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本日2回目の更新です
4人が集まりその見目の良さにも周囲の視線は自然と集めてしまう。
あまり見ないサーシャとフロリアンにそれは余計に集中していてラティスは小さく舌打ちした。
注目を集めるのが自分じゃ無いことに少しの不満があるのがラヴィニアには手に取るようにわかる。
「……顔が赤いよ」
「!」
飲み終わったラヴィニアのグラスをサーシャが取りボーイに返す。
その際に、一瞬耳元で囁かれた言葉に目を見開き耳を手で隠した。
話し掛けていたのを見ていなかったラティスは、ラヴィニアが俯き耳を押えている姿を見たが、興味無さそうにすぐに視線を外す。
「皆の者、よく集まった」
4人が表面上にこやかに笑い談笑をしている時だった。
王の声が響きそちらに視線を向けると静まり返った会場内で参加者は静かに頭を下げた。
王、サラバンは片手を上げて頭を上げるように言うと、全員が頭を上げて静かにサラバンを見る。
「また1年がたち今年も花冠の日を迎える事が出来た。エスメリア帝国からサーシャ皇太子も招き短い時間ではあるが交流も含めてパーティを楽しんでくれ」
今年46歳になるサラバンだがその見た目は若々しく30代前半に見える。
ラティスとは親子というより年の離れた兄弟に見えてしまうくらいだ。
燃えるような赤い髪をオールバックにしたサラバンの隣には黒髪の女性がいる。王妃エリザベータだ。
揺蕩う金髪の上にはティアラを付けていて真っ白なマーメイドドレスを着ている。
細身の彼女にはとても似合っていてサラバンの髪の色の赤が差し色として使われている。
だが、王妃の表情はお祝いの日にしては無表情だった。いや、王妃にしてはこれは通常運転なのだが。
こうして王の挨拶の後本格的にパーティーは開始された。
王家主催のいつものパーティとは違いもっと穏やかなパーティではあるがファーストダンスは王と王妃から。これはかわらなかった。
「素敵ねぇいつ見ても」
「ええ本当に」
ホールの中心で踊る王と王妃。
たしかにダンスはとても美しく素晴らしいのだが見つめる王の瞳には熱がこもり、対して王妃はそれを無表情に受け止めているその温度差は激しい。
ラヴィニアは、私達もお互い冷めた様子で踊っているように見えるのかしら、それとも見た目は仲良く踊っているように見えるのかしら……
王達のダンスを見てただそれだけ考えた。
王のダンスが終わり2人がお互いに頭を下げあってから続々とダンスホールに男女が集まりだし音楽に合わせて踊り出した。
「サーシャ殿下、我々も踊ってきますので失礼します」
「ああ、また」
ラティスはサーシャに声を掛けラヴィニアを連れ立ちダンスホールへと向かった。
ファーストダンスは必ずパートナーと踊らなくてはならない。ラティスにとってはそれはラヴィニアだから踊らないと別の女性とは踊れないのだ。
「……早く終わらすぞ」
「…………」
こんな楽しくないダンスなどあるものか、と少し俯きながらもラティスのリードに合わせて踊り出す。
ダンスが中盤に差し掛かった時、続々とパートナーを引連れて入場する男女をラティスたチラチラと確認した。
主人の準備が終わってからの準備となる為どうしても使用人として仕えている貴族は入場が遅れるのだ。
「!アンジェリーナ!……ドレスが」
「あのような禁色を使ったドレスを着てパーティに、人前に出れるわけ無いじゃありませんか。ヴァレンティノを呼びお直しいたしましたよ」
「なっ……!」
アンジェリーナの入場に満面の笑みを浮かべたがそのドレスを見て顔つきを変えた。
そんな反応をするのは想定内で、ラヴィニアはラティスを見上げて当然のように答える。
ラティスは言葉を失いラヴィニアを睨みつけるがツンっと、顔を背けた。
「自分の婚約者が他の女性に送ったドレスを着せる許可をしただけ寛大だと思いませんか?」
「……なぜわかった」
「なぜわかった?アンジェリーナは私の使用人ですよ?我が家で準備をする事くらいわかりますでしょ。そんな事すら頭に浮かびませんでしたか?禁色を使用したドレスなど王族しか作れません。アンジェリーナの王族の知り合いはラティス様だけですもの。……カサンドラのドレスだってこともすぐに分かりましてよ。ロゴがありますし縫製などもそうでした。幼い頃からカサンドラを愛用している私が分からないはずがありません。」
「…………くそっ」
ラティスの言い方に珍しく不機嫌な気持ちが言葉になってラヴィニアの口から吐き出された。
丁度音楽が終わり珍しくラヴィニアから手を離した事にラティスは少し目を見開いた。
どんな事があってもラヴィニアは最後にはラティスを許した。それは後の夫となる人と出来るだけ良好な関係でいたかったからだ。
