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本日5回目の更新です


 あれから1時間が経過した。

 あまり動かない方がいいとほとんどの人は会場に残っていて、ラヴィニアもサーシャに付き添われソファーに座っている。

 隣に座るサーシャが、肩を抱き力なく寄りかかるラヴィニアを見つめる。

 その隣にはアンジェリーナが座りラヴィニアの腕を摩っていた。

 フロリアンはそんな3人をソファーの後ろに立ち見守っている


「………………………………久しぶりにデートに行くって言って笑っていました。私と同い年でいつも私の髪を結ってくれてたのです。そう、今日の髪型もクララがしてくれて……とても楽しみだと言って……」


「……そう」


「マーサは……マーサは私のお母様みたいな……そんな方で夫婦揃って昔からお世話になっていたのです……暖かくて柔らかくてそばに居たら……安心出来て……どんな話も聞いてくれて……嫌な事や悲しいこと……話して、抱きしめて……くれて……もう、会えないなんて……そんな……そんなの……うそよ、うそ……マーサ、また、私を暖かな手で撫でて……うぅ……帰ってくるのを待ってるって……言ったじゃないですか……」


「…………」


 顔を両手で覆い涙が止まらないラヴィニアに寄り添うが、サーシャには何も出来ない。

 ただ話を聞き相槌をして暖かな体温を感じさせることしか出来ない。

 ラヴィニアはマーサがもう居ないことに絶望し、そして噴火の可能性がある事がわかったのにどうにかしてでも伝えなかった自分自身に怒りと悲しみを抱えていた。

 わかったからといっていつ噴火するかなどラヴィニアにはわからないのだが、何か出来たかもしれない。

 そんな気持ちが溢れ出し不甲斐ない自分自身に感情がごちゃ混ぜになる。


「私が、私が悪かったのです……そう、あの時無理やりにでもラティス様に伝えていたら……屋敷の皆に伝えていたら……アーティファクトの範囲から出てはダメと言っていたら……そうしたら……」


 手を顔から離して空中を見てブツブツと言うラヴィニアを引っ張り頬を両手で掴み至近距離でラヴィニアの目を見る。焦点のあってないピンクの瞳。


「ラヴィニア嬢、聞こえているか?ラヴィニア!……君のせいじゃない。たしかに情報を持っていたのは君だけだった。だが、この噴火自体は君が悪いんじゃない。噴火の情報が事前にわかったとしても、1週間もない期間でいつ発生するかわからない現状で、出来ることはアーティファクトの点検と避難経路や備品の調達を少量出来るか出来ないかくらいだろう。そして、アーティファクトは1週間やそこらでは直せない。あの時ラヴィニアが動いたとしても出来たことは今とさほどかわらん」


「……でも、でも!」


「でもじゃない、自分をせめるな」


「…………屋敷に居た人達は皆家族なのです。他にも沢山の家族がお祭りに行きましたわ……みんな、みんなもう……会えないのですね……」


 止まらない涙を流したままサーシャを見て言ったラヴィニアは痛ましく、サーシャはギュッとすっぽりおさまる体を抱きしめた。

 そんなラヴィニアを泣きながらアンジェリーナは見つめる。

 同じ情報を知っていたが、ラヴィニアの様に自主的に調べたわけでも周りに知らせなきゃと焦ったわけでもない。

 ただ、わかった結果に怯えていただけのアンジェリーナは今のラヴィニアと同じ罪悪感は感じなかった。

 ただ、感じないその気持ちが、ラヴィニア自身に全てを押し付けたのだと。

 同じ気持ちになれなくて、あの時必死になれなくてごめん、他人事だったのだとどこか遠くから必死になるラヴィニアを見ていたのだと今更ながらに気が付いた。











 こうして、ファイライトは火山の噴火により7割以上の街と大地が溶岩に飲まれた。

 動かなかった二基のアーティファクトのひとつは貴族街にあり、家に残っていた家族や使用人も犠牲になった人々は沢山いる。

 そして、祭りの為に広場に出ていた大勢の市民はアーティファクトの範囲外で溶岩に全て飲まれた。

 そこにはアッティリア家の使用人達も含まれている。

 アーティファクトに守られた2箇所と城付近にたまたま居た人達は溶岩から逃れることが出来、また花冠の聖地巡礼をしていた聖女とそばに居た神官も聖女の結界と同じ効果を持つ神力で事なきを得た。

 そして火山から丸3日たち、噴火も収まり静まり返ったファイライトにサーシャの国エスメリア帝国から支援として沢山の物資と共に兵が到着する?。


「……ご苦労だったな」


「サーシャ様、怪我は無さそうですね」


 サーシャ専属の護衛騎士のうちの1人が走りよりサーシャの無事を確かめるとホッと息を吐き出していた。


「皇帝より、復興への支援を行い事と皆さんの受け入れを行うとの事です」


「まぁ、予想通りだな」


「はい、それにつきましてアンナ様の帰還が絶対条件であるとのことです」


「あぁ、わかっている」


 ふぅ……吐息を吐き出したサーシャは、護衛騎士である女性を見た。


「アビゲイル、頼みがある」


「はい、なんでしょうか」


「護衛を頼みたい。相手は彼女だ」


 指さしたのは落ち込み下を向くラヴィニア。

 まだすぐに気持ちを切り替えれないラヴィニアはボーッとしていることが多い。

 ラティスは何度かラヴィニアに怒鳴りつけに来ていたが、今のラヴィニアを放ってはおけないとサーシャとフロリアンがそばに付き添っていたのだ。

 今からはサーシャも動かなくてはいけない。

 その為ラヴィニアから離れなくてはいけなく、アンジェリーナが常にそばに居るとは言ってもラティスの暴言から守ることは難しいだろう。


「頼めるか?」


「お任せ下さい」


 アンジェリーナもそばに居たが的確にラヴィニアだと認識したアビゲイルはニッコリと笑って左胸に右手の拳を押し当てた。


「たのんだ」


 ラヴィニアを一瞥してからフロリアンと共に歩き出したサーシャを見送りアビゲイルは歩き出す。

 俯く少女に向かって。

 

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