて、支えていたラヴィニアに軽く寄りかかってしまった。


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