だが、さすがにこんな馬鹿にされてラヴィニアも腹の虫がおさまらない。
頭を優雅に下げたラヴィニアを呆然と見つめたが、ラティスを置いて歩いていってしまうのに気付いて慌ててついて行った。
ラヴィニアの行先がアンジェリーナの所だと、わかっているからだ。
ラヴィニアと一緒に居ることで、まだ自然とアンジェリーナの元に行ける。パーティでは必ずラヴィニアと一緒にアンジェリーナの所に行っていた。
「アンジェリーナ」
「ラヴィニア様」
ラティスを置いて先にアンジェリーナの元に来たラヴィニアにホッとした笑みを浮かべて義兄であるカインドから手を離しスカートを持って礼をした。
差し色が見えない様に大きくスリットの入ったスカート部分を青地にホワイトライティアが薄く描かれた布で覆うように縫い合わせ、スカート全体にチュールスカートをさらに重ねていた。
濃い青地の布もチュールスカートで目立たずいいアクセントになっている。
綺麗なシルエットのAラインワンピースになっていた。
「……うん、流石ヴァレンティノですね、とてもアンジェリーナに似合っていて素敵」
「本当に、本当にありがとうございます」
頬を染めて笑うアンジェリーナ。
そんなアンジェリーナに安心したのもつかの間、ねっとりと絡みつくような視線をただ向けているカインドに居心地わるそうするアンジェリーナ。
ラヴィニアはカインドに向き直りスカートを持って礼をした。
「アンジェリーナのお義兄様ですわよね?お久しぶりですわ。」
以前会った時よりもアンジェリーナと会えない期間が長い為か執着心が強くなった様子のカインドに笑みを向けると、切り替えたのか人の良い笑みを浮かべて優雅に一礼した。
流石商人、その心を綺麗に隠した笑みだった。
「お久しぶりです、アッティリア公爵令嬢。今日もお美しいですね。そうそうアンジェリーナはご迷惑をかけていませんか?」
父がいつも心配していまして、そう言って眉を下げて微笑みアンジェリーナを見るカインドは確かに妹を心配する義兄にしか見えない。
アンジェリーナが言う通り外面が良いのだろう、騙されてしまいそうになる。
あのねっとりとした視線をアンジェリーナに向けている様子を直接見なければ、だが。
「ええ、勿論です。アンジェリーナはとても良くして下さってます。ただアンジェリーナも私と同じ歳ですから結婚も考えないといけい頃合で。お父様がいい縁談を探してくれていますのよ」
ふふ、と笑いどう反応するのかと見ていると、カインドは笑みを作ったままだが眉をピクリと動かした。
「公爵様のお気持ちも有難いですがアンジェリーナの為にお忙しい中労力を割いていただくのはとても申し訳ないです。我が家で結婚相手を探しますから大丈夫ですとお伝え下さいますか?」
「……あら、お父様が自ら私の大切な友人ですからと申し出てくださったのですが……そうですか……」
「あ!いや……」
アンジェリーナの実家にとってアッティリア公爵家はアンジェリーナの主人としてだけではなく大口の取引先でもある。
その為強く出れないのだ。
これを利用してラヴィニアはカインドに圧力を掛けた。
今すぐアンジェリーナに何かしたりするなよ?と。
しかし、ここでまた面倒な人物が登場した。
突然ラヴィニアの腕を掴み力任せに引っ張ると、踏ん張ることも出来なかったラヴィニアはそのまま床に倒れ込んだ。
アンジェリーナは小さく悲鳴を上げてラヴィニアの横に走りより体を支えると、真っ赤な顔をしたラティスが怒鳴り散らす。
「アンジェリーナの結婚相手を探しているとはどういう事だ!!何を勝手なことをしている!!」
手を強く握りしめて座り込むラヴィニアを怒鳴りつけるラティスに周囲は気付き人が集まりだす。
勿論、そこにはサーシャとフロリアンもいた。
「私の大切な侍女の良縁の手助けをしてなぜラティス王太子に叱られねばならないのです」
立ち上がり言い返すラヴィニアにカッとしたラティスはパーティに出席しているのを頭から消え去ったのか右手を振り上げた。
「(叩かれるっ)」
ギュッと目を瞑り体に力を入れた時、パシッと音が聞こえゆっくりと目を開ける。
「女性に手を上げるのはどうかと思うが?」
「あ……」
「くっ……」
ラティスの腕をフロリアンがおさえラヴィニアを守るようにサーシャが前に立っていた。
ラヴィニアの腕を掴み隣に立つアンジェリーナは思わず頬を赤らめているが、それに気付かないラティスはラヴィニアをきつく睨みつけた。
フロリアンの手を振り払いサーシャの肩を押して少し空間を作ったラティスは前に出てラヴィニアを睨み見下し口を開いた。
「ラヴィニア・アッティリア。貴様にはもう愛想も尽きた、婚約破棄をする。そして愛するアンジェリーナと結婚する所を惨めに見てるがいい」




