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本日2回目の更新です
「……精霊様はわたしのことが嫌いなの?だからお姿を見せて下さらないの?」
「まぁ、ラヴィニアそんな事ないわよ。お姿は見えないけれど精霊様はいつでも側にいてお力を貸してくれてるのよ」
「近くに、いるの?」
「ええ、いつでもあなたを見ているわ。だから、人に恥じ入ることはしては駄目よ。あなたはあなたらしく、胸を張って生きて」
「……難しくてわからないわ、母様」
「そうね、まだラヴィニアには早かったわね。ふふ、さぁ、そろそろ眠る時間よ私の可愛い子」
「嫌だわ。今寝てしまったら母様がどこか行っちゃう気がするの」
「あらあら。どこにも行ったりしないわラヴィニア。言ったでしょ?いつもそばに、あなたのそばにいるわラヴィニア、私の愛しい子」
…………………………
「……随分と懐かしい夢を見ましたわ」
目が覚めたラヴィニアは、その懐かしい暖かな微睡みから抜け出したくないと寝返りをうつ。
ふかふかの布団にくるまり目を閉じると、今見た夢が鮮明に思い出されるのだ。
まだラヴィニアが8歳くらいの時の頃、幼いラヴィニアは母に寝物語として世界の成り立たちの話を聞いていた。
今から4500年前、この星ラナは荒廃していました。
生命は存在しなく、空気と水のみがある荒れ果てた大地の星、ラナ。
そんな星に1人の女神が降り立ちました。
女神は手を伸ばすと空間が裂けそこから7人の精霊が現れます。
精霊はその星の惨状に嘆き女神を見つめました。女神は微笑み頷きます。
「ここをあなた達に差し上げます。お好きになさって?」
煌めく金の髪の上には光輝く金の輪。
宝石が散りばめられた杖を持った女神は白く輝く精霊に言いました。
精霊は他の6人を見て頷き、全員が片手を天に伸ばします。すると、荒れ果てた大地は瞬く間に潤いを持ち緑が育ちました。
荒れ果てた大地は嘘のように無くなり死んでいた星は息を吹き返します。
次に、白い精霊は祈りを捧げました。
すると、大地に咲き出す真っ白い小さな花、そうホワイトライティアが一面に咲きだしました。
それを見た精霊達は喜び一斉に各地に飛ばさりました。
それぞれが大地に降り立ちホワイトライティアで大きな花冠を作ります。
そしてそこに息を吹きかけると、沢山の妖精が生まれました。
それぞれに属性をもつ妖精は精霊について行く子とその地に残る子に別れます。
確認し微笑みながら精霊はまた別の大地で花冠を作り妖精を生み出します。
こうして1年かけて精霊は大地に妖精と命の伊吹を起こしていきました。
それから1000年の時を掛けて植物や動物、鳥類といった生き物と共に魔物も生み出し活気ある星へと発展していきます。
そんな時です。
蘇った星、ラナが命を産み落としました。
そう、人が誕生したのです。
最初は女の赤子でした。
精霊達は酷く困惑し動揺します。
別の星で、また他の星でも人が居る星の文明は発展するが争いごとがやみません。
ですから、精霊達は人を生み出すつもりはありませんでした。
しかし、星によって人は生まれてしまった。
既にある命を刈り取ることは精霊にも、妖精にも出来ません。
ですから、精霊や妖精は人を育て争いのない秩序ある世界にしようと決めました。
こうして星から生まれた赤子、ラナが誕生しました。
それから1年後に男女の赤子、さらに1年後には5人の赤子と数を増やしそれらを精霊達が育てていきました。
年々増える人族は、精霊達の話をよく聞き生活を豊かにしていきます。
そのうちお互いで子を生し家族を作るようになり、人口が増える度に星が産む子の数が減っていきました。
人同士が子をなすようになり人口がさらに増えだした頃、人は精霊や妖精に過度な信仰心を持つようになりました。
逆らったりはむかったりはしない、ただ盲目的に精霊たちを信仰する。
そんな異常な様子に精霊達は愛しい子供達がおかしくならないようにと離れる決意をしました。
こうして、精霊や妖精との共存が終了しました。
しかし、人族が大切だからこそ離れた精霊様たちはそのお力を私達に与えて下さりいつまでも傍で見守っていてくださるのよ
お話の後は必ずこう締めくくられる。
ラヴィニアは、小さな頃から母が寝物語に話してくれる創世神話が大好きだった。
その話を聞く度に7人の精霊様はどんな方なんだろう、どういう姿をしているのだろう
妖精を見る瞳を私も欲しいと子供らしいキラキラとした目で語っていた。
勿論今でも創世神話は大好きだし、なにより精霊や妖精の全てがラヴィニアにとって興味の対象となった。忙しい教育の合間、自分の時間を減らしてでも本を読み漁ったほどだ。
「……昨日、きっとあんな話をしたからですわね。昔の事を夢で見るだなんて」
微睡みから完全に目が覚めたラヴィニアは伸びをしてから体を起こす。
フワフワの髪が至る所に跳ねているのも気にせずベッドから出たラヴィニアは窓を大きく開いた。
薄いナイトドレスだけでは寒く冷たい風が肌をさすが朝特有のスッキリとした空気が漂っている。
そして一面に広がるホワイトライティアにラヴィニアは口端を持ち上げる。
「……美しいわ、本当に」
雪が降り続いていて1面銀世界になっているが、その雪の色に埋もれることなく小さな白い花は風に揺れている。
「いつ見ても不思議だわ、雪に小さな花」
雪国のファイライトでは花は咲かない。
厳しい気温と雪で種や球根が芽吹かないのだ。
だから、ファイライトから出たことのないラヴィニアはホワイトライティア以外の花を見たことがなかった。
「おはようございます、お嬢様」
「おはようアンジェリーナ、クララ」
ノックの音が響き入室許可を出したあとに入ってきた2人にラヴィニアは笑みを向ける。
アンジェリーナの目はうっすらと赤いのだが
ラヴィニアはあえてそれには触れなかった。
「今日も変わらず雪景色でございますね」
冷えますよ、とストールを掛けてくれるアンジェリーナにありがとうと答え窓を閉めた。
「吹雪にならなくて良かったわ」
うふふ、と笑うラヴィニアにクララは数年前を思い出しているのか眉を下げた。
猛吹雪の時があったのだ。
それでもパーティはある為着飾った参加者達は到着時には雪に揉まれたかのような姿で、城の控え室が化粧直しにごった返していたのをラヴィニアも思い出す。
「……いい天気で良かったわ……」
「本当に……」
アンジェリーナも思い出したのかげっそりとしている。
身分の低いアンジェリーナは特に大変だっただろうと、ラヴィニアも同情の眼差しを送ってしまう。
「さぁ、ご準備致しましょう。今日は忙しいですよ!」
クララが張り切って答え、ドレスを見ると丁度入ってきたマーサが食事を運んできた。
「食事を済ませてからにしてくださいましね」
「マーサ、おはよう」
「はい、おはようございます」
相変わらず優しい雰囲気のマーサにラヴィニアは頬を緩ませ、持ってきてくれた朝食を食べようと椅子に座った。
今回パーティに参加するのはアンジェリーナだけではない。
他の使用人の中にも参加者はいる為ラヴィニアは準備はなるべく早く済ませなくてはと、張り切ってドレスに袖を通した。
大切な使用人もラヴィニアにとっては家族同然。楽しんで欲しいし良いお相手が出来たら手放しで喜びお祝いするだろう。
浮き足立ってる使用人の姿は普段見れたものじゃなく、ラヴィニアの父もこの日だけはと毎年目を瞑っている。




