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2-2

本日3回目の更新です


「先に、行きたい所があるのだけれどいいかしら」


「もちろんでございます」


 荷造りを手伝う侍女2人を連れて歩くラヴィニアは真っ直ぐ前を見て言った。

 そして向かった先はマーサの部屋の前。

 乳母であるマーサはいつなんどきラヴィニアに呼ばれても良いようにと使用人用の屋敷ではなく本邸の一室を使っていた。


「……マーサ」


 部屋へと入って中を見ると、そこはマーサがいた時と何ら変わりは無かった。

 今にも現れて「あらあら、どういたしましたか?」と言って暖かな手で背中を撫でてくれる気がする。


「……本当にマーサは、もう、いませんのね」


「っ!………………お嬢様」


「……なぁに?」


 マーサの机にある緑の飾りが着いた簪。

 これは以前ラヴィニアがマーサに感謝の印と渡した物でそれからずっと付けていた。

 しかし、今はここにある。それをラヴィニアは両手で持って後ろに立つ侍女を見た。


 こちらに、とラヴィニアの手を引いて廊下に出ると、少し歩いた廊下の窓に着いた。

 どうしたの?と侍女を見ると外を見る侍女が涙を堪えて唇をかみ締めている。


「リリアン?どうしたの?」


「ここです」


「え?」


「マーサさんとラフティー執事長はここで溶岩に……」


「…………え、」


 指さすリリアンに合わせて外を見るラヴィニア。


「こんな……こんな!屋敷は目の前じゃない!!」


「……溶岩の流れが早くおふたりは屋敷まで間に合わずに……最後は抱き合って」


「そんな……そんな!!」


 窓枠に両手を着いてしゃがみこみ涙が床に広がっていく。


「……お嬢様、マーサさんから伝言です」


「……伝言……?」


 顔を上げてリリアンを見ると、泣き腫らした顔をしたリリアンが真っ直ぐラヴィニアを見た。


「私の大切な子、どうか幸せになって、幸せな結婚をして生きて……愛しています。と」


「……なぜ」


「間に合わないとわかったマーサさんはこちらに向かってお嬢様に伝えて、と声を張り上げておりました。……直接、伝えてと、走ってと叫んだのですが間に合わずに……」


 堪えていた涙が溢れ出したリリアンは泣きながら、それでもしっかりとマーサの最後の言葉を伝えた。

 それでラヴィニアは気付く。

 立ち上がり泣きながらもリリアンを抱きしめた。


「リリアン……あなた、マーサ達の最後を目の前で見ていたのね!2人の最後を!!……ありがとう、怖かったでしょう?その様子を見るのも、私に伝えるのも。ありがとう、2人をそのまま見送らずにあなたが居てくれて、私に教えてくれてありがとう!!」


 ぎゅーっと抱きしめるラヴィニアにリリアンは声を上げながら泣き出しラヴィニアにしがみついた。

 

「こ、怖かった……2人が溶岩に飲まれる様子も、助けられなかったことも……い、いまでも……夢を見るんです……私だけじゃ、ありません。あの時見ていたみんな、みんなが……」


「わかった、わかったわ……ごめんなさいそばに居なくて……ごめんなさい、教える事が出来なくて……」


 最後の一言は小さく、泣くリリアンには聞こえ無かった。

 無気力だったラヴィニアの瞳に光が灯る。


 こんな所でグズグズと泣いてる場合ではないわ。

 私を思って教えてくれた大切な家族の為に、居なくなってしまった大好きな家族の為に。

 私は残った皆を守らなくてはいけないわ。

 それがアッティリア家として使用人を持つ公爵家のするべき事。


 リリアンを抱きしめて、ラヴィニアは自分の考えを改める。

 自分自身を攻めるのではなく、守らなくては。

 公爵家の娘で王太子妃になるのだから。

 今後どうなるか分からないけれど国の復興もあるのだ、立ち止まってなど居られない。


「リリアン、私はマーサの言う幸せな結婚は出来ないと思うけれど、幸せに生きる努力をするわ。マーサに恥じない生活をする、約束するわ」


 力強く話すラヴィニアをリリアンは真っ直ぐ見つめて笑った。


「やっと、笑ったマーサさんを夢で見れる気がします」











「お嬢様はお強いですね」


「え?強い?」


「えぇ、貴方のその心が強いですね」


 リリアンが荷物をまとめている間にラヴィニアは自分の貴重品を鞄に入れていた。

 ラヴィニアは攻撃魔法は丸っきし出来ないのだが、補助魔法や生活魔法はかなり上手に扱う。

 今もかなりの量の貴金属や重要となる書類などを圧縮魔法で小さくして荷物を纏めている。

 圧縮してカバンに詰めて、更に鞄を圧縮して。

 それを繰り返しほぼ全ての荷物をひとつの鞄に纏めていた。


「それに、その魔法の使い方。興味深いですね」


「ただの圧縮魔法よ?」


「こんな発想しませんよ」


「そう?…………みなさん、頭が固いですわよね、教本に乗っている使い方しかなさらないのですもの。もっと色々試してみたら楽しいですのに」


 そう言って、1部屋丸ごとの荷物を小さなショルダーバッグに詰めたラヴィニアは更に何かの魔法をかける。


「……それは、ロック、追跡、バリア……ですか?」


「そうです。全財産ですもの、警戒しなくては」


 追跡で盗難防止、ロックでカバンを開けるのを防止して、バリアで開けれなかった鞄の破壊の防止。

 そうするラヴィニアの手元をアビゲイルは興味深そうに見つめている。


「楽しいですか?」


「ええ、思いつかない事をしてるので……複数魔法をかけるのですね」


「圧縮などの生活魔法はあまり魔力も使いませんし、私魔力量も多い方ですので重複しても負担はあまりありませんの……私、生活魔法が得意なんですのよ。生活魔法は幼い頃からマーサが使っていて教えて貰いましたの」


 マーサは乳母なのですよ、と笑って言った。

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