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2-3


ラヴィニアは上手く魔法を掛け合わせて荷造りを終わらせた。

 そして次々と違う部屋に行って圧縮して行くのを荷造りを終えた侍女達が合流してしまっていく。


「……ラヴィニア、随分しまったわねぇ」


「あら?荷造りしすぎました?」


「いいえ、あって困るものでは無いから……ヴァレンティノのドレスは全て持っていきましょうね」


「……はい」

 


 終わったか様子を見に来たカナリアが目を丸くして言った。

 どうやら他の部屋が空っぽになっているのを見たようだ。

 全てでは無いが、必要そうな着衣等や財産になる様なものは手当り次第圧縮していった。

 その中には幼い頃からお世話になったカサンドラのドレス、ヴァレンティノが手懸けたドレスも含まれる。


「フィッティングの時に言ってたんです。今年はお祭りに行くと。たぶんヴァレンティノも……」


「そうなのね……ラヴィニア、これからもヴァレンティノが作ったドレス大切にしましょうね」


「……はい」




 

 

 こうして用意された両親の荷物め圧縮し終えたラヴィニアは自分のショルダーバッグ以外を使用人達に任せアッティリア家の馬車に乗り込んだ。


 用意された馬車は3台で、1台はラヴィニア達家族が乗る馬車を、1台は使用人達がのる大型、そして荷物を乗せた小型馬車が用意された。

 馬車を動かせる執事が生き残っていた為に全員が城まで馬車で迎えることにラヴィニアはホッとした。


「……マーサ、必ず帰ってくるわ。だから、待っていて……」


 窓に手を着いて屋敷から遠ざかる様子を見るラヴィニア。その手には緑の飾りが着いた簪を握りしめていた。









「もう結構集まってますのね」


 馬車を降りたカナリアは周りを見て言った。

 屋敷の位置がアーティファクトから離れていた貴族も多く着の身着のままの人も多い中、ラヴィニア達のように馬車を使っている人達もいたが、ここまで来るのに固まった溶岩で車輪がパンクしている。


「……ラヴィニアちゃんのお陰ね」


「まったくだ」


 アッティリア家の馬車は、馬も含めて傷1つ無かった。

 これは、ラヴィニアの生活魔法の掛け合いによって馬車や馬が強化された結果である。

 土魔法で馬車全体を、特に車輪を硬化し、水魔法で車輪の摩擦を軽減、風魔法で抵抗力を下げた。

 その説明を聞いたアビゲイルは目を見開き口をポカンとあけた。


「……どうやって思いつくんです」


「……本、とかでしょうか」


 うーん。と考えながら言うラヴィニアに、アビゲイルは冷や汗を流した。


「(これだけ発想で魔法を使えるなんて……この方が攻撃魔法を苦手としていて良かった……――)」



 この世界の魔法は精霊や妖精の力を借りて初めて使えるようになる。

 魔力量は人それぞれで巨大な魔法を使える人も入ればチョロチョロと水を出せるだけの人もいて、それは貴族も平民も、勿論王族も平等だ。

 国に最低ひとつはある精霊信仰の教会で13歳の時に正式に祈りを捧げて力を借りる契約をする。

 属性は7つあって基本的に全属性使えるのだが、その中から適正のある1つ~2つが得意属性となるのだ。


 ラヴィニアの得意属性は光と水で生活魔法を主に使っている。

 攻撃魔法を使えないわけでは無いだろうが、そんな窮地に陥ることも無いため使ったことはない。



「昔からラヴィニアは魔法で良く遊んでいたな」


「学校で習う基礎的な魔法は覚えましたけれど、なんというか……退屈で」

 

