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本日3回目の更新です


 とうとう、頭が狂ったのか……

 思わずアンジェリーナはポカンと口を開けてラティスを見た。

 何を言ってるんだこの人、しかも花冠の日のパーティで、本当に何言ってんだ。


「……え?冗談にしても笑えない」


 静まり返った会場に、呆然としたアンジェリーナの声が小さく響く。

 それを聞いたラティスは笑ってラヴィニアを押しアンジェリーナの手を取って跪いた。


「僕の天使アンジェリーナ、君だけが僕の太陽だ。愛してるよ」


「……天使と太陽どっちだよ、まるっきり別物だわ」


「ふっ……コホコホ」


 ラティスの言葉につい返事をするアンジェリーナ、人前であることも相手が王太子であることも、サーシャが傍で聞いている事すら忘れて。

 その返しに思わず笑うラヴィニアは、咳をして誤魔化すが、すぐ隣にいるサーシャとフロリアンから視線を感じて誤魔化すように再度咳払いをした。


「……ふぅ。ラティス様、婚約破棄など簡単に人前で言う事ではありませんわ。なにより王様は、王妃様は承知していらっしゃるのですか?」


「まだだが母上が僕のしたいことを駄目だとは言わないし、愛に目覚めた僕の話を聞いたら父上だとて承諾してくれる」


「……ラティス様は政略結婚の意味をご存知ですか?」


「親が決めた結婚だろう」


「…………あ、この人だめです」


 ラティスの言葉に小さく呟いたラヴィニアに、サーシャは顔を横に向けて笑った。

 フロリアンがそんなサーシャを窘めたら、片手をあげるだけですませてしまう。


「……よろしいですか?私達の政略結婚にはですね」


「うるさい、意味のない話をするつもりは無い!お前は黙って婚約破棄の書類にサインをすればいいのだ」


 こんな一方的に話すラティスに周囲で見守る貴族達は顔を見合わせた。

 ラティスの王としての資質の低さや、他者の話を聞き入れない性格。これ程酷かったのかと将来愚王になる可能性が高いのではないかとヒソヒソ話し出していた。

 だが貴族達は破棄された後釜に自身の娘を差し出し裏から操れば……いや、アンジェリーナの後ろ盾になるべきではないかと算段し出す。


「なにを騒いでおる」


「!」


 王妃を連れて現れた王。

 その後ろには宰相であるラヴィニアの父リーンハルトも連れ立っていた。


 ラヴィニアの侍女であるアンジェリーナに跪き手を取る王太子、その隣にいる婚約者のラヴィニアと他国の皇太子に護衛騎士。そして理解が追いつかず険しい顔をするアンジェリーナの義兄。

 カオスと化しているこの場で王は声をはりあげた。


「何をしているラティス」


「父上。……僕は、いえ私はラヴィニア・アッティリアとの婚約を破棄しここにいるアンジェリーナ・キャンベルと婚約します」


 さっと立ち上がりアンジェリーナの背中に手を添えて言うと、アンジェリーナは必死の形相で首を横に降った。


「……何を言っておる」


「ですから、アンジェリーナとの……」


「お前とラヴィニアとの婚約は決定事項だ。変えることはできん」


「……なぜですか!ただの子供の時に決まった婚約ではないですか!」


 ラティスの言葉にラヴィニアは呆れてしまった。

 自分の婚約者とどういう経緯で婚約がなされたのかラティスは気にならなかったのだろうか、ラヴィニアは気になり自分で調べたというのに。






 サラバンの前王妃はエスメリア帝国の王族アンナ。その時点でファイライトは大きな後ろ盾を得たことになる。

 小さな国を他国から守るための武力に秀でた大国であるエスメリアはファイライトにとって心強い相手だった。

 それは自国内の力を伸ばしたい貴族にも抑止力として上手く働いていた。

 こうしてあまり考えることのしない王は、宰相であるラヴィニアの父リーンハルトの力を借りて良い政治を行ってきた。

 しかし、アンナ亡き後後妻に入ったのは男爵令嬢であった。

 エスメリアの後ろ盾が無くなった王族のに周りの貴族が口出しをしだしたのだ。

 アンナの子供は2人とも女子の為女王を排出しないファイライトには王を継ぐ資格は無い。

 だが、強い勢力を持つエスメリアとの強い絆を保つ為に初の女王をという声が聞こえてきた。

 しかし、自分の意のままに操りたいと考える貴族もいて自身の子供を家庭教師に、嫁にと言葉巧みにサラバンに詰め寄った。


 サラバンはただ自分の愛した妻エリザベータを愛でたいその一心で喜ぶと思い娘の王位継承は却下した。

 しかし、これにより貴族間の水面下の戦いが勃発する。

 王女を願う反対派と、他の王を操りたい貴族達のせいで国が荒れる1歩手前まで来ていたのだ。

  そこで、よく周りを見ていた王妃エリザベータは言った。


「リーンハルト公爵、あなたたしかラティスのひとつ上の娘がいますわよね。筆頭侯爵であり宰相を務めるあなたの娘ならば文句を言う人は居なくなるでしょ」


 無表情で、まだ幼児のラティスを抱きしめて言ったその言葉はエリザベータにどっぷりとハマっているサラバンの答えとなる。


 こうして政治の為国の為にラヴィニアはラティスの婚約者となった。

 確かにアッティリア家の立場が一気に他の公爵よりも高くなってしまうが現状選択肢はなく立場的にラヴィニア以外の王妃を選ぶ事は不可能とされたのだ。



 なのに、だ。

 ラティスは簡単に婚約破棄を言い渡しアンジェリーナとの結婚を望む。

 そうなればラティスは廃嫡され次男であるジークフリードとラヴィニアの婚約が結ばれる。

 ただし、現在ジークフリードは10歳、戴冠までに時間はかかるし王太子としての教育を初めなくてはならないだろう。


 なによりラヴィニアとの年の差が開いてしまい子を望むのが難しくなるかもしれないのだ。


 そんなことすらラティスは考えていない。


 真っ赤な顔をして手を握りしめサラバンに言い募るラティスにこのような場所でと窘める王妃。

 もうラヴィニアはため息しか出ない。

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