「まぁ、花形である攻撃魔法を選択しなかったらつまらないかもしれないな」


 リーンハルトは苦笑しながらラヴィニアの頭を撫でた。

 学院では魔法に関しての基礎知識を学ぶのだが、それ以上は専門学科に進む事になっていて選ばなければ初歩的な攻撃魔法すら学ぶことは無い。

 これが国力の低下の原因でもあるのだが、150年以上前に貴族達から望んでいない攻撃魔法を子供に学ばさせるな!とストライキがあって選択教科になったのだ。

 ちなみに、この選択教科で姉のライラックは研究者への道を選んだ。


  こうしてファイライトは余計に鉱山から採れる鉱石のみで国を発展させていったのだ。



「よし。皆集まったな。これよりエスメリア帝国へと向かう。これより指揮はサーシャ殿下に頼むので良く聞くように」


 サラバンが全員に伝えた後、サーシャは全員を見渡してから口を開く。


「では、今から移動を開始する。周りは我が軍で護衛はするが勝手な行動は謹んでくれ。守れるものも守れなくなる」


 そういうサーシャのすぐ近くには白い法衣を纏った聖女と神官。

 あの溶岩の中助かったのだろう。

 疲れている様子があり、聖女は王族と共に行動するのか王族が集まる場所に一緒にいた。

 ラヴィニアと同じ方法ではなさそうだが聖女も王族の馬車を強化しているようで、馬車での移動のようだ。


「アンジェリーナ」


「ラティス様」


 ラティスはまっすぐアンジェリーナを見て、手を握った。


「アンジェリーナはこっちだ。一緒に乗るぞ」


「え?いえ、私は」


「王太子命令だ!」


 あまりに強引なラティスにアンジェリーナは眉を寄せ、ラヴィニアはもう無視を決め込みそうになっている。

 しかし、アンジェリーナが気の毒でラティスに声をかけた。


「では、私も誘ってくださるのですわよね?婚約者である私を放置してアンジェリーナを傍になど……まさかありませんわよね?」


「お前は来なくていい。アンジェリーナには聖女の世話をさせるからな」


「……なんですって」


「聖女の世話役だ。これは僕の世話じゃないぞ」


 だから拒否なんて出来ないだろう?とラヴィニアを見下すラティスを普段だったらマーサが言い負かすのだが、ここにマーサはいない。

 しかし、宰相であるリーンハルトがいる。


「ラティス様、聖女様は王族預かりとして教会にお返しするまでお世話を致しますがあくまで王族が、です。王族に仕えている訳では無いアンジェリーナにその任はまかせられません。なにより王城の侍女たちは皆揃っているはずですが?」


「べ、別にそれくらい構わないだろう!」


「いえ、いけません。王族に召し抱えられていない侍女が粗相をした時、王族預かりなのに何故他家の侍女であったか詰問されるのは王ですよ」


「…………お前もラヴィニアも似た者親子だな!頭が固くてやってられない!」


「常識的な話をしているだけですぞ」


「……ふん」


 睨みつけて離れていくラティスにリーンハルトはため息を吐き出す。


「……あの方の教育は一体どうなっているのか」


 あまりにも残念な王太子にリーンハルトは思わず零れる本音。

 すぐ隣にエスメリアの皇太子が居るから余計に見比べてしまうのだ。


「アビゲイル、サーシャ様のところに戻らなくてよろしいの?」


「はい、私はラヴィニア様の護衛としてエスメリアまでご同行させて頂きます」


「そうなのね。ではエスメリアまでお願い致しますわ」


「かしこまりました」


 心配だったアビゲイルのことも確認出来た所で前に居るサーシャ達が動き出した


「ラヴィニア、入りなさい。もう行くぞ」


「はい。アンジェリーナ、またあとで」


「はい」



 こうしてファイライトの生き残り達は1列に並びエスメリアまで移動を開始したのだった。

 壊れた馬車はエスメリアの軍人の魔法により直し、ほっとした貴族がそれに乗っている様子をラヴィニアは見ていた。

 不満もあるだろう。屋敷が潰れ全てを失った貴族も沢山いるのだ。

 しかし、やはり噴火のショックが大きく黙ってついて行くように歩き出す。

 その貴族の後に平民が並び歩いている。


 これから数日をかけてエスメリアへと向かうラヴィニア達は先の不安に駆られながらも見た口を閉ざしてひたすら目的地を目指したのだった

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